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001.元服

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 人は誰しもユニークスキルを持って生まれるこの世界。
 
 厳密にはユニークと言ってもオンリーワンとは限らずある程度系統立ってはいるのだが。

 例えば剣術系のスキル。人気一、二位を争うこのスキルは名前の通り剣が得意な者から、得物は槍や戦斧なんかにも派生する。戦闘に関して言えば花形であり、冒険者であれば中心的な存在になること間違いなし。この系統のスキルを持つ者は街の衛兵にもなれるという権利も得られる。衛兵は現代で言うところの公務員的なものと思ってもらってよく安定的な将来が約束される。

 例えば魔法系のスキル。魔法と一口に言っても、ほとんどは火風水土のいずれかに特化していることが多いがこちらも冒険者の間では火力担当で重宝されるスキルである。大抵の魔法使いはスキルを磨くために勉強するので頭が良いことが多く研究者になったり教師になったりとこちらも職に困ることはない。剣術系スキル同様、羨望されるユニークスキルの一つとされる。

 そのほか、料理や鍛冶、交渉といった非戦闘スキルも存在し、これらを専門職とする者も大勢いる。

 なお、先天的なユニークスキルを持っていないと魔法が使えないというわけではない。後から身につけることも可能である。しかしながら、その威力や効能をユニークスキル持ちと比べると超えられない壁があるというのが定説で、その労力をかけるぐらいなら自分のユニークスキルを磨いた方がはるかに効率が良いというのが一般論である。餅は餅屋。物々交換ならぬスキルスキル交換が常識なのである。

 なお、ときどき複数のユニークスキルを持つ者が存在する。仮に剣士と火の魔法スキルを持っているとしたらエリート街道まっしぐらの炎の剣士となって羨望の眼差しが得られることうけあいだ。もちろん戦闘系と非戦闘系のスキルを備えることもある。しかし、三つ以上のスキル所有者になるとまずまず珍しく、それ以上になると代々受け継がれる王の血族とか、由緒正しき血縁にしか現れないという噂である。一般人には手の届かない存在だということだ。

 そんな設定、もとい、そんな世界の片隅から物語は始まる。

 という、懇切丁寧なモノローグをしている俺は沖田総司(おきたそうし)。この名前に命名されたのは両親が新選組のファンであり沖田に生まれた宿命ってやつか、夢ではない、夢ではない。まあ、読みまで同じではないけれど。ちなみに友人からは特にひねりはなく「ソウ」と呼ばれることが多かった。

 さて、そんな俺は今日でちょうど十五歳になる。が、もともとは三十歳だったと言えば察しのいい皆ならきっと理解してくれるだろう。そう、いわゆる転生である。ちなみにこちらに来たのは十歳になる頃で、早五年が経過した。長々と解説したユニークスキルについてもこの五年で学んだ一端である。

 こちらの世界で十五歳はユニークスキルを自覚するとともに大人扱いとなる年齢である。昔風に言えば元服と同じだが特に深い意味はない。そう。例えばサブタイトルにするほどの意味はない。後で何年後、なんて展開がやりやすいとか、そんな打算的な考えがあるわけでは勿論ないのである、とも言い切れない。

 話を戻そう。今日でちょうど十五歳になる。そうハッピーバースデートゥーミーである。さっきも言ったが自分のユニークスキルを悟る歳である。生まれながらにスキルは備わっているが自覚するのは十五歳なのだ。理由は知らないがそれは経験的に、そういうふうに世界はできているのだ。だから別に異論を挟むこともない。ここは異世界。別に何があったって驚きやしない。驚きはしないつもりだったんだが、今朝起きたときには思わず独り言が口に出てしまっていた。

 「全能オールマイティってなに……」





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