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「だーかーらー! オレの顔は俳優の山崎倫也みたいなイケメンにしてくれって言ってんじゃん!!」
「ダメよぉ。アサギくんから許可出てないもの」
「そこは内緒でちゃちゃっと作っちゃってよ。ノアちゃんなら簡単でしょ?」
「ん~……そうだけどぉ」
「お願いだよノアちゃ~ん。いや、ノア様!」
「残念だけど却下ね。それにアタシ、山崎倫也より吉沢タケルの方が好みなの」
「なんだよそれー!」
何やら辺りが騒がしい。
ぼんやりと映る視界には、見慣れぬ木目の天井。背中にはちょっと硬めのソファー。身体に掛けてあるのはふわふわの茶色いブランケット。……ここはどこ? ていうかいつの間に寝てたんだろう、私。今日は会社をクビになって途方に暮れながら帰路について、それで……それで……あれ? 私……どうしたんだっけ? 頭が上手く回らない。
「あら、気が付いたぁ?」
突然目の前に現れた知らない顔のドアップ。
「ひっ!?」
「なぁに? 人の顔見て悲鳴あげるなんてカンジわる~い。せっかく介抱してあげたのにさぁ~」
私の側から離れ、拗ねたように唇を尖らせているのは銀色の長髪を後ろで束ねた綺麗な女の……いや、男の人かな? 口元のホクロが色っぽい。華奢で陶器のような肌は女性らしいけど、口調はなんだかオネェっぽいし。……とにかく、中性的な顔立ちをした美人さんだった。……ていうか誰?
「ま、いいわ。アサギくーん! マヌケちゃんが気付いたみたいよぉ」
美人さんは奥に向かって大きな声を出した。……ん? ちょっと待って、マヌケちゃんって私の事じゃないよね? いやいや、とりあえずそれは今置いといて。
「あの、つかぬことをお尋ねしますが……ここは……?」
「何よ覚えてないの? アンタ道端で倒れたのよ。この子ってば血相変えて駆け込んできたもんだから何事かと思ってびっくりしたわぁ。ほら、アンタも謝りなさい」
「いやーめんごめんご! ちょっと脅かすつもりが思いのほか効果抜群で。全然起きないからさすがにちょっと焦ったよねー」
ひょこっと出て来た人影を目にした途端、先ほどまでの記憶がフラッシュバックする。
「あっ、なっ、さっ、か……!」
私は言葉にならない言葉を発しながらがばっと起き上がった。が、いきなり動いたせいかくらりとめまいがしてすぐさまソファーに逆戻りした。
「ちょっとアンタ大丈夫? いきなり起き上がるなんてダメよぉ」
「あっはっは! さっきからお姉さん良い感じのリアクションするねぇ。芸人になれるよ!」
「か、か、かお、顔が!! あの人! さっき顔が無くて! たまごで! つるんて!」
「分かったからちょっと落ち着きなさいよ。はい深呼吸して~、吸って~、吐いて~……はい、アイツの顔よぉく見て。目も鼻も口もちゃあんとあるでしょう?」
言われた通り深呼吸をし、改めて相手の顔をしっかり見てみる。切れ長の目、少し低めの鼻、ニヤリと笑みを浮かべる唇。……ほんとだ。ちゃんと顔がある。え、じゃあさっき見たのは……私の幻覚? クビのショックで見た幻覚なの?
「ほら、ゆっくり起き上がって。これでも飲みなさい」
美人さんは呆れながらコップを渡してくれた。
「……あ、ありがとうございます」
私はコップに口を付けると「ねぇ、お姉さん」と学ランの少年に呼ばれて顔を上げる。少年は何故か両手で顔を覆っていた。
「だーかーらー! オレの顔は俳優の山崎倫也みたいなイケメンにしてくれって言ってんじゃん!!」
「ダメよぉ。アサギくんから許可出てないもの」
「そこは内緒でちゃちゃっと作っちゃってよ。ノアちゃんなら簡単でしょ?」
「ん~……そうだけどぉ」
「お願いだよノアちゃ~ん。いや、ノア様!」
「残念だけど却下ね。それにアタシ、山崎倫也より吉沢タケルの方が好みなの」
「なんだよそれー!」
何やら辺りが騒がしい。
ぼんやりと映る視界には、見慣れぬ木目の天井。背中にはちょっと硬めのソファー。身体に掛けてあるのはふわふわの茶色いブランケット。……ここはどこ? ていうかいつの間に寝てたんだろう、私。今日は会社をクビになって途方に暮れながら帰路について、それで……それで……あれ? 私……どうしたんだっけ? 頭が上手く回らない。
「あら、気が付いたぁ?」
突然目の前に現れた知らない顔のドアップ。
「ひっ!?」
「なぁに? 人の顔見て悲鳴あげるなんてカンジわる~い。せっかく介抱してあげたのにさぁ~」
私の側から離れ、拗ねたように唇を尖らせているのは銀色の長髪を後ろで束ねた綺麗な女の……いや、男の人かな? 口元のホクロが色っぽい。華奢で陶器のような肌は女性らしいけど、口調はなんだかオネェっぽいし。……とにかく、中性的な顔立ちをした美人さんだった。……ていうか誰?
「ま、いいわ。アサギくーん! マヌケちゃんが気付いたみたいよぉ」
美人さんは奥に向かって大きな声を出した。……ん? ちょっと待って、マヌケちゃんって私の事じゃないよね? いやいや、とりあえずそれは今置いといて。
「あの、つかぬことをお尋ねしますが……ここは……?」
「何よ覚えてないの? アンタ道端で倒れたのよ。この子ってば血相変えて駆け込んできたもんだから何事かと思ってびっくりしたわぁ。ほら、アンタも謝りなさい」
「いやーめんごめんご! ちょっと脅かすつもりが思いのほか効果抜群で。全然起きないからさすがにちょっと焦ったよねー」
ひょこっと出て来た人影を目にした途端、先ほどまでの記憶がフラッシュバックする。
「あっ、なっ、さっ、か……!」
私は言葉にならない言葉を発しながらがばっと起き上がった。が、いきなり動いたせいかくらりとめまいがしてすぐさまソファーに逆戻りした。
「ちょっとアンタ大丈夫? いきなり起き上がるなんてダメよぉ」
「あっはっは! さっきからお姉さん良い感じのリアクションするねぇ。芸人になれるよ!」
「か、か、かお、顔が!! あの人! さっき顔が無くて! たまごで! つるんて!」
「分かったからちょっと落ち着きなさいよ。はい深呼吸して~、吸って~、吐いて~……はい、アイツの顔よぉく見て。目も鼻も口もちゃあんとあるでしょう?」
言われた通り深呼吸をし、改めて相手の顔をしっかり見てみる。切れ長の目、少し低めの鼻、ニヤリと笑みを浮かべる唇。……ほんとだ。ちゃんと顔がある。え、じゃあさっき見たのは……私の幻覚? クビのショックで見た幻覚なの?
「ほら、ゆっくり起き上がって。これでも飲みなさい」
美人さんは呆れながらコップを渡してくれた。
「……あ、ありがとうございます」
私はコップに口を付けると「ねぇ、お姉さん」と学ランの少年に呼ばれて顔を上げる。少年は何故か両手で顔を覆っていた。
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