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20.夏の光の中で、ふたりの時間が始まる
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太陽は真上に近い位置でぎらぎらと輝き、アスファルトからは陽炎のような熱気が立ち上っていた。
遠くでは蝉の声が途切れることなく響き、まるで夏そのものが合唱しているかのようだ。
耳にまとわりつくほどの賑やかさなのに、不思議と嫌ではない。
「ああ、夏が来たんだ」と身体の奥で実感する。
風は時折吹くものの、生ぬるくて涼しさには程遠い。
それでも木陰に入ると、ほんの少しだけ体感が和らぎ、葉の隙間を抜ける微かな風が救いのように頬を撫でていく。
家々の庭先ではホースの水が蒔かれ、地面に落ちる水音が涼しげに響く。
時折、子どもたちの歓声が混ざり、夏の午後を明るく彩っていた。
冷えた麦茶のグラスを手に取れば、表面を伝う水滴が湿気の高さを物語る。
7月の昼下がりは、力強く、そしてどこかのんびりとした夏の幕開けだった。
淳平は待ち合わせ場所に、約束の時間よりかなり早く着いてしまっていた。
時計を確認して、小さく息をつく。
(こんなに早く来る必要なかったな……)
そう思いながらも、心は落ち着かず、そわそわと落ち着きがない。
周囲を見渡しては、流伽の姿がないことに胸がざわつく。
「あっちで座ったほうがいいかな……
「いや、ここにいないと気づかれないかも」
頭の中で小さな葛藤が続く。
時間を潰そうとスマホを取り出すが、画面を見る気にもなれない。
気づけば時計ばかり見てしまい、そのたびに胸が高鳴る。
(でも……早く来てよかったかも)
そんな自分に苦笑しながら、緩んだ頬を慌てて引き締めた。
「ごめん、淳平君、待った?」
その声が聞こえた瞬間、淳平は反射的に振り返った。
真夏の日差しの下、流伽が立っていた。
白のノースリーブワンピース。
軽やかな生地が風を受けてふわりと揺れ、日差しに照らされた素肌が柔らかく輝く。
ほんのり日焼けした腕や肩が、夏らしい健康的な魅力を放っていた。
足元には編み込みストラップのサンダル。
歩くたびにカツカツと軽快な音を響かせ、その足取りは夏の午後を楽しむように弾んでいる。
肩には涼しげなキャンバス地のバッグ。
つば広のストローハットが日差しを柔らかく遮り、影の中の瞳がいっそう印象的に見えた。
耳元では小さなシェルのピアスが揺れ、光を受けてきらりと輝く。
まるで海辺の風をそのまま連れてきたような、爽やかな気配をまとっていた。
全体から漂うのは、
夏を楽しむ無邪気さと
少しだけ背伸びした大人びた雰囲気が絶妙に混ざり合った姿。
その瞬間、淳平は息を呑んだ。
(……きれいだ)
言葉にできないほど、胸が熱くなる。
流伽が歩いてくる姿を見た瞬間、淳平は思わず息を呑んだ。
白いノースリーブワンピースが風を受けてふわりと揺れ、そのたびに夏の陽射しが彼女を包み込むように輝く。
ただの服装ではない。
そこにあるのは、無邪気さと大人びた雰囲気が絶妙に混ざり合った、流伽そのものの魅力だった。
足元のサンダルが軽やかに音を立て、まるで地面から少し浮いているかのような軽快さで歩いてくる。
帽子の影からのぞく笑顔に、時間が一瞬止まったように感じられた。
「へ、変かな?」
その問いかけに、淳平は一瞬言葉を失った。
心の中では(可愛い)(完璧すぎる)と叫んでいるのに、声にならない。
軽く息を吸い、なんとか笑顔を作って言葉を絞り出す。
「すごく似合ってるよ!
本当に夏らしくて、すごく素敵だね」
その言葉に、流伽の顔がぱっと明るくなる。
頬がほんのり赤く染まり、照れたように笑う。
「ほんと?」
その小さな声が、胸の奥にじんわり響く。
「ありがとう!」
嬉しさが隠しきれないように、軽く髪をかき上げる仕草。
その自然な動きが、さらに彼女を魅力的に見せていた。
映画館のある隣町へ向かうため、ふたりは切符を買い、プラットフォームへ続く階段を上がった。
「ねぇ、淳平君?」
前を歩く流伽を見上げた瞬間、ワンピースの裾からのぞく引き締まった太腿が目に入り、淳平は耳まで真っ赤になる。
慌てて視線をそらし、急いで彼女の隣まで駆け上がった。
「な、なに?」
「今日観る“ただすき”(ただ、好きだから)って、原作はコミックなんだよ」
「へぇ、そうなんだ。知らなかった」
「わたし、全巻持ってるんだ。淳平君のお姉さんも“ただすき”好きなのかな?」
確かに、姉は漫画好きだ。
小学生の頃、よく姉の部屋に入り浸っていた時、、本棚にはぎっしり漫画が並んでいた。
「ど、どうかな……漫画は好きみたいだけど」
「姉弟がいるって、うらやましい。わたし一人っ子だから」
「そんなによくないよ。僕のアイス勝手に食べるし、すぐ揶揄ってくるし……」
ふと思い出して、淳平は地区大会決勝に姉が来ていたことを話した。
「ほら、やっぱりすごく良いお姉さんじゃない」
「その時ね、白石さんを見て“めちゃくちゃ可愛い子”って言ってたよ」
その瞬間、流伽の顔が真っ赤になった。
視線をそらし、肩をすくめ、口元をきゅっと引き締める。
言葉を探しているその姿が、なんとも愛らしい。
静かな沈黙が流れる。
頬はほんのり赤く、息を呑むように口を開け閉めして、言葉が出てこない。
「そ、そんなことないよ……」
手で顔を隠すようにしながら答える仕草が、さらに可愛らしさを引き立てていた。
遠くから、電車の音がかすかに響き始める。
その音は次第に大きくなり、線路沿いに揺れる車両の影が近づいてくる。
足元が震えるほどの振動。
車輪の音が高まり、やがてガタンと音を立てて電車が滑らかに止まった。
その瞬間、冷たい風がプラットフォームを吹き抜けた。
夏の熱気の中で、その風はふたりの距離をほんの少しだけ近づけたように感じられた。
遠くでは蝉の声が途切れることなく響き、まるで夏そのものが合唱しているかのようだ。
耳にまとわりつくほどの賑やかさなのに、不思議と嫌ではない。
「ああ、夏が来たんだ」と身体の奥で実感する。
風は時折吹くものの、生ぬるくて涼しさには程遠い。
それでも木陰に入ると、ほんの少しだけ体感が和らぎ、葉の隙間を抜ける微かな風が救いのように頬を撫でていく。
家々の庭先ではホースの水が蒔かれ、地面に落ちる水音が涼しげに響く。
時折、子どもたちの歓声が混ざり、夏の午後を明るく彩っていた。
冷えた麦茶のグラスを手に取れば、表面を伝う水滴が湿気の高さを物語る。
7月の昼下がりは、力強く、そしてどこかのんびりとした夏の幕開けだった。
淳平は待ち合わせ場所に、約束の時間よりかなり早く着いてしまっていた。
時計を確認して、小さく息をつく。
(こんなに早く来る必要なかったな……)
そう思いながらも、心は落ち着かず、そわそわと落ち着きがない。
周囲を見渡しては、流伽の姿がないことに胸がざわつく。
「あっちで座ったほうがいいかな……
「いや、ここにいないと気づかれないかも」
頭の中で小さな葛藤が続く。
時間を潰そうとスマホを取り出すが、画面を見る気にもなれない。
気づけば時計ばかり見てしまい、そのたびに胸が高鳴る。
(でも……早く来てよかったかも)
そんな自分に苦笑しながら、緩んだ頬を慌てて引き締めた。
「ごめん、淳平君、待った?」
その声が聞こえた瞬間、淳平は反射的に振り返った。
真夏の日差しの下、流伽が立っていた。
白のノースリーブワンピース。
軽やかな生地が風を受けてふわりと揺れ、日差しに照らされた素肌が柔らかく輝く。
ほんのり日焼けした腕や肩が、夏らしい健康的な魅力を放っていた。
足元には編み込みストラップのサンダル。
歩くたびにカツカツと軽快な音を響かせ、その足取りは夏の午後を楽しむように弾んでいる。
肩には涼しげなキャンバス地のバッグ。
つば広のストローハットが日差しを柔らかく遮り、影の中の瞳がいっそう印象的に見えた。
耳元では小さなシェルのピアスが揺れ、光を受けてきらりと輝く。
まるで海辺の風をそのまま連れてきたような、爽やかな気配をまとっていた。
全体から漂うのは、
夏を楽しむ無邪気さと
少しだけ背伸びした大人びた雰囲気が絶妙に混ざり合った姿。
その瞬間、淳平は息を呑んだ。
(……きれいだ)
言葉にできないほど、胸が熱くなる。
流伽が歩いてくる姿を見た瞬間、淳平は思わず息を呑んだ。
白いノースリーブワンピースが風を受けてふわりと揺れ、そのたびに夏の陽射しが彼女を包み込むように輝く。
ただの服装ではない。
そこにあるのは、無邪気さと大人びた雰囲気が絶妙に混ざり合った、流伽そのものの魅力だった。
足元のサンダルが軽やかに音を立て、まるで地面から少し浮いているかのような軽快さで歩いてくる。
帽子の影からのぞく笑顔に、時間が一瞬止まったように感じられた。
「へ、変かな?」
その問いかけに、淳平は一瞬言葉を失った。
心の中では(可愛い)(完璧すぎる)と叫んでいるのに、声にならない。
軽く息を吸い、なんとか笑顔を作って言葉を絞り出す。
「すごく似合ってるよ!
本当に夏らしくて、すごく素敵だね」
その言葉に、流伽の顔がぱっと明るくなる。
頬がほんのり赤く染まり、照れたように笑う。
「ほんと?」
その小さな声が、胸の奥にじんわり響く。
「ありがとう!」
嬉しさが隠しきれないように、軽く髪をかき上げる仕草。
その自然な動きが、さらに彼女を魅力的に見せていた。
映画館のある隣町へ向かうため、ふたりは切符を買い、プラットフォームへ続く階段を上がった。
「ねぇ、淳平君?」
前を歩く流伽を見上げた瞬間、ワンピースの裾からのぞく引き締まった太腿が目に入り、淳平は耳まで真っ赤になる。
慌てて視線をそらし、急いで彼女の隣まで駆け上がった。
「な、なに?」
「今日観る“ただすき”(ただ、好きだから)って、原作はコミックなんだよ」
「へぇ、そうなんだ。知らなかった」
「わたし、全巻持ってるんだ。淳平君のお姉さんも“ただすき”好きなのかな?」
確かに、姉は漫画好きだ。
小学生の頃、よく姉の部屋に入り浸っていた時、、本棚にはぎっしり漫画が並んでいた。
「ど、どうかな……漫画は好きみたいだけど」
「姉弟がいるって、うらやましい。わたし一人っ子だから」
「そんなによくないよ。僕のアイス勝手に食べるし、すぐ揶揄ってくるし……」
ふと思い出して、淳平は地区大会決勝に姉が来ていたことを話した。
「ほら、やっぱりすごく良いお姉さんじゃない」
「その時ね、白石さんを見て“めちゃくちゃ可愛い子”って言ってたよ」
その瞬間、流伽の顔が真っ赤になった。
視線をそらし、肩をすくめ、口元をきゅっと引き締める。
言葉を探しているその姿が、なんとも愛らしい。
静かな沈黙が流れる。
頬はほんのり赤く、息を呑むように口を開け閉めして、言葉が出てこない。
「そ、そんなことないよ……」
手で顔を隠すようにしながら答える仕草が、さらに可愛らしさを引き立てていた。
遠くから、電車の音がかすかに響き始める。
その音は次第に大きくなり、線路沿いに揺れる車両の影が近づいてくる。
足元が震えるほどの振動。
車輪の音が高まり、やがてガタンと音を立てて電車が滑らかに止まった。
その瞬間、冷たい風がプラットフォームを吹き抜けた。
夏の熱気の中で、その風はふたりの距離をほんの少しだけ近づけたように感じられた。
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