金蘭大夜総会 GoldenOrchidClub

ましら佳

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31.星がふたつ

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 桜は母に鳩の絵の缶の箱を差し出した。
「お母さん、お金は全然使ってないの。レイおじさんに全部出して貰っていたから」
雪は缶を開けて、大事そうに写真や折り紙を取り出して、中身を確認していた。
立体の星が無いと分かると、桜を見て笑った。
「見つけたのね」
「・・・指輪は、あれ、おばあちゃんの?」
「そうよ。返してくれてありがとう。聞いたと思うけど、私、家出する時にママから盗んで行ったの。頭きたから売っちゃおうと思って」
不良娘の発言だ。
「でもそしたら、どこも引き取ってくれないのよ。これは良いものだから大事にしなさいと言って。わざと道に捨てても、駅のトイレに置きっ離しにしても拾得物で帰ってくるの。絶対に呪いの指輪なんだわって怖くてもうしまいっぱなし。桜ちゃんの折った星の折り紙の中に隠して見ないようにしてたの。だからますます帰りづらくなっちゃって」
暁子が笑った。
「呪いと言うかお守りと言うかは人それぞれよだよねぇ」
恐怖体験よ、怪談よ、と母は言い募った。
そうだ、とバッグからブローチを取り出す。
母が、自分の入学式や卒業式の度に胸に飾るカメオのブローチ。
「これは桜ちゃんにあげる」
「これってすごく高いんでしょ?・・・困る!」
「いいから。自分のものにならない時は返しなさい。持ってみないとわからないから」
桜は恐る恐るその美しい宝物を受け取った。
「それは17世紀にナポリで作られたのよ。美術館行きになるすんでで私が競り落としたの」
暁子が得意気に言った。
聖書の一場面を繊細に作り込んだ美しいカメオ。
人の手が作ったというのがにわかには信じられない精巧さで見入ってしまう。
「お星さま、エメラルドはどうしたの?」
怜月が尋ねた。
鳳が家出娘へ餞別せんべつに渡したと言うインコのデザインのエメラルドだ。
「結婚指輪にしたのよ。夫にとても素敵な真珠を足して貰って作り直したの」
そう聞くと、怜月も大きく頷いた。
「そう。それはとてもいいアイディアだわ。ママの事だわ、それを聞いたら大喜びで歌い出したでしょうね。・・・じゃあ、桜子ちゃん、これもね」
封筒だ。暁子が半島酒店のカウンターで受け取ったもの。
「・・・・なに?これ」
難しい漢字と、英文が並んでいる。
手紙などではないということしかわからない。
「金蘭の土地の権利書よ。建物はもうないけど」
「権利書?!」
「ママと大哥と暁子と私のパパが、桜子ちゃんが産まれた時にプレゼントにしようって決めたんですって。でも金蘭大夜総会ゴールデンオーキッドクラブはママが死んでから大哥がショックで売却しちゃっていたから、持ち主が何度か変わっていたのだけど、それを、暁子と私のパパが買い戻してくれていたんですって」
「大変だったのよ。だいぶボッたくられたんだから。でも割にスンナリ戻って来た。やっぱり身につくものだったんでしょ」
暁子が昨日のことのように言う。
「でも、こんなの貰っても・・・」
「いいから貰っときなさい。自分の物にならないときはその時考えればいいもの」
母すら当然のように言うのは、暁子の影響だろうか。
指輪の件の実体験があって、その点では信じているらしい。
大変なことになった。突然、大金持ちだ。
今使えるお金がなにもないけど。
「星が2つ、桜ちゃんに託されたわね。さて、それがどうなるかはまだ分から無いけれど」
怜月が楽しそうに言った。
「さあ。じゃあ。久々に飲茶でも食べに行きたいね。陸羽がいいわ」
華子が、着いたばかりでまた出かけるの?と文句を言った。
「わざわざ?お母さん、ここんちレストランでしょ?ここで食べればいいじゃない?」
「いいじゃない、暁子は久々でしょ。陸羽茶室ロックユーチャーサッに行きましょうか」
「でもいきなり行ってやってるもんなの?お休みとかだったら面倒だから、電話で予約したら?」
「やってるわよ。あの店がそう簡単に休むもんですか」
暁子が車椅子を蹴り出して立ち上がった。
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