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怪しい背中にご用心1

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 私は誰かに呪われてるんじゃないだろうか。

 大きな大きな溜息をつき、重い足を引きずるようにして歩き出す。まさに、トボトボという効果音がぴったりの悲壮感たっぷりな歩き方だった。


「悪いね笹山ささやまくん。なんせうちも不景気で……。でもほら、君ならすぐ次のとこ見つかるだろうから。頑張って」


 つい先ほど受けた戦力外通告、もといクビ通告が頭を巡る。ていうかクビってひどくない? なに? すぐ次のとこ見つかるだろうって。はぁ? そんな簡単に仕事見つかってたら世の中からニートは消えてるっつーの! 契約社員だからってナメんなよ!! ……いや、そんなことよりも。明日からどうやって生活していこう。がっくりと項垂れた状態のまま「はぁぁぁぁぁ」と深い深い溜息をついた。

 ふと顔を上げると、いつも通っているはずのコンビニが見当たらないことに気が付いた。変わりに見えるのはシャッターが閉じられた寂しげな店と、どこに続いているのかわからない石畳の階段。人通りはまったくと言っていいほど無く、街灯も有るには有るが光りが弱くて頼りない。今にも消えてしまいそうなほどだ。……ここ、どこだろう。私は重い足をピタリと止める。とりあえずこの暗闇をなんとかしようと、スマホを取り出してライトを点灯させた。

「ひっ!?」

 思わず声が出てしまったのは、店の軒下で小さく蹲っている人影を見付けたからだ。ちょ、まっ、えっ、ええええー!? ヤバい、心臓飛び出るかと思った。だって誰もいないと思ってたんだもん! バクバクと煩い心臓を少しばかり落ち着かせると、私は蹲っている人影を見据える。
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