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046.拒否
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時を同じくして、モンアヴェールのとある一角にて。
「カハッ…ハァ、ハァ…」
咳き込むと血の味がした。
「どうした。その程度か?紅蓮隊隊長の力は」
未だに信じられない。今朝まではただの同僚。もう少し言えばガリオンの誇る三つの特殊部隊の同じ隊長だったはずだ。それがなぜか今は敵対する形となっていた。
「……ライトニング」
「くっ!」
飛来してきた雷をすんでのところで避けるが、着地でバランスを崩し、そのまま地に転がる。とにかく魔法が速すぎる。獣人の反射神経をもってしても避けるのが精一杯で、とても反撃できる状況にならない。
敵にして改めてその厄介さを感じていた。さすがガリオン最強と謳われているだけある。純粋な腕力だけなら遅れをとるつもりはないが、総合的な戦闘力でみると悔しいがガライのほうが頭ひとつ抜けている。
ちらりと後方を見ると、そこには数人の雷鳴隊の隊員とモノクローム部隊が交戦していた。と言っても、受験者たちはほとんど戦力になっておらず、隊長であるミハルと副隊長のカスミだけで戦っているといっても過言ではない。
状況は芳しくない。
はじめに油断して一撃もらったのがまずかった。回復魔法で出血は止まっているものの流した血液までは元には戻らないし、痛みは残っていて動きが鈍くなってしまっている。
今、部下の一人にクレアへの救援を頼んでいる。ここは時間稼ぐのが得策か。
「なぜ、こんなことを?」
「なぜ?それはこちらの台詞だ。この獣人風情が!」
突然の本性の発露に面食らった。
が、その一言で合点がいった。そういえば、ガライの出身は人間至上主義の多い地方だった記憶がある。
「……あんた、人間至上主義だったのね」
「なぜ貴様らはのうのうと社会に溶け込んでいる?!皆気づいているだろう。いわゆる魔物はそのほとんどが獣たちだと。つまり貴様ら獣人は魔物と紙一重の存在ということだ。百歩譲って敵対しないとしても対等の存在だと思うな!」
典型的な人間至上主義の主張だった。
「……あんたの主義がどうだろうと知ったことじゃないが、じゃあなぜガリオンに関わる?」
「ふん。気に食わないが世界五大都市というだけあってガリオンはデカい。貿易も防衛設備も悪くない。外から攻めるのには苦労する。となれば、中から支配するのが簡単だろう?幸いクレストにも同じことを考える同志諸君は沢山いてな……。あいつらもその一端さ」
ガライが歪んだ笑いを浮かべながらモノクロームと対峙している雷鳴隊の隊員を指差す。
「……内通者か」
まさかガリオンでも有名な隊長自身がスパイだったとは予想しなかった。
「魔物を退治してりゃあ勝手にもてはやしてくれて気づけば隊長。簡単なご時世だ。この点だけは魔王に感謝してやってもいい」
「……なぜこのタイミングを狙った?」
「もちろん都合がいいからに決まっている。ガリオンの主力であるお前達が集まること、そして、今後脅威になりえる士官学校の学生をまとめて葬るまたとない機会だ」
ガライが続ける。
「冥土の土産ついでにもう一つ教えてやろう。もうじきガリオンに侵攻する勢力が揃う。近いうちにもっと大勢でガリオンに挨拶にくることなるだろう」
なんてことだ。魔王軍に一丸となって対抗しなければならないときに、足の引っ張りあいとは情けなくなってくる。ただ本当に情けないのは、この悪行を止めるのに自分の力が足りないことだ。せめて万全であれば一矢報いることもできるかもしれないのに。
「……さて、時間稼ぎは終わったか?」
「くっ!」
炎を手に宿し、地面を強く蹴った。一足飛びに接近し拳を振るう。
しかしガライの左腕につけられた盾で受け流され、そのまま回し蹴りをくらって地面に転がった。
「ふん。助けがきたところで、かえって探す手間が省けて好都合というもの。だが、それまで待ってやる必要もない、先に片付けてやろう」
ガライはそう言うと剣先をこちらに向けた。
ダメだ、殺られる――ッ!
エンコが諦めようとしたとき、ガライに向かって何かが飛んできた。ガライもすぐに気づいたのか上体を逸らすようにして躱した。そして飛来物がきた方向を確認するとガライは低い声で笑い出した。
「クククッ……フハハハッ!やはりおまえはいいなっ!」
そこにはガライの同志である雷鳴隊の隊員達を退けたカスミが立っていた。
「昨日手合わせしたときから思っていたぞ。強いうえに容姿も悪くない。どうだお前、俺の女にならんか?」
「えっ?お断り」
カスミは間髪いれずに答えると、身体をほぐすようにその場で軽くジャンプした。
「まぁ、ちょっとアイデンティティを守るためにもスパイ隊長にはご退場願いますか」
そういって次に着地した瞬間、カスミの姿が消えた。
「カハッ…ハァ、ハァ…」
咳き込むと血の味がした。
「どうした。その程度か?紅蓮隊隊長の力は」
未だに信じられない。今朝まではただの同僚。もう少し言えばガリオンの誇る三つの特殊部隊の同じ隊長だったはずだ。それがなぜか今は敵対する形となっていた。
「……ライトニング」
「くっ!」
飛来してきた雷をすんでのところで避けるが、着地でバランスを崩し、そのまま地に転がる。とにかく魔法が速すぎる。獣人の反射神経をもってしても避けるのが精一杯で、とても反撃できる状況にならない。
敵にして改めてその厄介さを感じていた。さすがガリオン最強と謳われているだけある。純粋な腕力だけなら遅れをとるつもりはないが、総合的な戦闘力でみると悔しいがガライのほうが頭ひとつ抜けている。
ちらりと後方を見ると、そこには数人の雷鳴隊の隊員とモノクローム部隊が交戦していた。と言っても、受験者たちはほとんど戦力になっておらず、隊長であるミハルと副隊長のカスミだけで戦っているといっても過言ではない。
状況は芳しくない。
はじめに油断して一撃もらったのがまずかった。回復魔法で出血は止まっているものの流した血液までは元には戻らないし、痛みは残っていて動きが鈍くなってしまっている。
今、部下の一人にクレアへの救援を頼んでいる。ここは時間稼ぐのが得策か。
「なぜ、こんなことを?」
「なぜ?それはこちらの台詞だ。この獣人風情が!」
突然の本性の発露に面食らった。
が、その一言で合点がいった。そういえば、ガライの出身は人間至上主義の多い地方だった記憶がある。
「……あんた、人間至上主義だったのね」
「なぜ貴様らはのうのうと社会に溶け込んでいる?!皆気づいているだろう。いわゆる魔物はそのほとんどが獣たちだと。つまり貴様ら獣人は魔物と紙一重の存在ということだ。百歩譲って敵対しないとしても対等の存在だと思うな!」
典型的な人間至上主義の主張だった。
「……あんたの主義がどうだろうと知ったことじゃないが、じゃあなぜガリオンに関わる?」
「ふん。気に食わないが世界五大都市というだけあってガリオンはデカい。貿易も防衛設備も悪くない。外から攻めるのには苦労する。となれば、中から支配するのが簡単だろう?幸いクレストにも同じことを考える同志諸君は沢山いてな……。あいつらもその一端さ」
ガライが歪んだ笑いを浮かべながらモノクロームと対峙している雷鳴隊の隊員を指差す。
「……内通者か」
まさかガリオンでも有名な隊長自身がスパイだったとは予想しなかった。
「魔物を退治してりゃあ勝手にもてはやしてくれて気づけば隊長。簡単なご時世だ。この点だけは魔王に感謝してやってもいい」
「……なぜこのタイミングを狙った?」
「もちろん都合がいいからに決まっている。ガリオンの主力であるお前達が集まること、そして、今後脅威になりえる士官学校の学生をまとめて葬るまたとない機会だ」
ガライが続ける。
「冥土の土産ついでにもう一つ教えてやろう。もうじきガリオンに侵攻する勢力が揃う。近いうちにもっと大勢でガリオンに挨拶にくることなるだろう」
なんてことだ。魔王軍に一丸となって対抗しなければならないときに、足の引っ張りあいとは情けなくなってくる。ただ本当に情けないのは、この悪行を止めるのに自分の力が足りないことだ。せめて万全であれば一矢報いることもできるかもしれないのに。
「……さて、時間稼ぎは終わったか?」
「くっ!」
炎を手に宿し、地面を強く蹴った。一足飛びに接近し拳を振るう。
しかしガライの左腕につけられた盾で受け流され、そのまま回し蹴りをくらって地面に転がった。
「ふん。助けがきたところで、かえって探す手間が省けて好都合というもの。だが、それまで待ってやる必要もない、先に片付けてやろう」
ガライはそう言うと剣先をこちらに向けた。
ダメだ、殺られる――ッ!
エンコが諦めようとしたとき、ガライに向かって何かが飛んできた。ガライもすぐに気づいたのか上体を逸らすようにして躱した。そして飛来物がきた方向を確認するとガライは低い声で笑い出した。
「クククッ……フハハハッ!やはりおまえはいいなっ!」
そこにはガライの同志である雷鳴隊の隊員達を退けたカスミが立っていた。
「昨日手合わせしたときから思っていたぞ。強いうえに容姿も悪くない。どうだお前、俺の女にならんか?」
「えっ?お断り」
カスミは間髪いれずに答えると、身体をほぐすようにその場で軽くジャンプした。
「まぁ、ちょっとアイデンティティを守るためにもスパイ隊長にはご退場願いますか」
そういって次に着地した瞬間、カスミの姿が消えた。
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