地獄のお仕事!

由夜

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嫉妬のレヴィアタン

昨日の敵は今日の友?

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ー一ー
サタナキアとの会話が途切れ代わりにベラーゼの声が聞こえてきた。
「もやし、聞こえてるか、もやし?」
相変わらず、もやしを連呼するベラーゼだが、その呼び掛けにはいつものようなトゲがないように思える。まるで、子供に問いかけるかのような優しい声で。
その呼び掛けに反応するように俺は重たいまぶたを開いた。
「……」
見慣れない天井だ。
自分の家のボロ屋では見たことのないシャンデリアや天井の装飾を見てサトシはここが何処なのかと頭をフル回転させた。
ベラーゼの声が聞こえていたのと仕事が始まる前ベラーゼが言ってた「私の家に泊めてやる」という言葉を合わせると此処はベラーゼの家ってことになるのか?
「お兄ちゃん!?」
「ああ!目を覚ましたもやし!」
「三日もダウンするとは情けないな」
サトシの目の前に顔を覗かせる三人。
三人のうち二人はサクラとベラーゼだが、もう一人の顔を見ると憎悪と嫌悪と怒りで今にも飛びかかりそうになってしまう。
それは、その一人が俺をここに寝させている元凶で俺が悪魔として覚醒した原因だからだ。
「ルシファー……」
叫ぶ事はせはず俺は目で全ての感情をヤツに放った。
「おいおい、感謝されても憎まれるような事をした覚えはないぞ」
この期に及んでルシファーはシラを切るように手を振る。
「なに?お前がした事を忘れたとは言わさねぇぞ!…………いっ!?」
殴りかかろうとしたサトシの体に痛みが走り握った拳はルシファーに届くことなく力なく落ちた。
「ああ~、あれか……。
いやな、あれにも事情というものがあってな」
思い出したようにルシファーが淡々と説明を始める。
ルシファーが語った事によるとサクラよりサトシの方が悪魔として覚醒する可能性が高かったらしい。
だから、ルシファーはサクラを〝餌〟として使いサトシを覚醒させた。故に、サクラの方が可能性が高ければサトシを餌にしていたと言われ……あの惨劇を自分で置き換えると思わず吐きかけた。
ルシファーの魔術で気絶していたといえサクラには辛い思いをさせてしまったな。
少し悔やむサトシとは裏腹にサクラはキョトンとした顔でこちらを見ている。
「でも、なぜです?どうして、もやしを悪魔として覚醒させる必要があったのですか?地獄でしばらく過ごしていれば体は自ずと悪魔になるというのは貴方も知っているはずですよ」
今度は、ベラーゼが質問する。
ベラーゼの言っている事は最もだ、こんな荒療治みたいな方法で覚醒させなくても、地獄で仕事を繰り返していれば悪魔になるって閻魔様も言ってたのに。
「それじゃ、遅い。
今から、一週間後に天界の奴らが俺を奪いに攻めてくるぞ。その時に救世主が使い物にならなかったら全て水の泡だ」
なに!?その話は初耳なんだが!
一週間後だって、ちょっと早すぎないか。
「残り時間の間にサトシには他の悪魔達と契約して力を手に入れてもらう。それと、サクラは悪魔として覚醒しろ。お前たちに出来る事はそれだけだ」
先の戦いでのイカれルシファーとは思えないほどダンディーなルシファー。
サタナキアが言ってた奴だな、確かとりあえず七つの大罪と契約すべきだとか。
「なぁ、ルシファー。お前とは契約しないのか?」
「む?そうだな。少しは力の足しになるか」
そう言うとルシファーはサトシの手を握り呪術を唱える。すると手の甲に文様が浮かび上がりルシファーはそこに吸い込まれていった。
「え!?ルシファーが消えた!」
いち早くサクラが驚く。
(消えたわけではい。サトシの中に入っただけだ。)
「そうなんだ~。ホッ」
素直に安心するサクラを見ていると心が和む。
(お前、シスコンか?)
(うるせー、それ以上喋るなもう一度殴り飛ばすぞ)
(失敬)
俺との会話が終わるとルシファーはサタナキアと何やら話を始めたが俺にはサッパリ分からん。
「よぉーしっ!とりあえず先の目標は決まったし七つの大罪を目指して行くか!」
「おおーー!」
「待て!私も一緒なのか!?」
こうして、サトシは七つの大罪と契約にサクラは覚醒にベラーゼは付添いとして再び地獄巡りを始めたのであった。

(なぁ、サタナキアよ)
(話しかけるな、外道)
(うぐっ!いくら何でも酷すぎないか!)
(お前の演技の狂気の方が酷いわ!)
(それ、言うのなしにしよーぜ!)
この二人もすれ違いをひたすらサトシの中で繰り返していた。

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みんなの感想(1件)

龍牙王
2016.08.31 龍牙王
ネタバレ含む
2016.08.31 由夜

申し訳ありません!
当初は30日で予定していたのですが、間に合わなくなってしまい9月2日を予定に最新話を更新していきたいです!
今後もよろしくお願いします!!<(_ _)>

解除

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