縁の下の能力持ち英雄譚

瀬戸星都

文字の大きさ
5 / 51

0004.深緑の神殿

しおりを挟む

 いつから建っているのだろうか、経年的な劣化はあるが何か見えない力に守られたように一定の質を保っているようにも見える。入り口は開放的で侵入を拒むものは特にない。奥行きはそこまで広くなく少し歩くとすぐに最奥の広間にたどり着いた。

 部屋の中央には台座があり、更にその先には白い石像が立っていた。
 いかにもな儀式に使われそうである。フラグにしたくはないが、石像は今にも動き出しそうだ。決してフラグではないからね。

「これが祀られている神か?」

 翼の生えた人間が両手に盃をもって水を移し替えている。
 天使を模しているのだろうか。空想上では翼人なんてのもいるかもしれない。

 中央の台座まで歩み寄ると、台座に手をつきながら像をじっくりと観察した。

 ーー汝、力を欲するか?

 不意に頭の中で声が響いた。

 な、なんだ!? どこから?

 ーー答えよ。汝、力を欲するか。

 平常時であればこんな超常現象に遭遇すると大騒ぎするところだが、そもそも異世界に転移したらしい現状では驚きも半分である。もういっそ女神でも女神でも出てきくれ。

 余計なほうへ思考が進んでしまい、返事をしなかったためか脳内の声が少し怖くなった気がする。

 ーー我が有すは調和の力。過ぎたるを戒める力。我が力をもってすれば魔王と言えども遅れはとるまい。富も力も名声もこの世のすべてがお前のものとなろう。

 !?

 いきなりチートフラグを踏んでしまったのだろうか。それに魔王という聞き捨てならない単語を聞いた。

 この世界には魔王が存在する。

 しかし力を手に入ればそれすらも凌駕するらしい。もはや無敵。人生イージーモード。迷うまでもない。


 ーーもう一度だけ問う。汝、

「答えはノーだ」


 言い終わる前に答えた。

 無双な人生も悪くないかもしれない。だが、そんなうまい話が早々あるだろうか。天の邪鬼と言われようと人の話は疑ってかかるのが定石だ。人かどうかは微妙なところではあるが。

 さらに言えば、調和の力と言っている割にはすべてを手に入れられるという矛盾。力を持つものは身を滅ぼすとも言うし類は敵を呼んでしまうかもしれないしな。

 もっと疑ってかかるならこの世界の魔王が悪いやつだとまだ決まったわけではない。最近はそんな物語も多くなってきた。それに魔物にとっては神様みたいなものだろうし。

自分にとって正しいと思う道は自分で決めたい。そうでなくては自分である意味がないからな。


 ーーよかろう。汝に力を与えよう。


 神様は耳が悪いのだろうか。ちょっとカッコつけた心の声を返してくれ。


 ーー案ずるな。力をどう使うかは汝次第だ。必要なときに何もできないのは憐れの極み。


 それはおっしゃる通りなんだけど。何、神様は意外と親身なの。


 ーー我は神ではない。それに授けるのは魔王を御するほどの力でもない。


 そこまで嘘なのか。いや要らないとは言ったんだけど、くれるなら気になるのが人間だよね。


 ーー我は調和を司るもの。使いこなしてみせよ。


 そう声が響いた後、石像から発した光で部屋中が包み込まれた。

 光は一瞬で収まり、何事もなかったように辺りを静寂が包んだ。

 何の力か説明はないわけね。石像を一瞥したところで台座から手を離した。

「なっ、なに今の!? 今、確かに光ったわよね!」

 静寂を破ったのは待ち望んでいた久々の人の声だった。

 声がした方に振り返ると広間の入り口には二つの影が伸びていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

処理中です...