オールマイティを手にした俺が正義の味方ぶってたら、いつのまにか詠われていた

瀬戸星都

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050.放心

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 ガキイィン!キンッ!キンキンッ!

 互いの武器が交錯する音が響く。

 しかし徐々にガライの対応が遅れていた。カスミがさらに攻撃の手を速めていたのだ。

「ぐっ?!まだ余力を残していたか!」

「まだまだ、こんなもんじゃないでしょ?」

 カスミは余裕の笑みを見せる。

(この女、無性に戦い慣れている?!)

 声には出さなかったがガライは内心舌を巻いていた。速いだけでなく狙いも正確に急所をついてくる。ゆえに簡単に当たってやるわけにもいかず、防御に気を取られて攻撃の手が遅れる。

 それに戦いながらのこの余裕。これがハッタリでなければ、本気の速さに関してはガリオン最強とも噂される自分よりも上か。にわかには信じ難い事実だった。

 だが、ガライも伊達に隊長をやっていたわけではない。
 
「ライトニング!」

「!!」

 剣で分が悪いと判断するやいなや、あっさりと魔法主体の攻撃に切り替える柔軟性を持ち合わせていた。魔物相手でも斬撃や打撃の効果の薄いものがいて、魔法が必須となることは珍しくない。どちらに対しても有効な攻撃ができることはガライの長所だった。

 カスミは魔法で反撃することもなく、攻撃の手を止めて回避した。

「さっきまでの勢いはどうした?」

 防御に気を取られることがなくなったガライは次々と雷魔法ライトニングを連発する。

(面倒ね……)

 カスミは反撃の糸口が掴めず回避に専念していた。

 ガライから繰り出される雷魔法ライトニングはそもそも基本の火水水土の属性ではなく、上手く扱える人が少ない高度なものだ。それがユニークスキルで威力が通常と比べて遥かに大きく、厄介なことこの上ない。

 エンコからの応援が期待できないか、ちらりと後ろを見やると、むしろこちらを終わらせて援護にいかないといけないほどに悪い方向へと状況が変わっていた。
 
 自己責任とは言え、自分が近くにいたのに幼馴染ミハルに万が一があったとなると、どうなるだろう。ソウは私に怒るだろうか?責めるだろうか?
 
 いや、どちらでもなくてソウが自身を責める方がありえるか。むしろいっそ責められた方が楽だと思えるぐらい嫌な空気になりそうだ。

 そんな空気はゴメンだし、ソウにガッカリされたくはない。

 そんな感情が湧いてくることに驚き半分、あたしも単純だなぁ、という呆れが半分。

「全く、どこをほっつき歩いているんだか」

 文句を言いながら、再びカスミが攻勢に転じるのだった。



「なっ…!」

 エンコは絶句していた。
 
 雷鳴隊を再び戦闘不能にしている途中で向こうに新たな増援がきたのだ。ただ、それは単純な敵ではなかった。

「お前ら……」

 それは同じように意識のない、自分の隊員たちだった。数は十人以上にのぼる。モノクロームの受験者につけていた者たちだ。

「まさか……紅蓮隊の方々まで……」

 リリアが呟く。

 一体何がどうなっているのだろうか。流石に紅蓮隊の隊員たちまで皆クレストの手のものだったとは考えにくい。それによく見ると紅連隊の隊員たちも既に負傷していて、とても戦える状態にも見えない。

 これもガライが仕組んだ展開なのだろうか。しかし、操作系の魔法だとしても、この人数を操るなど見たことも聞いたこともない。

 と、リリアが考えを巡らしていたところでエンコが地面を拳で叩いた。

「許さねぇ……絶対に!」

 エンコは唇を噛んだ。

「お前ら、歯食いしばりやがれっ!」

 エンコが紅連隊に向かって攻撃を仕掛けた。

 しかし、紅連隊はその動きを読んでいたかのように最初の一人が防御すると同時に二人目と三人目がエンコに反撃した。

「クッ!」

 エンコは何とか片方の反撃を防いだが、もう一人の攻撃をまともに受け地面に転がった。
 
「エンコ隊長!」

 ミハルとリリアが声を上げる。

「……意識はなくても身体は覚えてるってか」

 共に紅連隊で闘ってきた仲間たちだ。いつもの癖で仕掛けた自分の攻撃パターンが完全に読まれていた。おまけに自分が教え込んだ一糸乱れぬ連携攻撃に逆にハマってしまった形だ。

「…!!…風よっ!」

「グラビティ!」

 エンコの攻勢が止まると再び雷鳴隊が攻撃を再開し、リリアとミハルは魔法で応戦する。しかし、一部の雷鳴隊の隊員たちが魔法を相殺しながら徐々に近づいてきていた。

「まずい……!!」

 エンコが雷鳴隊に目標を切り替えて間に割って入ろうとするが、その行く手を阻むように紅連隊が壁となった。

「どきやがれ!」

 なおも突破しようとするエンコだったが、それよりも速く、雷鳴隊の二人がリリアとミハルの魔法を突破して、それぞれミハルとリリアに斬りかかった。

「「……!!!」」

 ミハルもリリアも近接戦が全くだめというつもりはなかった。士官学校でも近接戦闘の訓練はあった。しかしそれは対魔物を想定したもので、対人戦闘すなわち人間同士で命を奪い合うという覚悟をまだ持っているはずもなかった。

 その結果、二人は何も身動きが取れなかった。いや、たとえ動けたとしても実戦経験の豊富な雷鳴隊の隊員相手では意味はなかったかもしれない。

「ミハル!リリアっ!」

 エンコの声が響く。

 容赦の無い鋭い太刀が二人を襲うまさにその瞬間。

「………ァロー!」

 遠くから聞こえた声とともに、その太刀は雷鳴隊の隊員ごと吹き飛ばされ二人に到達することはなかった。 

「氷の…矢?」

 ミハルはまだ何が起こったか完全に理解できないまま、無意識に魔法が飛んできた方向を見た。

 すると、そこには心配そうに駆けてくる幼馴染の姿があった。


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