46 / 62
044.焦燥
しおりを挟む
モンアヴェール中腹ではさっきまでの戦闘が嘘だったかのように静けさを取り戻していた。
今はフェリィの指示のもと受験者たちがミスリルベアとミスリルウルフから素材になりそうな部分を回収している。
他人事のように言ったが、自分も一応受験者なので素材回収に参加していた。が、小隊に入ってるわけでもなく、カスミもいないビースターズでは軽いぼっち感を味わっていた。少し離れて作業している受験者達は固まって何やら話をしている。
『ソーシ副長だぞ』
『おい、おまえ話しかけてみろよ』
『どうやってあそこまで強くなったんだ?』
『何のスキル持ちだろう?』
『それは防御魔法に決まってるでしょう?』
『ヒソヒソ』
『でも火の魔法も使ってたぞ、しかもかなりのレベルで』
『まさかダブルスキル?』
『お近づきになりたいわ』
しかし、受験者達の話題には登場しているようだった。まぁ少し衝撃的な戦闘ではあったろうからさもありなん、といったところかもしれない。
が、ヒソヒソ話すなら聞こえないようにやって欲しい。気になるから。なんなら直接聞いてくれたほうがまだマシである。あと、どさくさに紛れてヒソヒソって言ったやついた?!
聞き耳スキルが効いているのか受験者達の会話は丸聞こえだ。
「やれやれ」
ため息をついたところでフェリィが近づいてきた。身長が低い分、貸した上着が上下の大事な部分を上手く隠していた。いわゆる裸ワイシャツ的な格好といった方が想像しやすいかもしれない。大丈夫。履いてますし、透けてもなくて健全です。
「他の小隊について、何か知ってる?」
至って真面目な話だったのでピンク思考を投げ捨てた。
「指示通り、ここまでの道中、小隊のサポートについて魔物の討伐を援護しました。途中で上の方から嫌な気配がしたところ、ちょうどクレア隊長と合流したので残りの小隊の方は任せてこちらに駆けつけました」
「そう、クレア隊長がついてるなら、安心」
「ええ、でもどの小隊もAランクの魔物との戦闘になっていましたよ」
「……あきらかに異常。中腹あたりでSランクが出現することもまず無い。それがまさか二体も同時なんて」
一つの嫌な予感がよぎる。
もし普段、モンアヴェール中腹以上にいるAランクの魔物が、Sランクの魔物の出現によって下まで追いやられていたとしたら。
Sランクの魔物は一体何から追いやられて中腹まで下りてきた?
似たような考えに至ったのか、フェリィと険しい視線が重なったところで遠くから声が聞こえた。
「フェリィ隊長!無事ですか!?」
クレア隊長だった。二つの小隊を引き連れている。ここにいる小隊と合わせて五隊。既に下山をしているはずの残りの小隊を加えると、これで全ての小隊が無事だったことになる。とりあえず大事はなくてよかった。他人とは言え同じ隊になった受験者に万一のことがあったら目覚めが悪い。
フェリィとともにクレアのところへ駆け寄る。
「残りの小隊も無事だったのですね」
「ええ。同じようにAランクの魔物に襲われていたのですが、よく耐えていてくれました」
クレアの後ろにいた小隊の様子を窺うと満身創痍ながらも無事なようだ。
「あの魔物たちは…?」
逆にクレアが素材回収している方を窺った。
「ミスリルウルフとミスリルベアです」
クレアは半ば絶句していたが、すぐに首を振ってため息をついた。
「ソーシさんに関しては何があっても驚かないつもりでしたが、まさかSランクの魔物まで倒してしまうとは……」
「半分はフェリィ隊長がやったことですよ」
「……他にも色々あった。戻ったら正しく報告しておくから」
フェリィが補足した。クレアはその様子をみて苦笑する。
「不謹慎かもしれませんが、お二人の活躍が見れなかったのが残念です」
そのときだった。
また別の方向から声が聞こえた。
『クレア隊長ーー!!』
声の方を振り向くと人影があった。よく見ると、見たことのない服装だった。少なくとも受験生でも吹雪隊でもない。
「彼女は紅蓮隊の隊員ですね」
同じく声の方に注意を向けたクレアの声には先ほどと変わって深刻な声色が混じりっていた。そして、すぐに声の方へと駆け出していた。
それも当然だった。こちらに歩いてくる紅蓮隊の隊員の足取りは悪く、そのまま地面に倒れてしまった。急いで一緒に駆け寄ると、そこにはひどく負傷した女性の姿があった。
「大丈夫ですか?!しっかりしてください!何事ですか?!」
クレアに支えられた女性には幸いまだ意識があった。
『紅蓮隊が…、紅蓮隊が………全滅しました』
「?!」
今度こそ完全に誰もが絶句してしまった。
悔しそうに絞り出した紅蓮隊の隊員の衝撃的な事実に、カスミ、ハル、リリアの三人の顔が浮かんでは心臓が締め付けられるような感覚に襲われるのだった。
今はフェリィの指示のもと受験者たちがミスリルベアとミスリルウルフから素材になりそうな部分を回収している。
他人事のように言ったが、自分も一応受験者なので素材回収に参加していた。が、小隊に入ってるわけでもなく、カスミもいないビースターズでは軽いぼっち感を味わっていた。少し離れて作業している受験者達は固まって何やら話をしている。
『ソーシ副長だぞ』
『おい、おまえ話しかけてみろよ』
『どうやってあそこまで強くなったんだ?』
『何のスキル持ちだろう?』
『それは防御魔法に決まってるでしょう?』
『ヒソヒソ』
『でも火の魔法も使ってたぞ、しかもかなりのレベルで』
『まさかダブルスキル?』
『お近づきになりたいわ』
しかし、受験者達の話題には登場しているようだった。まぁ少し衝撃的な戦闘ではあったろうからさもありなん、といったところかもしれない。
が、ヒソヒソ話すなら聞こえないようにやって欲しい。気になるから。なんなら直接聞いてくれたほうがまだマシである。あと、どさくさに紛れてヒソヒソって言ったやついた?!
聞き耳スキルが効いているのか受験者達の会話は丸聞こえだ。
「やれやれ」
ため息をついたところでフェリィが近づいてきた。身長が低い分、貸した上着が上下の大事な部分を上手く隠していた。いわゆる裸ワイシャツ的な格好といった方が想像しやすいかもしれない。大丈夫。履いてますし、透けてもなくて健全です。
「他の小隊について、何か知ってる?」
至って真面目な話だったのでピンク思考を投げ捨てた。
「指示通り、ここまでの道中、小隊のサポートについて魔物の討伐を援護しました。途中で上の方から嫌な気配がしたところ、ちょうどクレア隊長と合流したので残りの小隊の方は任せてこちらに駆けつけました」
「そう、クレア隊長がついてるなら、安心」
「ええ、でもどの小隊もAランクの魔物との戦闘になっていましたよ」
「……あきらかに異常。中腹あたりでSランクが出現することもまず無い。それがまさか二体も同時なんて」
一つの嫌な予感がよぎる。
もし普段、モンアヴェール中腹以上にいるAランクの魔物が、Sランクの魔物の出現によって下まで追いやられていたとしたら。
Sランクの魔物は一体何から追いやられて中腹まで下りてきた?
似たような考えに至ったのか、フェリィと険しい視線が重なったところで遠くから声が聞こえた。
「フェリィ隊長!無事ですか!?」
クレア隊長だった。二つの小隊を引き連れている。ここにいる小隊と合わせて五隊。既に下山をしているはずの残りの小隊を加えると、これで全ての小隊が無事だったことになる。とりあえず大事はなくてよかった。他人とは言え同じ隊になった受験者に万一のことがあったら目覚めが悪い。
フェリィとともにクレアのところへ駆け寄る。
「残りの小隊も無事だったのですね」
「ええ。同じようにAランクの魔物に襲われていたのですが、よく耐えていてくれました」
クレアの後ろにいた小隊の様子を窺うと満身創痍ながらも無事なようだ。
「あの魔物たちは…?」
逆にクレアが素材回収している方を窺った。
「ミスリルウルフとミスリルベアです」
クレアは半ば絶句していたが、すぐに首を振ってため息をついた。
「ソーシさんに関しては何があっても驚かないつもりでしたが、まさかSランクの魔物まで倒してしまうとは……」
「半分はフェリィ隊長がやったことですよ」
「……他にも色々あった。戻ったら正しく報告しておくから」
フェリィが補足した。クレアはその様子をみて苦笑する。
「不謹慎かもしれませんが、お二人の活躍が見れなかったのが残念です」
そのときだった。
また別の方向から声が聞こえた。
『クレア隊長ーー!!』
声の方を振り向くと人影があった。よく見ると、見たことのない服装だった。少なくとも受験生でも吹雪隊でもない。
「彼女は紅蓮隊の隊員ですね」
同じく声の方に注意を向けたクレアの声には先ほどと変わって深刻な声色が混じりっていた。そして、すぐに声の方へと駆け出していた。
それも当然だった。こちらに歩いてくる紅蓮隊の隊員の足取りは悪く、そのまま地面に倒れてしまった。急いで一緒に駆け寄ると、そこにはひどく負傷した女性の姿があった。
「大丈夫ですか?!しっかりしてください!何事ですか?!」
クレアに支えられた女性には幸いまだ意識があった。
『紅蓮隊が…、紅蓮隊が………全滅しました』
「?!」
今度こそ完全に誰もが絶句してしまった。
悔しそうに絞り出した紅蓮隊の隊員の衝撃的な事実に、カスミ、ハル、リリアの三人の顔が浮かんでは心臓が締め付けられるような感覚に襲われるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる