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0009.能力の発動
しおりを挟む「っつ!」
一瞬遅れて燃えるような熱さを感じた。
自分と組み合っていた狼は横に倒れ、焼けたような匂いが鼻をついた。
「大丈夫っ!?」
声の主が走り寄ってくる。
ミラは二匹の狼を退けたようだ。一匹に苦戦している自分とは大違いで情けなくもある。
それにしてもさっきの炎はいったい。
「見せて!火傷を手当しないと!」
ミラは慌てたように走り寄ってきた勢いのまま俺の服に手をかける。女の子の香りがふわっと広がる。いい匂いだと思ったのも束の間、慌てすぎて服を脱がし始めている。いやん。痴女ではなく純粋な心配だと思いたい。
「だ、大丈夫だ。ちょっと熱かったけどそんなにひどくないさ」
実際、火傷の跡は見当たらなかった。それよりも狼とやり合ったときの擦り傷や引っかき傷が目立った。
「あれ……? 変ね……」
ミラは少し冷静さを取り戻したようで、おかしいなぁとつぶやきながらヤマトから離れた。
そしてそのままふらっとよろけたと思ったら座り込んでしまった。
「お、おい?」
「気にしないで、これが私の代償ってわけ」
よく見るとミラの額には大量の汗が浮き出ている。
「大丈夫ですか?まったく無茶をなさらないでください」
フィーナが剣を腰に戻しながら近づいてきた。
「緊急事態だったから仕方ないでしょ」
「まったく……」
たしなめるようなフィーナだが、どちらかと言えば心配しているようだ。髪の色は全然違うが二人が仲の良い姉妹のように見えた。
「今のでわかったと思うけど私は矢を炎で纏うことができるの。正確に言えば矢でなくとも短刀に纏うことも可能よ。ただ、あまり大きいものはコントロールができないし代償も大きくなるわ」
そこまで言って息苦しそうに咳き込んだ。
「しかしこれがその代償です」
フィーナが説明を変わるように口を開いた。
「能力を使えば自分自身の体温もあがってしまう。連続で使えば自分の身を滅ぼしかねません」
ゆっくりと呼吸を整えるフィーナ。一回の使用でこの代償か。諸刃の剣だな。
でもミラは出会ったばかりなのに自らを省みずに力を使って助けてくれた。
「すまなかった……いや、ありがとう。おかげで死なずに済んだ」
この恩は何とか返したい。
「べ、別に、一緒に行くといったからには見捨てるわけにはいかなかっただけよ」
まっすぐにお礼を言われたからか、少し照れくさそうにミラが胸を張った。ツンデレのお手本のような台詞だったが恩人を茶化すわけにいかない。
「そ、それに、ちょっと風邪で熱が出たようなものなんだから」
そういってミラは立ち上がるが、それは強がりだったのかすぐにふらついてまた倒れそうになった。
「危ないな」
フィーナより近くにいたので咄嗟にミラの肩を支えることができた。支えた手からも彼女の熱さが伝わってきた。
俺のせいで……。何とかしてやれないか。
そう思いながら、病人にするようにミラの額に手を当てた。当ててしまった。いや、ついつい。無意識だった。一般的にいきなり女性の額を触るのはまずいかもしれない。しかし、苦しそうなミラを支えた流れで雰囲気に流されてしまった俺を誰が責めることができるだろうか。以下反語。ミラも極めて自然な成り行きに抵抗する間はなかった。むしろ、映画のワンシーンのような流れと自分がその当事者であることに頬を赤らめるまであった。
しかし、二人の反応は想像とは違った。
自分の手がミラの額に触れた瞬間、手元に光が灯った。
!?
驚きと同時にミラの熱が自分の中に入ってくるような感覚を覚えた。
ミラは手を当てられて頬を赤くしていたようだが、すぐに目を見開いた。
「熱が……ひいてる?」
ミラは支えなく自分の足でしっかりと立っていた。
「今のは……?」
傍から見ていたフィーナも驚きに目を見開いていた。
ドサッ!
次の瞬間、激しい脱力感とともに地面に倒れた。
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