ショートケーキ

きしやなぎ あきら

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ショートケーキ

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 ショートケーキがひとつある。君はそれを食べていい。ただ一つルールがある。
 たった一つのイチゴ、それを食べたらもうおしまいだ。それ以上、どれだけ残ってようとケーキを食べてはいけない。ただそれだけだ。
 大抵の人は皆、最後の最後でイチゴを食べるだろう。楽しみに取っておいて、最後にその甘酸っぱさを楽しむのだろう。
 たまに変わった人が、ケーキがまだ残っているのにイチゴを食べる。胃もたれしちゃったとか、もう飽きちゃったとか、どうしてもイチゴをすぐ食べたかったとか、そんなんでついイチゴを食べてしまう。
 当然、それ以上ケーキを食べることは出来ない。彼らはどんな気持ちでイチゴを食べたのだろう。もったいないななんて、思ったりしたのだろうか。それとも、いらないものはいらないとすっぱり割り切っていたんだろうか。
 線路の前で、縄の輪の下で、摩天楼の上で、イチゴにフォークを伸ばすんだ。僕はケーキをちまちま食べながら、そんなニュースを耳にする。
 いつか僕がケーキを食べる日、ケーキは残っているのだろうか。どんな気持ちで食べるのだろうか。甘酸っぱくて、美味しければいいな。
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