22 / 25
第一章
第22話
しおりを挟む
「どういうことなんだろう?」
帰り道、千尋と春華はうーんと唸りながら肩を並べて歩いていた。
東雲綾乃を助けるために潜入捜査まがいのことまでしたのに、結局謎が一層深まる結果になってしまった。
綾乃の話によると、西園寺姉妹に声をかけた生徒が次々とケガを負うなどの被害を被っているという話だった。
その事実を確かめるために、水ノ森中学校に入り込んだのだが。
東雲綾乃のクラスの委員長、深海薫から意外な言葉が飛び出した。
そんな事実は聞いたことがない、東雲綾乃の嘘ではないかと。
その後、念のために千尋と春華は他のクラスの子達にもこっそり話を聞きに回ったのだが、皆「知らない」「聞いたことない」という答えばかりだった。
となると。
「やっぱり綾乃ちゃんの嘘だった、ってことかな…?」
「うーん……でも見ず知らずの私に、そんな嘘つく必要ある?」
「それはそうだけど……」
「あの時の綾乃ちゃんは直接私に"助けて"とは言わなかったけど、明らかにSOSを出してたんだよ。本当に怯えてたし嘘をついているようには見えなかった。」
「そっかぁ、ちぃちゃんがそこまで言うならそうなんだろうね。でも、それじゃあなんで他の生徒はみんな知らないのかな。そんなことが起きているなら、さすがに噂になると思うんだけど……」
春華は分からない、と言ったように肩を竦めた。
「とにかく、綾乃ちゃんにもっかい話を聞いてみるしかないか。」
「そうだね。綾乃ちゃんとは連絡先交換してたんだ?」
「うん。一応何かあった時のためにって。放っておけない感じだったし。」
「そっか。」
春華がうんうん、と頷く。
「綾乃ちゃんはきっと勇気を出してちぃちゃんに話してくれたんだと思う。だから、ちぃちゃんがしっかり力になってあげてね。私も協力するから。」
「うん。」
「人の妬みっていうのは、思った以上に怖いから…」
そう言って、春華は悲しそうに顔を歪ませた。
そういえば春華は小さい頃、いじめにあったことがあったらしい。
特に女子からの風当りが強かったのだという。
春華はいじめられていた理由は分からないと言っていたが、千尋には分からなくはない気がしていた。
春華は元から人並み外れた容姿をしていたから、きっと妬みの的になっていたのだろう。
小さい子というのは純粋で、正直で、そして時に残酷なものだ。
そういう過去があったからこそ、今回の綾乃の話は見過ごすことができなかったのだろうと千尋は思った。
今回の大胆な行動に走ったのも、本当に綾乃のためを思ってのことなのだ。
ちらりと春華の横顔を見ると、その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
もしかしたら、過去の自分と綾乃を重ねて見ているのかもしれない。
「やだ、ごめん!なんだかしんみりしちゃった!この話は終わり!」
春華が暗い空気を跳ね返すように、両手をぱちんと叩いた。
「それよりちぃちゃん!もちろん綾乃ちゃんのことも大事だけど、ちゃんと彼氏くんのことも考えてあげないとダメだよ。」
「え?」
「綾乃ちゃんのことばかり気を取られて後回しにされたら、湊くん傷つくよ~」
春華がいたずらっ子のように舌を出しながら、ふふっと笑った。
「はいはい、分かってるよぉ!」
「いいなぁ、ちぃちゃんは!毎日が幸せで。」
「ちょっと!春華が幸せじゃないみたいな風に言わないでよ!」
「嘘嘘、幸せだよ!だって大好きなちぃちゃんといつも一緒だもん!」
そう言って、春華はぎゅーっとくっついてきた。
その瞬間、仄かにふんわりと桃の香りが鼻をついた。
帰り道、千尋と春華はうーんと唸りながら肩を並べて歩いていた。
東雲綾乃を助けるために潜入捜査まがいのことまでしたのに、結局謎が一層深まる結果になってしまった。
綾乃の話によると、西園寺姉妹に声をかけた生徒が次々とケガを負うなどの被害を被っているという話だった。
その事実を確かめるために、水ノ森中学校に入り込んだのだが。
東雲綾乃のクラスの委員長、深海薫から意外な言葉が飛び出した。
そんな事実は聞いたことがない、東雲綾乃の嘘ではないかと。
その後、念のために千尋と春華は他のクラスの子達にもこっそり話を聞きに回ったのだが、皆「知らない」「聞いたことない」という答えばかりだった。
となると。
「やっぱり綾乃ちゃんの嘘だった、ってことかな…?」
「うーん……でも見ず知らずの私に、そんな嘘つく必要ある?」
「それはそうだけど……」
「あの時の綾乃ちゃんは直接私に"助けて"とは言わなかったけど、明らかにSOSを出してたんだよ。本当に怯えてたし嘘をついているようには見えなかった。」
「そっかぁ、ちぃちゃんがそこまで言うならそうなんだろうね。でも、それじゃあなんで他の生徒はみんな知らないのかな。そんなことが起きているなら、さすがに噂になると思うんだけど……」
春華は分からない、と言ったように肩を竦めた。
「とにかく、綾乃ちゃんにもっかい話を聞いてみるしかないか。」
「そうだね。綾乃ちゃんとは連絡先交換してたんだ?」
「うん。一応何かあった時のためにって。放っておけない感じだったし。」
「そっか。」
春華がうんうん、と頷く。
「綾乃ちゃんはきっと勇気を出してちぃちゃんに話してくれたんだと思う。だから、ちぃちゃんがしっかり力になってあげてね。私も協力するから。」
「うん。」
「人の妬みっていうのは、思った以上に怖いから…」
そう言って、春華は悲しそうに顔を歪ませた。
そういえば春華は小さい頃、いじめにあったことがあったらしい。
特に女子からの風当りが強かったのだという。
春華はいじめられていた理由は分からないと言っていたが、千尋には分からなくはない気がしていた。
春華は元から人並み外れた容姿をしていたから、きっと妬みの的になっていたのだろう。
小さい子というのは純粋で、正直で、そして時に残酷なものだ。
そういう過去があったからこそ、今回の綾乃の話は見過ごすことができなかったのだろうと千尋は思った。
今回の大胆な行動に走ったのも、本当に綾乃のためを思ってのことなのだ。
ちらりと春華の横顔を見ると、その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
もしかしたら、過去の自分と綾乃を重ねて見ているのかもしれない。
「やだ、ごめん!なんだかしんみりしちゃった!この話は終わり!」
春華が暗い空気を跳ね返すように、両手をぱちんと叩いた。
「それよりちぃちゃん!もちろん綾乃ちゃんのことも大事だけど、ちゃんと彼氏くんのことも考えてあげないとダメだよ。」
「え?」
「綾乃ちゃんのことばかり気を取られて後回しにされたら、湊くん傷つくよ~」
春華がいたずらっ子のように舌を出しながら、ふふっと笑った。
「はいはい、分かってるよぉ!」
「いいなぁ、ちぃちゃんは!毎日が幸せで。」
「ちょっと!春華が幸せじゃないみたいな風に言わないでよ!」
「嘘嘘、幸せだよ!だって大好きなちぃちゃんといつも一緒だもん!」
そう言って、春華はぎゅーっとくっついてきた。
その瞬間、仄かにふんわりと桃の香りが鼻をついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる