縁の下の能力持ち英雄譚

瀬戸星都

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0026.これまでとこれから

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 無事に母親からの理解を得られたリッカとともにリッカの部屋に訪れていた。

「ほら、いい子にしてたか?」

 そう言ってチビ狼を撫でるリッカ。

 これからは本格的にリッカと二人で行動していくことになった。今後のことも含めてお互い話し合っておくべきだな。

「もう一度聞くが、決意は固いんだな?」

「もちろん」

「わかった。もう確認はしない。旅は自由だ。別にすぐにこの街に戻ってこようが構わないし無駄な見栄を張る必要はない。変に縛られずに思うように生きる。そんな旅をしていくつもりだ」

 リッカが頷く。異論はないようだ。

「これから一緒なんだ。あたしも聞きたいことがある。能力のこと、王女のこと、狼のこと、そしてヤマト自身のこと」

「そうだな、何から話せばいいか……」

 ようやく落ち着いて整理できそうだ。ここまでイベント続きだったからな。黒狼の件はまだ解決していないが少なくとも今日夜襲にくることはないだろう。

 一息ついた。

 さて、そもそもなぜこの世界にやってきたかを知りたい。そしてどうやったら元の世界に戻れるのか。その二つが旅の大きな目的ともいえる。考えようによってはこのファンタジーな世界のほうが楽しいかもしれないが、家族や友人に二度と会えないのもちょっと心の準備が欲しいところだ。とりあえずリッカには掻い摘んで説明することにした。

「俺は気づいたらある村にいたんだ。前後の記憶を失って、な」

「前後の記憶を失って?」

「ああそうだ。理由はわからない。もしかしたら誰かの能力で転移させられてその能力の代償で記憶を失ったのかもしれないと思っているが、結局予想の域は超えない。実はヤマトって名前も偽名だ」
 
「なっ……!」

 流石のリッカも驚きを隠せなかったようだ。口を開け大きく目を見開いた。

「……ヤマトに関してはもう何があっても驚かないと思っていたが、まさか名前すら不明だなんて」

「ちなみにその村で出会ったのがこいつさ」

 そう言ってチビ狼の頭を撫でる。

「その村は廃村になっていて誰もいなかった。食料もなかったから街を出て森へと進んでいったんだ。深入りするつもりはなかったんだが成り行きで進んでいくと森のなかの神殿に辿り着いたんだ。そこで出会ったのがミラとフィーナだった。それで二人にこの街まで案内してもらったというわけさ」

「そこで王女と出会ったんだな。しばらく旅を共にしたわけか」

「そのときはまだ王女だなんて知らなかったからな。その名残で今でも不敬な態度なんだ。この街に着いて二人とは別行動することになったんだが、別れ際にお金を貸してくれたんだ。しばらくの生活費に、ってな。それがリッカに使ったお金というわけだ。借り物だから、返すまではこの街から出れない。俺はミラに勝手にいなくならないように首輪をつけられたようなものなのかな、って思っている」

「それはヤマトに利用価値があるってことか?」

「そうだ。既に知られていることらしいがミラの能力の代償は体内にも熱を溜めてしまうことだ。俺の調和の力はその代償を緩和できる。正確に言えば俺に流れ込んでくると言ったほうがいいかもしれない。もっとも、ミラには調和の力とは言っていないから本人は熱を下げる能力だと思っているかもしれない」

「能力を隠しているんだな」

「初対面で全てを明かすほど愚かではないさ。念動力についてもミラ達には言っていない。能力のことについてほとんど知らなかったのもあるけどな。リッカには両方教えたことは信頼の証だと思って欲しい」

「能力持ちか……やっぱり色んな種類があるんだな」

「あぁ。リッカの求めるような能力もあるかもしれない」

 回復系、医療系の能力。間違いなく重宝されそうだが代償も大きそうだ。能力を持っていても隠している可能性はある。

「これからどうするんだ?」

「直近はあの黒狼をどうにかする必要があるだろう。リッカもこの状況で母親を置いて旅にいくのは気がかりだろ?」

 リッカもちょっと反抗期なだけで母親が嫌いなわけではないはずだ。

「わざわざご丁寧にチビ狼まで残していったんだ。あの言葉を発した狼に賭けてみよう。明日森に入る」

「賛成。現状これと言ってあの黒狼に対策できることはないし、旅の予行演習として森に入るのはちょうど良いと思う」

 リッカに頷いた。次のことが決まったと思ったら急に眠気が襲ってきた。思えば慣れない戦闘も含めて激動の一日だった。今さら信じてもらえないかもしれないがどちらかと言えば元の世界ではインドアなほうだった。この世界にきて数日だが少しは自分が変わったかもしれない。人間、どこでも適応してしまうもんだな。

 その後、二言、三言とリッカと会話したような気はするが内容は覚えていない。リッカの部屋で泥のように眠りについていた。
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