31 / 33
31.星がふたつ
しおりを挟む
桜は母に鳩の絵の缶の箱を差し出した。
「お母さん、お金は全然使ってないの。レイおじさんに全部出して貰っていたから」
雪は缶を開けて、大事そうに写真や折り紙を取り出して、中身を確認していた。
立体の星が無いと分かると、桜を見て笑った。
「見つけたのね」
「・・・指輪は、あれ、おばあちゃんの?」
「そうよ。返してくれてありがとう。聞いたと思うけど、私、家出する時にママから盗んで行ったの。頭きたから売っちゃおうと思って」
不良娘の発言だ。
「でもそしたら、どこも引き取ってくれないのよ。これは良いものだから大事にしなさいと言って。わざと道に捨てても、駅のトイレに置きっ離しにしても拾得物で帰ってくるの。絶対に呪いの指輪なんだわって怖くてもうしまいっぱなし。桜ちゃんの折った星の折り紙の中に隠して見ないようにしてたの。だからますます帰りづらくなっちゃって」
暁子が笑った。
「呪いと言うかお守りと言うかは人それぞれよだよねぇ」
恐怖体験よ、怪談よ、と母は言い募った。
そうだ、とバッグからブローチを取り出す。
母が、自分の入学式や卒業式の度に胸に飾るカメオのブローチ。
「これは桜ちゃんにあげる」
「これってすごく高いんでしょ?・・・困る!」
「いいから。自分のものにならない時は返しなさい。持ってみないとわからないから」
桜は恐る恐るその美しい宝物を受け取った。
「それは17世紀にナポリで作られたのよ。美術館行きになるすんでで私が競り落としたの」
暁子が得意気に言った。
聖書の一場面を繊細に作り込んだ美しいカメオ。
人の手が作ったというのが俄かには信じられない精巧さで見入ってしまう。
「お星さま、エメラルドはどうしたの?」
怜月が尋ねた。
鳳が家出娘へ餞別に渡したと言うインコのデザインのエメラルドだ。
「結婚指輪にしたのよ。夫にとても素敵な真珠を足して貰って作り直したの」
そう聞くと、怜月も大きく頷いた。
「そう。それはとてもいいアイディアだわ。ママの事だわ、それを聞いたら大喜びで歌い出したでしょうね。・・・じゃあ、桜子ちゃん、これもね」
封筒だ。暁子が半島酒店のカウンターで受け取ったもの。
「・・・・なに?これ」
難しい漢字と、英文が並んでいる。
手紙などではないということしかわからない。
「金蘭の土地の権利書よ。建物はもうないけど」
「権利書?!」
「ママと大哥と暁子と私のパパが、桜子ちゃんが産まれた時にプレゼントにしようって決めたんですって。でも金蘭大夜総会はママが死んでから大哥がショックで売却しちゃっていたから、持ち主が何度か変わっていたのだけど、それを、暁子と私のパパが買い戻してくれていたんですって」
「大変だったのよ。だいぶボッたくられたんだから。でも割にスンナリ戻って来た。やっぱり身につくものだったんでしょ」
暁子が昨日のことのように言う。
「でも、こんなの貰っても・・・」
「いいから貰っときなさい。自分の物にならないときはその時考えればいいもの」
母すら当然のように言うのは、暁子の影響だろうか。
指輪の件の実体験があって、その点では信じているらしい。
大変なことになった。突然、大金持ちだ。
今使えるお金がなにもないけど。
「星が2つ、桜ちゃんに託されたわね。さて、それがどうなるかはまだ分から無いけれど」
怜月が楽しそうに言った。
「さあ。じゃあ。久々に飲茶でも食べに行きたいね。陸羽がいいわ」
華子が、着いたばかりでまた出かけるの?と文句を言った。
「わざわざ?お母さん、ここんちレストランでしょ?ここで食べればいいじゃない?」
「いいじゃない、暁子は久々でしょ。陸羽茶室に行きましょうか」
「でもいきなり行ってやってるもんなの?お休みとかだったら面倒だから、電話で予約したら?」
「やってるわよ。あの店がそう簡単に休むもんですか」
暁子が車椅子を蹴り出して立ち上がった。
「お母さん、お金は全然使ってないの。レイおじさんに全部出して貰っていたから」
雪は缶を開けて、大事そうに写真や折り紙を取り出して、中身を確認していた。
立体の星が無いと分かると、桜を見て笑った。
「見つけたのね」
「・・・指輪は、あれ、おばあちゃんの?」
「そうよ。返してくれてありがとう。聞いたと思うけど、私、家出する時にママから盗んで行ったの。頭きたから売っちゃおうと思って」
不良娘の発言だ。
「でもそしたら、どこも引き取ってくれないのよ。これは良いものだから大事にしなさいと言って。わざと道に捨てても、駅のトイレに置きっ離しにしても拾得物で帰ってくるの。絶対に呪いの指輪なんだわって怖くてもうしまいっぱなし。桜ちゃんの折った星の折り紙の中に隠して見ないようにしてたの。だからますます帰りづらくなっちゃって」
暁子が笑った。
「呪いと言うかお守りと言うかは人それぞれよだよねぇ」
恐怖体験よ、怪談よ、と母は言い募った。
そうだ、とバッグからブローチを取り出す。
母が、自分の入学式や卒業式の度に胸に飾るカメオのブローチ。
「これは桜ちゃんにあげる」
「これってすごく高いんでしょ?・・・困る!」
「いいから。自分のものにならない時は返しなさい。持ってみないとわからないから」
桜は恐る恐るその美しい宝物を受け取った。
「それは17世紀にナポリで作られたのよ。美術館行きになるすんでで私が競り落としたの」
暁子が得意気に言った。
聖書の一場面を繊細に作り込んだ美しいカメオ。
人の手が作ったというのが俄かには信じられない精巧さで見入ってしまう。
「お星さま、エメラルドはどうしたの?」
怜月が尋ねた。
鳳が家出娘へ餞別に渡したと言うインコのデザインのエメラルドだ。
「結婚指輪にしたのよ。夫にとても素敵な真珠を足して貰って作り直したの」
そう聞くと、怜月も大きく頷いた。
「そう。それはとてもいいアイディアだわ。ママの事だわ、それを聞いたら大喜びで歌い出したでしょうね。・・・じゃあ、桜子ちゃん、これもね」
封筒だ。暁子が半島酒店のカウンターで受け取ったもの。
「・・・・なに?これ」
難しい漢字と、英文が並んでいる。
手紙などではないということしかわからない。
「金蘭の土地の権利書よ。建物はもうないけど」
「権利書?!」
「ママと大哥と暁子と私のパパが、桜子ちゃんが産まれた時にプレゼントにしようって決めたんですって。でも金蘭大夜総会はママが死んでから大哥がショックで売却しちゃっていたから、持ち主が何度か変わっていたのだけど、それを、暁子と私のパパが買い戻してくれていたんですって」
「大変だったのよ。だいぶボッたくられたんだから。でも割にスンナリ戻って来た。やっぱり身につくものだったんでしょ」
暁子が昨日のことのように言う。
「でも、こんなの貰っても・・・」
「いいから貰っときなさい。自分の物にならないときはその時考えればいいもの」
母すら当然のように言うのは、暁子の影響だろうか。
指輪の件の実体験があって、その点では信じているらしい。
大変なことになった。突然、大金持ちだ。
今使えるお金がなにもないけど。
「星が2つ、桜ちゃんに託されたわね。さて、それがどうなるかはまだ分から無いけれど」
怜月が楽しそうに言った。
「さあ。じゃあ。久々に飲茶でも食べに行きたいね。陸羽がいいわ」
華子が、着いたばかりでまた出かけるの?と文句を言った。
「わざわざ?お母さん、ここんちレストランでしょ?ここで食べればいいじゃない?」
「いいじゃない、暁子は久々でしょ。陸羽茶室に行きましょうか」
「でもいきなり行ってやってるもんなの?お休みとかだったら面倒だから、電話で予約したら?」
「やってるわよ。あの店がそう簡単に休むもんですか」
暁子が車椅子を蹴り出して立ち上がった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる