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一章
第5話 生まれる憎悪
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瑞穂からあの衝撃的な告白を受けた翌日の放課後、舞は体育館裏に向かっていた。
瑞穂から、『今日放課後、体育館まで来て。』と言われたからだ。
でもなんで、体育館なんだろう??
舞は首を捻りながら、体育館へと足を進める。
体育館裏のドアの近くまで来たとき、わずかに声が耳に届いてきた。
舞は喉をごくりと鳴らして少しだけドアに手で隙間を作ると、そっと中を覗き込む。
僅かな隙間だが、薄っすらと灯りがついているので、中の様子を窺うことができた。
そこには瑞穂と、新谷友樹の姿があった。
舞は大きく目を見開く。
新谷が、瑞穂の肩を掴んでいた。瑞穂が華奢な体をよじって、なんとかその手から逃れようとしているところだった。
「や、だ……痛い!やめてッ」
「河野さんいいでしょ?俺と付き合ってよ。あんたなら美人だし、俺の隣並んでも恥ずかしくないって。」
どれだけ自分に自信があればそこまで上から目線になれるのか、と舞は思わずおっきなため息を付きたくなりそうなのを必死に飲み込む。
たしかに新谷は容姿はそこそこいいが、それは性格の良さというイメージがあったからこそ際立っていただけなのだと改めて思う。容姿に関しては中の上といったところだ。
それが創られたもので、実はこれが彼の本性本性だと知れば、学校中の女子達がこぞって泣くだろう。
「私はあなたと付き合うつもりなんてない。何回言ったら分かるの?」
「そんなこと言っちゃって。瑞穂お嬢様は、本当はチヤホヤされるのが好きなんでしょ??それに、この俺が付き合ってって言ってるんだから、ありがたく思ってほしいね。」
「……そう思うなら、思ってくれても構わないよ。でも、あなたを好きになることなんて万に一つもないからそれでも宜しければ付き合って差し上げてもよろしくてよ?」
瑞穂は、唇の端を上げて、ふっと馬鹿にしたような薄い笑みを浮かべる。
上目遣いに睨みつける切れ長の瞳は、ぞっとするほど冷たく、妖艶で、思わず息を呑む。
「…っふざけるなよ!!」
新谷は舌打ちをし瑞穂の肩を強く押すと、瑞穂の細い体を乱暴に壁に押し付けた。
瑞穂は、背中に走った痛みに顔を歪める。
「あんた何様なの?どうやら世間知らずのお嬢様は、痛い目にあわないと分からないらしいね。」
次の瞬間、バチン!!と鋭い音が反響した。
瑞穂が叩かれた、と気づいた時には、またバチン!!と鋭い音が体育館に響き渡っていた。
バチン!!バチン!!!
瑞穂の白い頬が、あっという間に赤く染まるのが遠目にも分かった。
目の前で繰り広げられるあまりにもひどい光景に、思わず声を上げそうになった瞬間、瑞穂はこちらの方に顔を向けた。
唇を固く結び、瞳に涙をいっぱいに溜めながら必死に痛みに耐える瑞穂と、視線が重なる。
そして‘今は何もしないで’と言わんばかりに、舞にだけ分かるよう、首をわずかに横に振った。
だけど、声にこそ出さないが、その瞳はたしかに私に救いを求めていた。
‘この人から私を救って’
‘助けて’---------と。
この時、舞の中で何かがぷつんと切れた音がした。
憎悪の炎が胸の中で一気に立ち上がっていくのを感じながら、私はその光景を見つめていた。
瑞穂から、『今日放課後、体育館まで来て。』と言われたからだ。
でもなんで、体育館なんだろう??
舞は首を捻りながら、体育館へと足を進める。
体育館裏のドアの近くまで来たとき、わずかに声が耳に届いてきた。
舞は喉をごくりと鳴らして少しだけドアに手で隙間を作ると、そっと中を覗き込む。
僅かな隙間だが、薄っすらと灯りがついているので、中の様子を窺うことができた。
そこには瑞穂と、新谷友樹の姿があった。
舞は大きく目を見開く。
新谷が、瑞穂の肩を掴んでいた。瑞穂が華奢な体をよじって、なんとかその手から逃れようとしているところだった。
「や、だ……痛い!やめてッ」
「河野さんいいでしょ?俺と付き合ってよ。あんたなら美人だし、俺の隣並んでも恥ずかしくないって。」
どれだけ自分に自信があればそこまで上から目線になれるのか、と舞は思わずおっきなため息を付きたくなりそうなのを必死に飲み込む。
たしかに新谷は容姿はそこそこいいが、それは性格の良さというイメージがあったからこそ際立っていただけなのだと改めて思う。容姿に関しては中の上といったところだ。
それが創られたもので、実はこれが彼の本性本性だと知れば、学校中の女子達がこぞって泣くだろう。
「私はあなたと付き合うつもりなんてない。何回言ったら分かるの?」
「そんなこと言っちゃって。瑞穂お嬢様は、本当はチヤホヤされるのが好きなんでしょ??それに、この俺が付き合ってって言ってるんだから、ありがたく思ってほしいね。」
「……そう思うなら、思ってくれても構わないよ。でも、あなたを好きになることなんて万に一つもないからそれでも宜しければ付き合って差し上げてもよろしくてよ?」
瑞穂は、唇の端を上げて、ふっと馬鹿にしたような薄い笑みを浮かべる。
上目遣いに睨みつける切れ長の瞳は、ぞっとするほど冷たく、妖艶で、思わず息を呑む。
「…っふざけるなよ!!」
新谷は舌打ちをし瑞穂の肩を強く押すと、瑞穂の細い体を乱暴に壁に押し付けた。
瑞穂は、背中に走った痛みに顔を歪める。
「あんた何様なの?どうやら世間知らずのお嬢様は、痛い目にあわないと分からないらしいね。」
次の瞬間、バチン!!と鋭い音が反響した。
瑞穂が叩かれた、と気づいた時には、またバチン!!と鋭い音が体育館に響き渡っていた。
バチン!!バチン!!!
瑞穂の白い頬が、あっという間に赤く染まるのが遠目にも分かった。
目の前で繰り広げられるあまりにもひどい光景に、思わず声を上げそうになった瞬間、瑞穂はこちらの方に顔を向けた。
唇を固く結び、瞳に涙をいっぱいに溜めながら必死に痛みに耐える瑞穂と、視線が重なる。
そして‘今は何もしないで’と言わんばかりに、舞にだけ分かるよう、首をわずかに横に振った。
だけど、声にこそ出さないが、その瞳はたしかに私に救いを求めていた。
‘この人から私を救って’
‘助けて’---------と。
この時、舞の中で何かがぷつんと切れた音がした。
憎悪の炎が胸の中で一気に立ち上がっていくのを感じながら、私はその光景を見つめていた。
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