縁の下の能力持ち英雄譚

瀬戸星都

文字の大きさ
14 / 51

0013.単独行動終了

しおりを挟む

「ん? なんだお前は」

物騒な声の持ち主は自分よりはるかに体格がいい。むき出しの二の腕は筋肉で膨れ上がりいくつか見える古傷がベテランの冒険者のように見受けられる。問題はこの少年(?)がなぜ追われているかということと、自分を挟んで対峙しているということである。

「助けて!お兄ちゃん」

何言ってくれちゃってんのだろうか。この少年(?)は。

「ん? 兄貴だと?」

「いや、通りすがりの無関係な旅人なんだが……」

物騒な声の持ち主はこちらを睨みつけてきた。

「ふん、どっちでも構いやしねえ」

かまってちゃんではないけれどここは構って欲しい。なぜなら俺の身が危険だからだ。だがここで粘って機嫌を損ねるのもうまくないし、聞く耳を持ちそうにない。とりあえず話をごまかすことにしよう。

「状況がつかめないんだが、何をやったんだコイツ」

「そいつが俺の剣を盗みやがったんだ」

「それはよくないな。怒るのも当然だ」

大げさに頷いてみる。こういうのは相手を否定しないのが大事である。

「ほら、ちゃんと出して謝ろうな?」

できるだけ優しく諭すように少年(?)に話しかける。

「ふざけるなっ! あれは元々ウチにあったもんだっ! お前らが先に持っていったんだろうが!」

なるほど。どうやら無闇に盗んだようではないようだ。

「話が見えないんだが……」

次は、物騒な声の持ち主の方を見やる。なんで仲介役みたいになってるんだろう。

「ハッ! 剣なんて使ってなんぼだろうが。強いものに使われる方が剣も喜ぶってもんだ。俺らは魔物と戦ってやってるんだから一般人が協力するのは当然だろうが」

何となくどちらが悪者かはわかってきた気がする。しかし、あくまで元の世界の倫理観での話だ。

「そいつの名はベルグ。ギルドメンバーだ」

少年(?)が、その物騒な声の主――ベルグに聴こえないぐらいの小声で話しかけてきた。助けてお兄ちゃんなんて頼んできた声とは別物だ。

「一般人がギルドメンバーに協力するのは普通なのか?」

ベルグに背を向ける形で少年(?)の方に振り返って小声で返す。ベルグからは諭しているように見えているはずだ。

「あん?お前はどこから来た旅人だ? ギルドの悪行が蔓延ってんのはどこの国も同じじゃないのか? あいつらは魔物と戦っているって大義名分で一般人から何でも巻き上げるし、どこでも好き勝手やり放題だ」

ギリッと歯を食いしばった。

少年(?)の雰囲気が変わり過ぎているのはおいといて、状況はようやく掴めてきた。さっき露店の店主がギルドに行くといって苦い顔をしたのはこれが理由か。


この世界のギルドは腐っている。


人並な正義感しかないが、どちらの味方をしたいかと言えばずいぶんとやさぐれている少年(?)の方だ。

「その剣はそんなに大切なものだったのか」

あの大男から盗むほどだ。

「そうだ」

少年(?)は頷いた。 

ふぅ。仕方ない。

「俺が合図したら走るぞ、道がわからないから先行してくれ」

少年(?)は少し目を見開いたが、返事を待たずにベルグの方へ向き直る。

「ええと、ギルドの方ですよね」

少年(?)との話が一段落したように見せかける。我ながら白々しい。

「すみません。どうやら盗んだのはその剣が大切なものだったからのようです。そこでどうでしょう。幾らかお金を支払いますから、その剣を譲っていただけないでしょうか」

そう言ってお金の入った袋を持ち上げる。

ベルグが一瞬ニヤリと笑みを浮かべる。わかりやすくて助かる。

「ふん。なかなか話はわかるようだが、なぜ通りすがりのお前がそこまで肩入れする」

どうやら言葉とは違って通りすがりと認識されていたようだ。嬉しくないことに思ったよりも冷静かもしれない。

特に回答せずにいたら、なぜかベルグが少年(?)の方を見て勝手に勘違いをはじめた。

「そうか。もの好きだな」

なんで納得された?

「とりあえず、二千ゼムだ」

ベルグが金を要求してきた。

……足りん。 まあいいか。

「それでは、これで……」

そう言いながら袋に手を入れながらベルグに近づく。

手渡せるほど近づいたとき、思いっきり袋の中身を真上に放り投げた。

「行けっ!」

合図とともに少年(?)と駆け出す。ちゃんと反応してくれたようだ。

辺りに硬貨が散らばり、紙幣はヒラヒラと宙を舞う。

ベルグは一瞬迷った。金か誇りか。

迷った末に、すぐに捕まえてから金を拾えばいいと思ったのか追いかけようしてきた。

しかし、最初に踏み出す一歩を見逃さなかった。

「くっ!」

ベルグの踏み出した脚を動かした。あぁ、頭痛い。

「なっ!」

ベルグは態勢を崩してその場で転がった。

よし、これで時間を稼げる。お金があるからそう離れたくないはずだ。

少年(?)の後を追ってその場を離脱した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

処理中です...