45 / 111
二章
第45話 許してもらえるなら
しおりを挟む
翌日、陽菜子は登校していなかった。
いつもなら風邪かな?と思う程度だっただろう。
しかし昨日のことがあるため、舞は心がざわつくのを止めることができなかった。
学校が終わり、陽菜子の電話に何度も電話をかけてみたが、何度かけても電源が切られている旨のアナウンスが流れるばかりで繋がることはなかった。
竜一と瑞穂も陽菜子に連絡を取ろうとしたが、同じようにまったく連絡が取れないという。
竜一なんかは、心配で心ここにあらずといった感じだ。
その様子を見て、舞は胸が締め付けられるような気持ちだった。
自分のせいだ。
自分のせいで陽菜子が。
竜一に告白なんて、しなければよかった。
自分の想いなど、心に閉まっておけばよかったのだ。
いまさら後悔しても、どうしようもないのだけれど。
陽菜子に会ったら、まずはごめんなさいと謝りたい。
許してもらえるなら、また友達に戻りたい。
落ち込む舞に、瑞穂は"舞のせいなんかじゃない"と慰めてくれた。
とりあえずは本当に風邪で連絡できないだけかもしれないから明日まで様子を見てみようということになり、この日は解散して各々の家に帰宅した。
しかし、翌日になっても陽菜子は登校してこなかった。
さすがに、舞を含め瑞穂も竜一もただごとではない、とすぐに担任のところへ聞きに行った。
先生は最初言いにくそうに口をつぐんでいたが、"あなたたちは仲がいいみたいだから"と声を潜めて話してくれた。
「実は今日お母さまから連絡があってね、昨日から織部さんが帰ってきていないっていうのよ。今までこんなことなかったみたいだから相当ご心配されていたわ。あなたたちのところにも、連絡はないの?」
その言葉を聞いて、三人とも顔面蒼白になった。
放課後、舞達三人は陽菜子の家の近辺や行きそうなところを探し回った。
三人はお互い探している場所を都度LINEで報告を取り合いながら必死に陽菜子を探した。
舞は彼女と一緒に行った場所を中心に探していたのだが、一向に見つかる気配はなかった。
陽菜子お願い、どうか無事でいて。
そう祈りつつ、舞は足がパンパンになりながらも歩き続けた。
気づいたら、もう日が暮れようとしていた。
スマホの画面で時間を確認すると、もう2時間ほど経っていたらしい。
舞は汗でべたついた前髪を手で掻きあげる。
その時。
ポケットに振動を感じて、舞はスマートフォンを取り出す。
瑞穂からだった。
もしかしたら陽菜子が見つかったのだろうか。
少しの期待をしながら、舞は勢いよく通話ボタンを押して耳に当てる。
『もしもし、舞?』
しかしその声は、予想に反して切羽詰まったような声だった。
舞は思わずスマホを握る手に力を入れる。
「瑞穂、どうしたの?もしかして陽菜子が見つかったとか…」
『違うの。』
瑞穂は遮るように言葉を続ける。
『今、実は陽菜子から連絡があったの。』
「えぇっ?」
『彼女、かなり取り乱してる感じだった。"もう誰も信じられない""私なんかいなくなる"ってずっと繰り返してて…』
瑞穂の声が、怯えを含んだ声に変わっていく。
「陽菜子、どこにいるとかは言ってなかった…?」
『私も何度も聞いたんだけど、どうしても教えてくれなかった。ねぇ舞、私なんだか嫌な予感がする。他に陽菜子が行きそうな場所は心当たりない?早く陽菜子を見つけないと……』
そこまで瑞穂が言ったところで、舞の背後で凄まじい悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向くと、ものすごいスピードでビルの屋上から落ちてくる女性の姿が視界いっぱいに映った。
一秒にも満たない時間だったと思うが、落ちてくるその人の顔を見てしまい、舞は悲鳴を上げた。
鈍く嫌な音が響いたのはそのすぐ後だった。
道を行きかう人々が次々に悲鳴を上げ、その場が騒然となる。
受話器から自分の名前を呼ぶ瑞穂の声が聞こえてきたが、それに答える余裕などなかった。
「あ…あぁ…」
短い時間だったけど、はっきりと見えてしまった。
落ちてくる人物の、恐怖に歪んだ顔。
あれは……
「陽菜子……」
そう、ビルから落ちてきた人物。
たしかにあれは、自分の友人だった。
いつもなら風邪かな?と思う程度だっただろう。
しかし昨日のことがあるため、舞は心がざわつくのを止めることができなかった。
学校が終わり、陽菜子の電話に何度も電話をかけてみたが、何度かけても電源が切られている旨のアナウンスが流れるばかりで繋がることはなかった。
竜一と瑞穂も陽菜子に連絡を取ろうとしたが、同じようにまったく連絡が取れないという。
竜一なんかは、心配で心ここにあらずといった感じだ。
その様子を見て、舞は胸が締め付けられるような気持ちだった。
自分のせいだ。
自分のせいで陽菜子が。
竜一に告白なんて、しなければよかった。
自分の想いなど、心に閉まっておけばよかったのだ。
いまさら後悔しても、どうしようもないのだけれど。
陽菜子に会ったら、まずはごめんなさいと謝りたい。
許してもらえるなら、また友達に戻りたい。
落ち込む舞に、瑞穂は"舞のせいなんかじゃない"と慰めてくれた。
とりあえずは本当に風邪で連絡できないだけかもしれないから明日まで様子を見てみようということになり、この日は解散して各々の家に帰宅した。
しかし、翌日になっても陽菜子は登校してこなかった。
さすがに、舞を含め瑞穂も竜一もただごとではない、とすぐに担任のところへ聞きに行った。
先生は最初言いにくそうに口をつぐんでいたが、"あなたたちは仲がいいみたいだから"と声を潜めて話してくれた。
「実は今日お母さまから連絡があってね、昨日から織部さんが帰ってきていないっていうのよ。今までこんなことなかったみたいだから相当ご心配されていたわ。あなたたちのところにも、連絡はないの?」
その言葉を聞いて、三人とも顔面蒼白になった。
放課後、舞達三人は陽菜子の家の近辺や行きそうなところを探し回った。
三人はお互い探している場所を都度LINEで報告を取り合いながら必死に陽菜子を探した。
舞は彼女と一緒に行った場所を中心に探していたのだが、一向に見つかる気配はなかった。
陽菜子お願い、どうか無事でいて。
そう祈りつつ、舞は足がパンパンになりながらも歩き続けた。
気づいたら、もう日が暮れようとしていた。
スマホの画面で時間を確認すると、もう2時間ほど経っていたらしい。
舞は汗でべたついた前髪を手で掻きあげる。
その時。
ポケットに振動を感じて、舞はスマートフォンを取り出す。
瑞穂からだった。
もしかしたら陽菜子が見つかったのだろうか。
少しの期待をしながら、舞は勢いよく通話ボタンを押して耳に当てる。
『もしもし、舞?』
しかしその声は、予想に反して切羽詰まったような声だった。
舞は思わずスマホを握る手に力を入れる。
「瑞穂、どうしたの?もしかして陽菜子が見つかったとか…」
『違うの。』
瑞穂は遮るように言葉を続ける。
『今、実は陽菜子から連絡があったの。』
「えぇっ?」
『彼女、かなり取り乱してる感じだった。"もう誰も信じられない""私なんかいなくなる"ってずっと繰り返してて…』
瑞穂の声が、怯えを含んだ声に変わっていく。
「陽菜子、どこにいるとかは言ってなかった…?」
『私も何度も聞いたんだけど、どうしても教えてくれなかった。ねぇ舞、私なんだか嫌な予感がする。他に陽菜子が行きそうな場所は心当たりない?早く陽菜子を見つけないと……』
そこまで瑞穂が言ったところで、舞の背後で凄まじい悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向くと、ものすごいスピードでビルの屋上から落ちてくる女性の姿が視界いっぱいに映った。
一秒にも満たない時間だったと思うが、落ちてくるその人の顔を見てしまい、舞は悲鳴を上げた。
鈍く嫌な音が響いたのはそのすぐ後だった。
道を行きかう人々が次々に悲鳴を上げ、その場が騒然となる。
受話器から自分の名前を呼ぶ瑞穂の声が聞こえてきたが、それに答える余裕などなかった。
「あ…あぁ…」
短い時間だったけど、はっきりと見えてしまった。
落ちてくる人物の、恐怖に歪んだ顔。
あれは……
「陽菜子……」
そう、ビルから落ちてきた人物。
たしかにあれは、自分の友人だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
40
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる