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古都宮春遥、この度生まれ変わります!
どうやら神様って本当に居た様です…。
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生命神・エルテ。名前の通り生命を司る神である。冥神、時神と並ぶ三大神の中の一人だ。
死んだ者の天国地獄を定めるのは冥神の役割だが、たまに転生の器として死者も私の元へ帰ってきたりする。
神界の中でも私の領地は塵一つない真っ白な世界だとして有名だ。他の神たちが訪れると、その度に
「本当に何もないんだな。」
と言って帰っていく。しかし、理由もなしに何も置いていないのではない。転生の器である魂が上って来た時、不思議な事にその魂の一生を象徴した花言葉を持つ花が現れ、花が開くと中央に透けてはいるが人間の姿のまま立っているのだ。書物の神にその話をすると、
「親指姫の様な話だ。」
とつぶやいていた。もっとも、下界の書物を読んだことの無い私にはそれが何なのかさえ理解不能だったが…。
ともかくそんな幻想的な場面なのに、辺りにごちゃごちゃとものが置いてあっては映えないのである。
今日も私は新しい生命を作り出し、祝福を与え、コウノトリと呼ばれる綺麗な白をした鳥にそれを入れたかごを持って行かせていた。
その時だ。白いゼラニウムの蕾が現れた。転生の器だろう。確か花言葉は…。
「私はあなたの愛を信じない、だったか。」
蕾が開き、花の上に立っていたのはまだ幼い少女だった。
「お前、名は?」
しばらくして少女が口を開く。
「古都宮…春遥。あなたは?」
「生命神・エルテだ。」
彼女は少し眉をひそめたが、再び口を開く。
「神様?」
ああ、と答え、またすぐに質問を投げかけた。
「心残りはないか?」
ここに戻ってくる魂たちは何かしらの心残りが強く残っていることが多い。
強い心残りはそのままにしておくと、新しい生命としての転生が失敗してしまう可能性がある。
すると、彼女は俯いた。
「私は…愛されていましたか?」
驚いた。今まで数々の転生の器を相手にしてきたが、こんな心残りは初めてだ。
私は少し考えて、言った。
「下界を見てみるか?」
どちらにしろ転生の準備には時間がかかる。
その間に下界を見ていれば、何かしらの答えが出るかもしれない。
「…はい。」
私は真っ白な世界に大きな円の形をした光のスクリーンを作り出した。
円の中に映し出される映像で下界の様子が分かるようになっている。
「そこを動かないように。」
そう告げると、彼女は頷くと同時に花の上からおりた。その瞬間に白いゼラニウムの花は消えてしまう。
少し残念に思いながらも、私はその場を立ち去った。
死んだ者の天国地獄を定めるのは冥神の役割だが、たまに転生の器として死者も私の元へ帰ってきたりする。
神界の中でも私の領地は塵一つない真っ白な世界だとして有名だ。他の神たちが訪れると、その度に
「本当に何もないんだな。」
と言って帰っていく。しかし、理由もなしに何も置いていないのではない。転生の器である魂が上って来た時、不思議な事にその魂の一生を象徴した花言葉を持つ花が現れ、花が開くと中央に透けてはいるが人間の姿のまま立っているのだ。書物の神にその話をすると、
「親指姫の様な話だ。」
とつぶやいていた。もっとも、下界の書物を読んだことの無い私にはそれが何なのかさえ理解不能だったが…。
ともかくそんな幻想的な場面なのに、辺りにごちゃごちゃとものが置いてあっては映えないのである。
今日も私は新しい生命を作り出し、祝福を与え、コウノトリと呼ばれる綺麗な白をした鳥にそれを入れたかごを持って行かせていた。
その時だ。白いゼラニウムの蕾が現れた。転生の器だろう。確か花言葉は…。
「私はあなたの愛を信じない、だったか。」
蕾が開き、花の上に立っていたのはまだ幼い少女だった。
「お前、名は?」
しばらくして少女が口を開く。
「古都宮…春遥。あなたは?」
「生命神・エルテだ。」
彼女は少し眉をひそめたが、再び口を開く。
「神様?」
ああ、と答え、またすぐに質問を投げかけた。
「心残りはないか?」
ここに戻ってくる魂たちは何かしらの心残りが強く残っていることが多い。
強い心残りはそのままにしておくと、新しい生命としての転生が失敗してしまう可能性がある。
すると、彼女は俯いた。
「私は…愛されていましたか?」
驚いた。今まで数々の転生の器を相手にしてきたが、こんな心残りは初めてだ。
私は少し考えて、言った。
「下界を見てみるか?」
どちらにしろ転生の準備には時間がかかる。
その間に下界を見ていれば、何かしらの答えが出るかもしれない。
「…はい。」
私は真っ白な世界に大きな円の形をした光のスクリーンを作り出した。
円の中に映し出される映像で下界の様子が分かるようになっている。
「そこを動かないように。」
そう告げると、彼女は頷くと同時に花の上からおりた。その瞬間に白いゼラニウムの花は消えてしまう。
少し残念に思いながらも、私はその場を立ち去った。
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