【完結】担任教師の恋愛指導。先生、余計なお世話です。

隣のカキ

文字の大きさ
11 / 37

第11話 恋愛? お互いの価値観は大事だよねって話。

しおりを挟む
 母さんが買い物から帰って来ると同時に、ミイちゃんは不自然な程あっさりと帰って行った。

 結局何がしたかったんだ?

 疑問は尽きない。しかし俺にはやらなければならない事がある。

 それは……。


「という事でさ。実は親戚だったんだよね。」

『武太君にあんな可愛い親戚がいたなんて知らなかったよ。腕まで組んじゃってねぇ。』


 零子ちゃんへの言い訳、というか誤解を解く事である。

 一応納得はしてもらえたようだが声に若干トゲがあるのは気のせいか?

 放課後の下駄箱での一件についてしっかりと誤解を解いておかねば、万が一言いふらされでもした場合は地獄の学校生活が始まるかもしれない。

 脳みそチ〇コ、略して脳チンのそしりを免れないのである。


「いやいや、親戚ってさ……そういうノリ? みたいなのってあるじゃん?」


 正直無理があるとは自分でも思っている。いくら親戚でも腕組みながら彼女です、と言う奴なんていないだろう。

 でも、そういう事にしておかないと色々とマズいのだ。

 幼馴染だろ。頼むから俺の雑な言い訳に納得しろ。


『ふーん。まぁ、確かに親戚ってそういう感じあるよね。』

「はい?」


 やべっ。思わず声に出てしまった。そして何故か納得されてしまった。納得しろとは思ったが、まさかこれ程あっさりいくとは思いもしない。

 零子ちゃんってもしかして、ちょっと変わってる?


『私のとこでもそうだもん。従兄弟がね、一緒に歩いていると彼氏ですって言って回るから結構大変なのよ。』

「そ、そうなんだぁ。」


 零子ちゃん。それは多分ガチなやつだと思うよ?

 俺の場合は親戚じゃないから問題ないけど、従兄弟だと法的には問題無くても世間体とか色々あるよ?


『ほんとに困っちゃうよねぇ。従兄弟なんて親戚だしさ? 手繋いだりベタベタするくらいが関の山で、付き合うなんて出来ないって話なんだけど。』


 うん。この人、異性との距離感ぶっ壊れてるわ。

 主に親戚の従兄弟に対して。

 普通従兄弟相手にベタベタはしない。当然手も繋がない。

 大変に申し訳ないのだけれど、俺の幼馴染はビッチ説が割と確度の高い情報として脳内で処理されてしまいそうである。


「そっかぁ。ところでさ、その従兄弟は近所に住んでるの?」

『そうそう。近いからって毎日来るんだよね。』


 毎日?

 やっぱりガチの奴だ。


「なるほど、大変だね。」

『うん。武太君も大変みたいだし、お互い頑張ろうね。』

「あ、あぁ。」


 何とも微妙な気持ちのまま、通話を終えた。


「しかし、幼馴染やってきたけど、そんな従兄弟がいるなんて知らなかった。」


 いくら幼馴染とは言え、流石に親戚関係までは把握してないし、最近こっちに引っ越してきたとかかもしれないな。

 まぁそれは置いといて、今の俺は女の子に興味はないが、それでも分かる事がある。

 そんなベタベタする従兄弟がいる女の子とまともに付き合いたいと思う男は恐らくいないだろう。少なくとも俺だったら嫌だ。

 下手すりゃ肉体関係とかありそうじゃん。

 零子ちゃん、彼氏居た時とかマジでどうしてたんだろう?

 幼馴染との通話を終えた俺は確信してしまった。

 やはり、俺には恋愛なんて縁がないのだ、と……。

 告白みたいな事をしてきた幼馴染には、第三者目線で見た場合に怪しい関係の従兄弟が存在している。

 これは明らかに地雷物件だ。

 以前の俺でも、恋愛に興味を無くしてしまう前の俺だとしても……断る事が容易に想像できてしまった。


「まぁ、別に俺が浮気されたとかじゃないし、良いんだけどね。」


 ミイちゃんはこの事を知っているのだろうか?

 知ってそうだなぁ。

 知ってて俺には言わなかった可能性が高い。武士の情け? みたいな。


 ピコンとLIMEの通知が鳴る。


「何だ?」


 差出人はミイちゃんだ。

 ここ最近日課になっているこのやり取り、面倒と思いつつも若干楽しいと思っている自分がいる。


「どれどれ……っ!?」


 LIMEを開き、文字に目を通した瞬間衝撃が走った。


『零子さんとの電話終わった? 従兄弟の話とか聞いちゃった頃かな?』


 何故分かる。

 この人、まさか俺の部屋に何か仕掛けていったんじゃないだろうな?

 俺が恐れ慄いていると、LIMEが鳴り始める。


「もしもし?」

『もしもーし。』

「どうして従兄弟の件知ってるの? というか、何でその話をしたって分かったの?」

『愛する人の全てを知っておきたいじゃん? 人間関係も含めてね。』


 何の答えにもなってない返事をありがとう。

 あと、それって間違いなくストーカーの思考だよね?


『これで分かったでしょ? 恋梨君は私と付き合う以外に道はないよ。今のところ私が把握してる限りだと、貴方の周りの女子は大体地雷物件だから。』


 そっかぁ……地雷物件かぁ……。

 その地雷物件にはミイちゃんも含まれている気がするのは俺の気のせいだろうか?


「その件に関してはもう少し保留でお願いします。」

『オッケー。恋梨君はどうせ私と付き合う事になるのは分かってるから、今はまだ待っててあげる。』


 なんとなく、既にこの人からは逃げられないような気がしている。

 しかし素直にうんと頷くのもなんだか悔しい。主に男のプライド的な意味で。


「で、どうして従兄弟の件を知っているかの説明は?」

『単純な話だよワトソン君。』


 誰がワトソン君だ。


『幼馴染であり、恐らくむっくんと付き合う為の最大の障壁になるであろう零子さんを偵察したのだよ。そしたらあら不思議。毎日零子さんの自宅に出入りする男がいるじゃあないですか!』

「それで?」

『零子さんと従兄弟が腕組んで歩いている時に、偶然を装って直接聞いてみた。』


 ド直球だな。

 まぁ、確かに単純な話だった。

 偵察する事自体は意味不明だが。


『従兄弟は付き合ってますって言ってたね。零子さんは違うって否定してたけど。ちなみにキスは済ませているそうよ? 従兄弟が強引に迫ったみたいだけど。』

「マジか……。普通は嫌がるもんじゃないの?」


 強引に迫られたとは言え、今でも毎日会っているというのはオカシイと思うのは俺だけだろうか?


『零子さんが言うには従兄弟だからノーカンだって。』


 そのうち肉体関係までノーカンだなどと言い出すんじゃないか?

 零子ちゃん。君とはやっぱりお付き合い出来ないかな。

 例え天地がひっくり返ろうとも。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

処理中です...