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『続いてのニュースです。昨日午前二時頃、神楽山の山中で不用品回収業者の男三人が逮捕されました。三人は回収した不用品を神楽山に不法投棄した疑い。警察が匿名の通報で現場に向かった所、大量に積もったゴミの中に埋もれている三人を発見。三人は口々に〝女が、真っ赤な炎に包まれた女が追いかけてくる!〟〝ごめんなさいごめんなさい。謝るから火達磨は勘弁して下さい!〟〝ゴミの山にハマって抜け出せなくなったのは幽霊女のせいだ! 呪いだ! 祟りだ!〟などと錯乱しており、薬物による幻覚症状の疑いもあるとして捜査を進めています』
非現実的な時間を過ごしたあの日から、二日。
テレビから流れてきたニュースに、危うく飲んでいた珈琲を漫画のように噴き出してしまいそうになった。
これって……もしかしなくても河太郎さんの件だよね? 無事に犯人が捕まったのは良かったけど……ノアさんのかけた呪い何!? 怖すぎじゃない!? なに火に包まれた女って!! 夜中の山でそんなのに追いかけられたら間違いなく泣き叫んじゃうよ。トラウマすぎて無理なんだけど。
次の事件を淡々と語るアナウンサーに別れを告げるようにテレビを消すと、私はさっさと部屋を出た。
行き先は、例の相談屋である。
*
『烏丸相談屋』という表札の下にあるインターホンを押すと、「はぁ~い。どなた?」というノアさんの明るい声が聞こえた。
「笹山ですけど。お給料の方受け取りに来ました」
「ああ、アンタね。そのまま入ってきていいわよ」
相手が私だと分かった途端、声のトーンがガラリと変わり、インターホンが乱暴に切られた。うん、この扱いにももうすっかり慣れた。前回来た時と同じ和室に案内される。
「アサギくんはすぐ来るからここで待ってなさい」
ことり。ノアさんがお茶を置きながら言った。形ばかりに出されたお茶だったが、縁起の良いことに茶柱がたっている。
「ていうかアンタ、今朝のニュース見たぁ?」
「……見ました」
私の答えに、ノアさんは楽しそうに語り出す。
「分かってると思うけどあれ、アタシたちがやった池の話よ。やっぱりアイツら廃棄に来たみたい。毎晩ユキくんに見張らせといて正解だったわ~。そのせいで今日は死んだように寝てるけど」
面無くんの苦労が手に取るように分かる。会えないのは寂しいけれど、彼にはゆっくり休んでもらいたい。
「ふふっ、アイツらのザマったらホントひどかったわよ。大の大人が泣き叫んで逃げまどうの。ま、これに懲りたら不法投棄なんて二度とする気が起きないでしょうね」
「ニュースでチラッと聞きましたけど、あの時どんな呪いを掛けたんですか?」
「ん~? あの山で不法投棄しようとすると、全身炎に包まれた女に追いかけ回されるっていう呪いよ。結界が張ってあるから山の外には逃げられないし、捕まえるには持ってこいよね。しかもね、池に近付くなとか不法投棄やめろってちゃんと注意もしてあげたのよ? アタシってば優しい~」
それは……そこら辺のホラー映画より怖い体験じゃないか。
「そうそう。ユキくんに半狂乱になったアイツらの動画撮らせてたんだけど、アンタも見る?」
「……遠慮しておきます」
「いいからほら、見なさいよ」
ノアさんは動画の再生ボタンを押す。ちょ、聞いた意味なくない? 強制的に見せるなら質問する意味なくない? そう思いながらも、仕方ないので画面を見つめる。
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