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1.恋心は天邪鬼
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「あ、あのぉ」
二人は一斉にこちらを振り向く。いや、天邪鬼とやらを人に換算していいのかは疑問だけど。
「なんだよ」
イケメンは眉間に更に深くシワを刻み、不機嫌そうな口調で言った。
「あの、なんていうか。よくわからないんだけど、その……天邪鬼? さんも反省してるみたいだし、その、四天王? さんに言うのは見逃してあげてもいいんじゃないかなぁ……なんて」
「は?」
「おおお!! なんて優しいお嬢ちゃんなんだ!! オイラマジ超感動!!」
天邪鬼が歓喜の声を上げると同時に、イケメンが呆れたように溜息をつく。
「……宮下紫。お前はコイツに取り憑かれていたせいで今まで思うように喋る事が出来ず、あんなに悩んでいたんだぞ?」
「えっ!?」
ばっと天邪鬼を見ると、奴は舌をチロリと横に出して、テヘペロと言わんばかりにウィンクをしてきた。いや、あんたがやっても全然可愛くないからねそれ。つーかそれいつの時代よ。
「コイツは〝天邪鬼〟と言ってイタズラ好きの小鬼なんだ。人を困らせるのが生きがいの傍迷惑な妖怪だ」
「……妖……怪?」
「捻くれた性格で、取り憑かれた者は自分の思ったこととは真逆の事を言ってしまうようになる。特技は物真似で、取り憑いた奴の声を真似してからかったりするしょうもない奴だ。まぁ雑魚妖怪だからたいしたことはないけど。コイツが離れた今、お前は普通に喋られるだろ?」
ハッとして口元に手を当てる。……言われてみれば確かにそうだ。誰かに操られていたような変な感覚もなくなってるし、思ったことを思ったまま、素直に口に出来ている。
「雑魚妖怪とはいえ、取り憑かれた側はたまったもんじゃない。あっちの世界でもよく悪戯してはお仕置きされてたよな、お前」
天邪鬼の肩がビクリと上がる。四天王さんとやらがよっぽど怖いのだろう。
「いや! マジで! 今回見逃してくれればもう二度と悪さはしない! 協定も守る! 約束する! だから頼む! 四天王には言わないでくれ!」
「そんな嘘が通用するとでも? どうせまたすぐ破るに決まってる」
「いやいやいやマジで! マジで約束するからさ!」
「無理だな。お前は強制送還されたあと四天王からキツイ罰を受ける。それが規則を破ったモノの運命だ」
「そ、そんなぁ~!!」
がっくりと項垂れた天邪鬼が、今度は私に向かって涙ながらに訴え始めた。
「なぁ、お嬢ちゃん! 迷惑かけてごめんよ! ちょっとしたイタズラのつもりだったんだ……。オイラ友達もいなくて、寂しくて……誰かに構って欲しかっただけなんだよ。本当にごめん。でも、オイラ心を入れ替えるからさ! だから頼むよ! お嬢ちゃ~ん!!」
確かに私はこの天邪鬼のせいで苦しめられた。口を開けば暴言ばっかでみんなを傷付けちゃったし、その結果ぼっちになっちゃったし。……でも。眉をハの字に下げ、涙をいっぱいに溜めた大きな瞳で体を震わせている姿には思わず同情してしまう。
「あ、あの……。天邪鬼も反省してるみたいだし、今回だけ見逃してあげたら?」
「は?」
私の発言に、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。しかし、イケメンはどんな顔をしてもイケメンだ。ずるい。
「……お前、それ本気で言ってるのか?」
「う、うん。罰とか、痛いのは可哀想だし」
「あれだけ困って悩んでたのに?」
「でも、もうしないって言ってるし」
「そんな約束すぐ破るに決まってるだろ。またお前に取り憑くかもしれないんだぞ?」
「でも、ちゃんと守るかもしれないよ?」
「さっすが心優しいお嬢ちゃん! よっ! 女神様!!」
「お前は黙ってろ」
「ヒィッ! すみません!」
イケメンが鋭い視線を向けると、天邪鬼は震え上がってその口を閉じた。彼はもう一度私に質問する。
「……本当にいいのか? コイツを見逃すなんて」
「うん、いいよ。誰にだって間違いはあるし。反省してくれてるなら、それで」
彼は顎に手を当てて暫く考え込むと、不服そうに顔を顰めながら言った。
「……取り憑かれてた本人がそう言うなら……仕方ない」
はぁ、と大きな溜め息をついて天邪鬼を睨みつける。
二人は一斉にこちらを振り向く。いや、天邪鬼とやらを人に換算していいのかは疑問だけど。
「なんだよ」
イケメンは眉間に更に深くシワを刻み、不機嫌そうな口調で言った。
「あの、なんていうか。よくわからないんだけど、その……天邪鬼? さんも反省してるみたいだし、その、四天王? さんに言うのは見逃してあげてもいいんじゃないかなぁ……なんて」
「は?」
「おおお!! なんて優しいお嬢ちゃんなんだ!! オイラマジ超感動!!」
天邪鬼が歓喜の声を上げると同時に、イケメンが呆れたように溜息をつく。
「……宮下紫。お前はコイツに取り憑かれていたせいで今まで思うように喋る事が出来ず、あんなに悩んでいたんだぞ?」
「えっ!?」
ばっと天邪鬼を見ると、奴は舌をチロリと横に出して、テヘペロと言わんばかりにウィンクをしてきた。いや、あんたがやっても全然可愛くないからねそれ。つーかそれいつの時代よ。
「コイツは〝天邪鬼〟と言ってイタズラ好きの小鬼なんだ。人を困らせるのが生きがいの傍迷惑な妖怪だ」
「……妖……怪?」
「捻くれた性格で、取り憑かれた者は自分の思ったこととは真逆の事を言ってしまうようになる。特技は物真似で、取り憑いた奴の声を真似してからかったりするしょうもない奴だ。まぁ雑魚妖怪だからたいしたことはないけど。コイツが離れた今、お前は普通に喋られるだろ?」
ハッとして口元に手を当てる。……言われてみれば確かにそうだ。誰かに操られていたような変な感覚もなくなってるし、思ったことを思ったまま、素直に口に出来ている。
「雑魚妖怪とはいえ、取り憑かれた側はたまったもんじゃない。あっちの世界でもよく悪戯してはお仕置きされてたよな、お前」
天邪鬼の肩がビクリと上がる。四天王さんとやらがよっぽど怖いのだろう。
「いや! マジで! 今回見逃してくれればもう二度と悪さはしない! 協定も守る! 約束する! だから頼む! 四天王には言わないでくれ!」
「そんな嘘が通用するとでも? どうせまたすぐ破るに決まってる」
「いやいやいやマジで! マジで約束するからさ!」
「無理だな。お前は強制送還されたあと四天王からキツイ罰を受ける。それが規則を破ったモノの運命だ」
「そ、そんなぁ~!!」
がっくりと項垂れた天邪鬼が、今度は私に向かって涙ながらに訴え始めた。
「なぁ、お嬢ちゃん! 迷惑かけてごめんよ! ちょっとしたイタズラのつもりだったんだ……。オイラ友達もいなくて、寂しくて……誰かに構って欲しかっただけなんだよ。本当にごめん。でも、オイラ心を入れ替えるからさ! だから頼むよ! お嬢ちゃ~ん!!」
確かに私はこの天邪鬼のせいで苦しめられた。口を開けば暴言ばっかでみんなを傷付けちゃったし、その結果ぼっちになっちゃったし。……でも。眉をハの字に下げ、涙をいっぱいに溜めた大きな瞳で体を震わせている姿には思わず同情してしまう。
「あ、あの……。天邪鬼も反省してるみたいだし、今回だけ見逃してあげたら?」
「は?」
私の発言に、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。しかし、イケメンはどんな顔をしてもイケメンだ。ずるい。
「……お前、それ本気で言ってるのか?」
「う、うん。罰とか、痛いのは可哀想だし」
「あれだけ困って悩んでたのに?」
「でも、もうしないって言ってるし」
「そんな約束すぐ破るに決まってるだろ。またお前に取り憑くかもしれないんだぞ?」
「でも、ちゃんと守るかもしれないよ?」
「さっすが心優しいお嬢ちゃん! よっ! 女神様!!」
「お前は黙ってろ」
「ヒィッ! すみません!」
イケメンが鋭い視線を向けると、天邪鬼は震え上がってその口を閉じた。彼はもう一度私に質問する。
「……本当にいいのか? コイツを見逃すなんて」
「うん、いいよ。誰にだって間違いはあるし。反省してくれてるなら、それで」
彼は顎に手を当てて暫く考え込むと、不服そうに顔を顰めながら言った。
「……取り憑かれてた本人がそう言うなら……仕方ない」
はぁ、と大きな溜め息をついて天邪鬼を睨みつける。
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