レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

文字の大きさ
15 / 49

第15話 俺にとって、君は

しおりを挟む
 宿を出ると、あたりはすっかり夜の帳に包まれていた。
 村のど真ん中を貫く通りは、土がむき出しのまま、しんと静まり返っている。
 ひんやりとした夜気が肌を撫で、どこか遠くで、犬か何かの鳴き声が響いた。

 その冷えた地面の上に、あいつは立っていた。

「……太刀川」

 背中を向けたまま、うつむいた姿。

 こっから、どう話を切り出すべきか。
 そんなことを考えかけた矢先――太刀川が、ふいにこちらを振り返った。

「……ごめんね」
「え?」

 沈んだ顔。
 その目に浮かぶのは、戸惑いなのか、不安なのか。

「こないだから、ずっとよそよそしい態度とっちゃって……。星野君、やな思いしたでしょ」
「お、おう。いや、別に……っていうか、急にどうしたんだよ」

 太刀川は、うつむいたまま口をぎゅっと結ぶ。
 そして、ほんの少しだけ間を置いて――ぽつりとこぼした。

「……特別だって、思ってた」
「ん?」
「アタシにとっての星野君。星野君にとってのアタシ。異世界に来て、命がつながって、一緒にいろんなこと乗り越えて……。お互いにとって、お互いが特別だって信じてた。――勝手に」

 そこまで言って目を伏せる。
 それから、ひとつ深く息を吐いて、

「でもこの前……ロキシィが星野君に、キ、キスしたのを見て――はじめて、違うんだって思ったの」

 少し声が震えていた。

「星野君は、この世界で生きてく人なんだって。私とは違う景色を見て、私とは違う誰かと別の道を歩いてくんだなって。そんな当たり前のことに、今さら気づいたの」

 太刀川が、自分の気持ちをこんなにさらけ出すのを見たのは、たぶん初めてだった。

「そしたら、なんだか急に置いてかれたみたいな気がして。上手く話せなくなって、自分から距離とって……結局、余計に星野君を遠ざけて……アタシ、なにやってんだろって」

 照れ笑いとも泣き笑いともつかない顔で小さく笑い、

「……ごめん。わけわかんないよね。自分でも何言ってんのか、よく分からない。バカみたい」
「太刀川……」

 太刀川は一歩、俺に近づいた。

「でもね、知りたいの。怖いけど……どうしても知りたい」
「……何を?」
「アタシたちって……一体、何なのかな」
 
 どくん、と心臓が跳ねた。

「ただのクラスメイト? 相棒? それとも……もう少し、特別だったり、するのかな」

 月明かりが目の前の少女の姿を照らしている。
 不安げな瞳で、それでも俺の顔をまっすぐに見つめてくる。

 俺は、息を呑んだ。

 今さら何言ってんだよ、太刀川。

 俺たちは――お前は、特別だ。
 特別に決まってる。

 異世界に来たあの日。
 路地裏でお前が「絶対に守る」と手を伸ばしてきた瞬間から、お前は俺の唯一無二になった。

 だけど――それが何だってんだ。

 俺たちは、いつか必ず別れる。
 いや、別れるための方法を探してる。
 それが最初からの目的で、約束だからだ。

 だったら、考えるだけムダだろ。
 どうせ離れ離れになるんだから、最初から向き合わないほうがいい。
 そうしないと――辛いだけじゃねぇか。
 
 なのに、なんでだ。
 なんで今さらそんなこと聞くんだよ。
 そんな、悲しそうな顔で。

「太刀川……」

 その先に続く言葉なんて考えもしないまま、名前を口にする。

 そのときだった。

「くくくっ……いいなぁぁ。いいなぁ、お前らぁぁ」

 夜気を裂く、不気味な笑い声。
 振り向いた先――街灯ひとつない通りの真ん中に、いつの間にか一人の男が立っていた。

「青臭くてよぉ、ウソ臭くてよぉ……ブチ割ってやりたくなるよなぁぁ……」

 骨が浮き出た痩せっぽちの体を、ボロボロのシャツとズボンが覆っている。
 顔半分を覆う青黒い乱れ髪。その奥で赤くぎょろりと光る目玉がじっとりと俺たちを見据えていた。

 なんだこいつ、いつからこんな近くにいた?

「……誰?」

 太刀川が警戒をむき出しにして問う。

 男は答えなかった。
 代わりに、枯れ枝みたいな指が、ゆっくりと持ち上がる。

 指し示したのは俺――正確には、俺の腰にあるブックホルスターだ。

「いちおうの確認ってヤツだけどよぉぉ……そん中に入ってるの、黒の書だよなぁぁ……?」

 粘りつくような声に、背筋が冷たくなる。
 俺は無意識にホルスターを手で覆った。

「だったら、なんだよ?」
「くくくっ、そうかぁ。よかった、よかったぁぁ……く、くくくっ……」

 歯並びの悪い口をぐにゃりと歪ませ、男は薄気味悪く笑った。
 なんなんだ、こいつは?

 その指先が、ゆっくりと俺の顔へと向けられる。
 そして。

「じゃ、死ね」

 ビュンッ!

 一瞬で空気が裂けた。

「——!」

 刃物のように鋭く伸びた指先が、まっすぐ俺の眉間を貫こうと迫る。
 まるで死ぬ直前のスローモーション。
 景色が恐ろしく鮮明で、ゆっくりと、はっきりと、近づいてくる。

 よけろ。
 よけろよ、俺。

 脳が発する指令に、だけど、ノロマな身体はまったく反応せず――
 俺の視界は、唐突に暗転した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...