オールマイティを手にした俺が正義の味方ぶってたら、いつのまにか詠われていた

瀬戸星都

文字の大きさ
43 / 62

041.憑依

しおりを挟む


 どこかで聞き覚えのある声だった。

 とりあえず周囲を見回しておいたが、案の定、声の主は見当たらない。

『なんじゃ、わざとらしい』

 頭に声がっ!?

『おぬし、わかってやっておるじゃろ?わっちをバカにしておるのか?』

「いや、とりあえずお決まりかな、と思って」

 元の世界では、まるで異世界ファンタジーのバーゲンセールだな、と言っていいほどそういう類の話が蔓延っていたのだ。そんな世界で鍛えられた自分にとって、もはや脳内に声が聞こえたところで驚きはしない。

『おどかし甲斐のない。つまらぬやつじゃ』

 サプライズ的な感じを狙っていたのだろうか。なかなか乙女らしいところがある。しいていうなら、口調に反して声が可愛らしいことには驚いたと言ってもいい。どこぞの賢狼のようだ。姿形でも見せてくりゃれ?

『嫌じゃ』

 どうやら会ってそうそう不機嫌らしい。いや、面と向かって会ってはないが。ゆっくりふざけている場合でもないので、少し真面目な話に戻る。

「久しぶり、か?」

『くふっ。まさか覚えておったとはの』

 幾分機嫌が戻ったようだ。気分屋さんかな。

「まぁ、少しだけ」

 そういや、あのときも熊と戦ってたなぁ。

 三年前、ブラックベアとワイルドボアがムクの街に攻めてきたときのことをしみじみと思い返す。最後、ワイルドボアの侵攻を防ぐために使った地割れの魔法。

 今思い返せば、オールマイティを授かったとはいえ、分不相応なレベルの魔法だった。しかしそれが正しく発動したのは何者かが支えてくれたからと考えればしっくりくる。そのときに微かに聞こえた声と今聞こえている声が同じだった。

「それにしてもどうして急に?」
 
『なにを言う。わっちはずっと近くで見ておったぞ?』

 ずっと見てたっ?! 

 ストーカーの素質があるな。

『何やら無礼なことを考えておるじゃろ』

 おっと、危ない。思考が漏れてしまうパターンか。

『わっちらとて存在こそ違うものの、人と変わりゃせん。あるものは移ろい、あるものは動かず、あるものは去り、あるものは生まれる』

 その達観したような言葉にはどこか神聖さを感じた。


『わっちは面白そうなお主について行ったまでのことよ』


 動機が軽いっ! 一瞬浮かんだ畏敬の念を返してほしい。
 
 それにしてもついて行ったって、まさか三年前からか?

「もっと早く話しかけてくれてもよかったのに」

『おぬしがわっちの力を使いこなせるようなるまで、会ったところで意味はないからのう』

 なるほど、逆に言えば今ならわっちさんの力を享受できるということだろうか。しかし、また急な話だ。最近特にレベルアップした感覚はなかったが。

 などと脳内会話をしていたところで、ミスリルベアが突進を始めていたことに気づいた。話し込んでいて反応が遅れた。慌ててその進路から外れるように逃げ走る。

「わかった。とりあえず今なら力を貸してくれるということだな?」

『そうじゃ。あんな熊なんかにいいようにやられている場合ではないぞ?わっちの方が凄いんじゃからの!それはもう間違いなくの?!』

 お、おぉ?なんか変なやる気が感じられるぞ。

『さぁ、わっちの名を呼ぶのじゃ』

 じゃあちょっと雰囲気を出しておこう。


 ――ずっと…何かを……目に見えない……誰かを……探していた気がする。


「わっちの名は?」


 そのとき、昔から知っていたかのように一つの名前が頭に浮かんだ。


「ムクヒメ!」


 そう叫んだ瞬間、自分の右腕が光を放った。

 いや、むしろ逆か?

 周囲の魔力を吸収するかのように光が右腕に流れ込んで集まってくる。すると今までに感じたことのないほどの力が溢れ出してきた。

 そして光は徐々に形を変えていく。
 
 腕全体を覆うような硬質感。

 さらに光は甲から鋭く尖って伸びていく。

 やがて光が収まる頃には右腕に重厚さに満ちた金属製の大きな鉤爪が装着されていた。初めてつけたはずなのに、まるでずっと前から身体の一部だったかのような全く違和感のない装着感だった。

 同時にやや希薄だったムクヒメの存在が強く感じられた。というよりも右腕の近くに小型サイズの獣人の少女が浮遊していた。そしてある一つのことに気づいてしまった。

 ムクヒメ…お前……。


「白熊クマァ!?」


 しまった。動揺して語尾が変わってしまった。

 突然ムクヒメが話しかけてきた理由。

 まさかとは思うが同族嫌悪的なやつ、あるいは熊同士のプライド的な何かではなかろうか。

 そんな考えは、さっきまでより深く繋がったムクヒメに伝わる。
 
『愛らしいじゃろ?』

 もはや鮮明に視える小柄な少女の無邪気なウインクに、戦う前からそこはかとい疲労を感じたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

処理中です...