オールマイティを手にした俺が正義の味方ぶってたら、いつのまにか詠われていた

瀬戸星都

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024.平常

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 俺は今どんな顔をしているだろうか。

 あんなに明るくて人懐っこかったハルが冷酷?

 にわかに信じることができない。

 ムクの街で起こった魔物の侵攻がハルを精神的に変えてしまったのだろうか。

「俺が街を離れなかったら……もっと早く戻っていれば……」

「たらればを繰り返しても、どうしようもないでしょ」

 そうは言うけれど、やはり悔やむ気持ちが消えない。

「それに一年早く戻っていればあたしや村長と会うこともなかったのよ。そうなってたと思うと……寂しいわ。あたしは」
 
 何も言えずにいるとカスミが続けた。

「ミハルが死んでしまっていたらどうしようもなかった。でも生きていれば何とかなるわよ。いや、何がなんでも何とかするの!」

「……」

 ……こいつ良いこと言うなぁ。

 十九の若い少女に中身的には三十八のおっさんが慰められている格好だ。

 カスミの優しさとある種尊敬のような感情と自分への情けなさが綯い交ぜになった複雑な心境で呆然とカスミを見てしまう。

「な、なによ……」

 見つめられたまま何も言葉を発しないことに戸惑うカスミ。

「いや、優しいなぁと思って」

「……今頃気づいたの?」

「その優しさもスパイの仕事の一部か?」

「お得意様へのサービスよ」

 ピシッと決まったウインクを貰った。

 惚れてまうやろ。いや、割とマジで。
 
 寝るにはまだ早い時間だったが、その後は特に出かける気になれず明日のことも考えて休むことにした。


 翌朝、目が覚めると至近距離にカスミの顔があった。

「お・は・よ」

「…おはよ。挨拶はいいが、無駄に科を作るんじゃない」

「あら、冷たい。一夜を共にした仲じゃない」

「同じ部屋で過ごしただけだ。そういう意味では一夜どころか毎夜共にしているだろ」

「でも、同じ部屋にいて手を出さないってどうかと思うわ。男として」

 昨日、襲われる前に逃げるって言ってたよな?

「女として自信なくなるなぁ」

 そう言いながらも、スタイルの良さ…特に胸のあたりを強調して見せつけてくる。

「おまえはどんなキャラを目指してるんだ……」

「女心は複雑なのよ」

 起き抜けから飛ばしている気もするが、今日も平常運転である。
 

「今日はいよいよ入学試験ね」

「そうだな」

 一階でカスミと朝食をとる。朝のメニューはスープとパンだった。焼き立ての香ばしい香りに食欲をそそられる。そう言えば昨日の夕飯を食べてなかったな。

「どうやってミハルを見つければいいかと考えていたが、三姫の一人が本人だと判明したし、とりあえず試験の合格を目指せばいいか」

「そうね。試験内容次第だけど、もしかしたら期せずして会える可能性もあるわね。去年は在校生との模擬戦だったらしいし」

「なるほど、今年も同じだとミハル自身が出てくる可能性はあるか」

 しかし模擬戦か。今どきの学生はどれぐらいのレベルだろうか。ここ一年ぐらい、まともに対人訓練したのはカスミとその父であるヒエイぐらいだ。この二人のレベルは参考にならないだろう。

 強いて参考になると言えば、昨日フレアウルフを討伐した吹雪隊ぐらいだろうか。あまり魔法が洗練されている気はしなかったが。まっ、考えても仕方がないか。

 朝食を終えるとカスミと士官学校へと向かった。


 もともと近くの宿だったので士官学校は目と鼻の先だったが、正門が見え始めた頃、想像と様子が違っていた。人だかりが凄いのだ。

「あれ、全部入学希望者か?」

「そうね。ちょっと多いわね」

「ちょっと…?」

 ざっと二千人ぐらいはいるんじゃないだろうか。ガリオンが大都市と言えど、ここまで集まるか?

 幸いにも正門を超えたところは広大なスペースがあったので何とか収まりきってはいるのだが、とにかく人が多い。

「それだけ周囲の街や村からガリオンに移ってきているということか?」

「それしか考えられないわね」

 思っているよりも事態は深刻なのかもしれない。

「ちなみに去年の人数は調べてるか?」

「去年は五百人の入学希望者のうち、二百人合格ってとこね」

「今年も同じだとすると合格率は十人に一人ってところか」

 なかなかの競争率だな、なんて考えていたところで、よく響く声が届いた。

「諸君、よく来てくれた!これから入学試験を始める!」

 少し高くなったところから発せられた声はクレアのものだった。
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