37 / 37
最終話 恋愛? それは二等辺三角形。
しおりを挟む
「お待たせ―。じゃ、早速行こっか。」
「はい。」
ミイちゃんはJK形態で現れた。
流石に相手が戦友とは言え正体までは明かしていないらしい。当然と言えば当然か。
「どこ行くの?」
「普通にショッピングの予定。」
「私、欲しい工具があります。」
「良いじゃん。なら莉々伊ちゃんの工具を買いに行こう!」
「はい!」
ねえ。それって本当にデートなの?
俺達三人は街中をブラブラと歩きながらホームセンターを目指していた。
俺が抱えている両手の花はかなり目立っており、誰もが振り返って俺に憎しみの視線をぶつけてくる。
以前の俺ならば目から血の涙を流して羨んだに違いない。
でも今の俺は素直に喜べない。
などとどうでも良い事に思考を割いていたところ、ガラの悪そうな奴に声を掛けられてしまった。
「二人ともめっちゃ可愛いじゃん! 俺達とどっか行かね?」
「良いね良いね! あ、男は邪魔だから帰って。」
なんだこいつら? イラッとする奴らだな。
不幸な事に人通りは多少あるものの、周囲は我関せずという顔だ。
相手は二人。俺はケンカなんてした事もないし、ここは逃げるしかないか?
「あ、あの……私達は今から行く所がありますので……。」
「えー? 良いじゃん。」
「ほらほら行こうよ!」
ミイちゃんは勇気を出して言ったようだが、体が震えていた。莉々伊ちゃんなどあまりの恐怖からか能面のような顔をしている。
ここは俺がなんとか二人を守らないと……。
「ちょっと待って下さいね?」
「お? そっちの清楚系な子はオッケーって事?」
「話が分かるねぇ。」
莉々伊ちゃんはギターケースを地面に置き、可愛い動作でせっせとバットを取り出した。
これでもかと釘がブッ刺さったバットを。しかも若干赤黒い染みがある。
「これでお話出来ますね。」
「「え?」」
「で? 何ですか? 私と遊ぶって話でしたっけ? これを使って遊ぶんですよね? ねぇ? ねぇ? 黙ってないでうんって言えよ。」
「「失礼しましたー!!」」
男たちは莉々伊ちゃんの迫力に圧倒され、大急ぎで逃げてしまった。
「これでもう安心です。」
「逆に安心出来ないんだけど?」
助かったのは事実なんだけどさ。
「莉々伊ちゃん怖くね?」
「ミイちゃん、助けられておいてそれは酷いじゃないですか。」
残念ながら事実だよ莉々伊ちゃん。助けられて素直にお礼を言えない事なんて初めてだ。
あのギターケースはそういう事だったのか。
「私、お友達とお出掛けするとこうして声を掛けられる事が多いんです。でもナンパ野郎などお断りですから、自衛の為に持ち歩いています。」
「自衛の為ならどうして赤黒い染みがあるのかな?」
「お兄ちゃんに協力してもらいました。」
答えになってねーんだよ!
ねえ、何を協力してもらったの? まさかそれで錬蔵をブッ叩いたの?
赤黒い染みは錬蔵の血じゃないよね? 違うよね?
「そうなんだ。妹思いの錬蔵には感謝しておかないとな。」
詳しく聞くのはやめておこう。きっと碌な答えが返ってこない。
「まさか使った事ないよね?」
ミイちゃん。頼むから聞かないでくれよ。絶対後悔するから。
「ありますよ。」
ほらやっぱり。
「ナンパ野郎に一度振り下ろした事があります。」
相手は錬蔵じゃないのか。
少し安心した…………って人に使ったのかよ!?
「よく捕まらなかったね。」
「急いで逃げましたから。」
やめてくれ。通り魔の行動だよそれは。
ナンパ野郎が撃退されてスッとする気持ちがないわけじゃないけど、完全にやり過ぎである。
「頼りになるね。」
「ありがとうございます。第二彼女の株が上がったかもしれません。」
それはない。
助けられたお蔭で下がる事もなかったけど。
そしてミイちゃん。頼りになるのとは少し違うと思うよ?
あの三人デートの日、俺は衝撃の事実を聞かされた。
第二彼女云々は冗談と言うか、周囲へ説明するのを面倒がった二人の取り決めだったそうだ。
親公認の第二彼女と言っておけば深く聞かれる事もないし、余計なライバルが増えないという訳の分からん考えらしい。
二人とお付き合い(仮)、という状態なのだそうだ。
ミイちゃんは「むっくんって莉々伊ちゃんの事もちょっと好きだよね? だからどっちかを選ぶために考える時間をあげる。最後に選ばれるのは私だけどね。」と言っていた。
俺はミイちゃんだけではなく、無自覚にも莉々伊ちゃんを好きだったらしい。
未練が残らないようにとの配慮のようだが、それは逆に未練が深くなりそうじゃない?
まぁ、ミイちゃんも莉々伊ちゃんも俺も、三人が恋愛経験などないわけだから、訳の分からん結論に達してしまったのだろう。
ミイちゃんと莉々伊ちゃんは俺の彼女の座を巡って今も争っている。
「むっくん。そろそろ私を抱いても良いよ?」
「武太先輩。先に私にしておきませんか?」
「そういうのはちゃんと付き合ってからで……。」
「体から始まる恋もあると思う。」
「そうですね。経験はありませんけど、そのような話は耳にします。」
今の俺はどちらを選ぶのか時間を貰えたお蔭で、すっかりどちらも選べなくなってしまっていた。
ねえミイちゃん? 完全に君の作戦失敗してるよね?
そして莉々伊ちゃん。君は上手い事掻っ攫ってしまおうと考えていたみたいだけど、泥仕合にもつれこんでいるよ。
俺達の三角関係は延長戦へと突入したようだ。
「はい。」
ミイちゃんはJK形態で現れた。
流石に相手が戦友とは言え正体までは明かしていないらしい。当然と言えば当然か。
「どこ行くの?」
「普通にショッピングの予定。」
「私、欲しい工具があります。」
「良いじゃん。なら莉々伊ちゃんの工具を買いに行こう!」
「はい!」
ねえ。それって本当にデートなの?
俺達三人は街中をブラブラと歩きながらホームセンターを目指していた。
俺が抱えている両手の花はかなり目立っており、誰もが振り返って俺に憎しみの視線をぶつけてくる。
以前の俺ならば目から血の涙を流して羨んだに違いない。
でも今の俺は素直に喜べない。
などとどうでも良い事に思考を割いていたところ、ガラの悪そうな奴に声を掛けられてしまった。
「二人ともめっちゃ可愛いじゃん! 俺達とどっか行かね?」
「良いね良いね! あ、男は邪魔だから帰って。」
なんだこいつら? イラッとする奴らだな。
不幸な事に人通りは多少あるものの、周囲は我関せずという顔だ。
相手は二人。俺はケンカなんてした事もないし、ここは逃げるしかないか?
「あ、あの……私達は今から行く所がありますので……。」
「えー? 良いじゃん。」
「ほらほら行こうよ!」
ミイちゃんは勇気を出して言ったようだが、体が震えていた。莉々伊ちゃんなどあまりの恐怖からか能面のような顔をしている。
ここは俺がなんとか二人を守らないと……。
「ちょっと待って下さいね?」
「お? そっちの清楚系な子はオッケーって事?」
「話が分かるねぇ。」
莉々伊ちゃんはギターケースを地面に置き、可愛い動作でせっせとバットを取り出した。
これでもかと釘がブッ刺さったバットを。しかも若干赤黒い染みがある。
「これでお話出来ますね。」
「「え?」」
「で? 何ですか? 私と遊ぶって話でしたっけ? これを使って遊ぶんですよね? ねぇ? ねぇ? 黙ってないでうんって言えよ。」
「「失礼しましたー!!」」
男たちは莉々伊ちゃんの迫力に圧倒され、大急ぎで逃げてしまった。
「これでもう安心です。」
「逆に安心出来ないんだけど?」
助かったのは事実なんだけどさ。
「莉々伊ちゃん怖くね?」
「ミイちゃん、助けられておいてそれは酷いじゃないですか。」
残念ながら事実だよ莉々伊ちゃん。助けられて素直にお礼を言えない事なんて初めてだ。
あのギターケースはそういう事だったのか。
「私、お友達とお出掛けするとこうして声を掛けられる事が多いんです。でもナンパ野郎などお断りですから、自衛の為に持ち歩いています。」
「自衛の為ならどうして赤黒い染みがあるのかな?」
「お兄ちゃんに協力してもらいました。」
答えになってねーんだよ!
ねえ、何を協力してもらったの? まさかそれで錬蔵をブッ叩いたの?
赤黒い染みは錬蔵の血じゃないよね? 違うよね?
「そうなんだ。妹思いの錬蔵には感謝しておかないとな。」
詳しく聞くのはやめておこう。きっと碌な答えが返ってこない。
「まさか使った事ないよね?」
ミイちゃん。頼むから聞かないでくれよ。絶対後悔するから。
「ありますよ。」
ほらやっぱり。
「ナンパ野郎に一度振り下ろした事があります。」
相手は錬蔵じゃないのか。
少し安心した…………って人に使ったのかよ!?
「よく捕まらなかったね。」
「急いで逃げましたから。」
やめてくれ。通り魔の行動だよそれは。
ナンパ野郎が撃退されてスッとする気持ちがないわけじゃないけど、完全にやり過ぎである。
「頼りになるね。」
「ありがとうございます。第二彼女の株が上がったかもしれません。」
それはない。
助けられたお蔭で下がる事もなかったけど。
そしてミイちゃん。頼りになるのとは少し違うと思うよ?
あの三人デートの日、俺は衝撃の事実を聞かされた。
第二彼女云々は冗談と言うか、周囲へ説明するのを面倒がった二人の取り決めだったそうだ。
親公認の第二彼女と言っておけば深く聞かれる事もないし、余計なライバルが増えないという訳の分からん考えらしい。
二人とお付き合い(仮)、という状態なのだそうだ。
ミイちゃんは「むっくんって莉々伊ちゃんの事もちょっと好きだよね? だからどっちかを選ぶために考える時間をあげる。最後に選ばれるのは私だけどね。」と言っていた。
俺はミイちゃんだけではなく、無自覚にも莉々伊ちゃんを好きだったらしい。
未練が残らないようにとの配慮のようだが、それは逆に未練が深くなりそうじゃない?
まぁ、ミイちゃんも莉々伊ちゃんも俺も、三人が恋愛経験などないわけだから、訳の分からん結論に達してしまったのだろう。
ミイちゃんと莉々伊ちゃんは俺の彼女の座を巡って今も争っている。
「むっくん。そろそろ私を抱いても良いよ?」
「武太先輩。先に私にしておきませんか?」
「そういうのはちゃんと付き合ってからで……。」
「体から始まる恋もあると思う。」
「そうですね。経験はありませんけど、そのような話は耳にします。」
今の俺はどちらを選ぶのか時間を貰えたお蔭で、すっかりどちらも選べなくなってしまっていた。
ねえミイちゃん? 完全に君の作戦失敗してるよね?
そして莉々伊ちゃん。君は上手い事掻っ攫ってしまおうと考えていたみたいだけど、泥仕合にもつれこんでいるよ。
俺達の三角関係は延長戦へと突入したようだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる