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「ふぁ…」
毎朝屋上で僕は本を読む。
ただ1人で静かに。
微かに聞こえる音楽室からのピアノを聞きながら…なはずだった。
「あれ…?」
今日は何がおかしい。
いつも聞こえるピアノの音もないし、1人なはずの屋上に人がいる。
「え、待って待って待って。早まらないで!?」
そこにいた彼女は屋上のフェンスから体を乗り出していた。
「…誰?」
彼女はそう小さく呟く。
「山下陽です…君は?」
「私は、藍川…じゃなかった。中山美穂。」
「中山さん?お願いだからこっちに来て…!!」
「…。」
必死になって彼女を呼ぶとこちらに来てくれた。
「で?」
「え??」
そうだった。僕が呼んだんだった。
「いつも、ここにいるの?」
僕がてんやわんやしているのを見かねたのか彼女の方から話しかけてきてくれた。
「う、うん。本読んでるんだよ。」
「そっか。」
「…もしかしていつもピアノ弾いてた?」
「なんで知ってるの…?」
いつもは聞こえるピアノの音が聞こえないことと、誰もいないここに人がいたことから導き出した僕の答えはあっていたらしい。
「毎朝ここで聞いていたんだ。上手だよね。」
そう言ったあと彼女を見ると何故か彼女は瞳に涙を溜めていた。
慌てる僕に彼女は首を横に振って違うと繰返す。
「誰も私のピアノを聞いてくれないんだ。…いや、聞かせちゃいけないのかもしれない。だから久しぶりに褒められて嬉しかったの。」
少し落ち着いた彼女はそう言って涙を拭った。
その時彼女と僕は自己紹介をして初めて、僕は彼女が同級生で隣のクラスだと知った。
「ごめんね。本読む時間なくなっちゃったかな?」
「大丈夫。本はいつだって読めるから」
「そっか!またここに来てもいい?」
「もちろんだよ。」
こうして僕らは出会った。
毎朝屋上で僕は本を読む。
ただ1人で静かに。
微かに聞こえる音楽室からのピアノを聞きながら…なはずだった。
「あれ…?」
今日は何がおかしい。
いつも聞こえるピアノの音もないし、1人なはずの屋上に人がいる。
「え、待って待って待って。早まらないで!?」
そこにいた彼女は屋上のフェンスから体を乗り出していた。
「…誰?」
彼女はそう小さく呟く。
「山下陽です…君は?」
「私は、藍川…じゃなかった。中山美穂。」
「中山さん?お願いだからこっちに来て…!!」
「…。」
必死になって彼女を呼ぶとこちらに来てくれた。
「で?」
「え??」
そうだった。僕が呼んだんだった。
「いつも、ここにいるの?」
僕がてんやわんやしているのを見かねたのか彼女の方から話しかけてきてくれた。
「う、うん。本読んでるんだよ。」
「そっか。」
「…もしかしていつもピアノ弾いてた?」
「なんで知ってるの…?」
いつもは聞こえるピアノの音が聞こえないことと、誰もいないここに人がいたことから導き出した僕の答えはあっていたらしい。
「毎朝ここで聞いていたんだ。上手だよね。」
そう言ったあと彼女を見ると何故か彼女は瞳に涙を溜めていた。
慌てる僕に彼女は首を横に振って違うと繰返す。
「誰も私のピアノを聞いてくれないんだ。…いや、聞かせちゃいけないのかもしれない。だから久しぶりに褒められて嬉しかったの。」
少し落ち着いた彼女はそう言って涙を拭った。
その時彼女と僕は自己紹介をして初めて、僕は彼女が同級生で隣のクラスだと知った。
「ごめんね。本読む時間なくなっちゃったかな?」
「大丈夫。本はいつだって読めるから」
「そっか!またここに来てもいい?」
「もちろんだよ。」
こうして僕らは出会った。
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