4 / 45
本編
LEVEL1 / 書けないんだよ……
しおりを挟む
ブー、ブー、ブー、
夏休みも半分を過ぎた頃の夕方、マナーモードに設定していた龍崎勇斗《りゅうさきゆうと》のスマホが鳴った。
電話の相手は羽賀稔。勇斗の親友だ。
「もしもし」
「龍崎か?お前、ゲーム感想文、終わった?」
「終わってねえよ」
「俺もだよ。アレ、やばくねえ?」
「確かに、マジでやばいよ……」
ゲーム感想文、とは夏休みの課題のことだ。多くの学校では夏休みの課題として読書感想文を書かされるだろう。そして、その課題図書といえば、やれ走れメロスだの、風の又三郎だの、定番の小説を読んで感想文を書いてこいというものだ。
ところが、彼等の通う虎ノ口中学校はそうじゃなかった。
「ドラクエの、ゲーム感想文を書いてきてください」
それを聞いた時、多くの、それも男子生徒達は大喜びだった。
「ラッキー」
「これで今年の夏休みは遊び放題だ」
「最初からそういう宿題を出せっつーの」
誰もがこの宿題を、例年の読書感想文のような面倒臭いものとは考えてはいなかった。ゲームを遊び終えたら、その内容をサッサと書いて終わり。
むしろ、どれだけ自分がレアなアイテムを入手したとか、あるいは最強のパーティーに仕上げてクリアしたとか、クラスで自慢できるような内容に仕上げて提出しようとすら思っていた。
「それがさ……みんなそうなんだって!」
「そうなのか……やっぱり!」
「チクショー、玉野の野郎、騙しやがって!」
国語教師の玉野悟はゲームが嫌いだ。以前、学校に携帯ゲーム機を持参した生徒がいた際、それを没収して卒業するまで返さなかったと自慢気に話していた。
その他にも、授業中にスマホゲームをやっていた生徒に対して反省文を400字詰めの原稿用紙で100枚分書かせたとか。とにかくゲームに何か恨みでもあるんじゃないかってくらい、目の敵にする。
そんなあいつが、夏休みの宿題に「ゲーム感想文」なんて出す。この時点で疑っておくべきだったんだ。
とはいえ、今更引き返すわけにもいかない。
「俺さ、今、塾に通ってんだけど……」
勇斗は最近、塾に通い始めた。いや、通っていたと言った方が正しいのかもしれない。別に通いたかったわけじゃない。とりあえず親が行けと言うから、仕方なく行っていた。
もちろん、そんな状況だから塾へ行ったところで成績が上がるなんてことは、まず、ない。
予習をして来なければ怒られる。だからそれが嫌で、行きたくない。結局塾に行かず、近くを適当にぶらぶらしていることもしばしばだった。
当然、無断欠席をすれば家に電話がかかってくる。そんな時は、やれ電車の中で居眠りをして、ずっと先の駅まで乗り過ごしてしまったとか、あるいは財布を忘れてしまい、電車に乗れなかったとか、適当な言い訳をする。しかし、それもそろそろ限界に近づいてきた頃だった。
「頼むよ……ここままじゃマズイって」
要するに塾の先生に答えを教えてもらえってことだ。塾ならば学校の勉強位は簡単に分かるだろう。当然、読書感想文だって書き方を知っているはずだ。
「でも、ドラクエじゃあ」
「これって……もしかして」
「俺も今、そう思った」
確かに、塾の先生ならば読書感想文くらい書けるんじゃないか。でも、ゲームとなればどうだろうか?
少なくとも学校教師の玉野はゲーム嫌いで、おそらくゲームなんてやらないだろう。となれば、塾の講師だって大人だから、当然ゲームの事なんか知らないんじゃないか。
「これ、まずいよな……」
「てゆーか、玉野の奴、最初から狙ってたんじゃねーの?」
読書感想文は多くの生徒が書けない。結果、一部の要領のいい生徒はインターネットにある情報を基に書こうとする。
中には「コピペサイト」なるものも存在していて、その通りに書けば誰でも「模範解答」になる。仮に夏休みの課題が、そのサイトに掲載されている文学作品であれば、何の問題もなかったはずだ。
しかし、今回の課題図書、というよりゲームはそうはいかない。
「お前、ひょっとして、ネットでゲーム感想文とか探した?」
「いや、まだだけど」
「やっぱりねえんだよ。これ、ホント玉野の策略だって、マジで」
スマホの先から、半泣き状態の稔の声が聞こえる。
まあ、そう言われてみればそうなのかもしれない。コピペサイトの作者だって、まさか学校の先生が夏休みにゲームをやって来いなんていうのを想定はしていないだろうから。
「とりあえずさ、塾に行って聞いてみるわ」
「頼むよ、まじヤバイって」
いや、ヤバいのはお前だけじゃないだろう。というより、俺に全て解決策を委ねようというのもどうなんだ……
しかし、勇斗にとって、今はそんな事考えている場合ではなかった。
「このままじゃ宿題が終わらない」
勇斗はすっかり足が遠ざかっていた塾に、久々に足を運ぶことにした。
「怒られなきゃいいけど……」
夏休みも半分を過ぎた頃の夕方、マナーモードに設定していた龍崎勇斗《りゅうさきゆうと》のスマホが鳴った。
電話の相手は羽賀稔。勇斗の親友だ。
「もしもし」
「龍崎か?お前、ゲーム感想文、終わった?」
「終わってねえよ」
「俺もだよ。アレ、やばくねえ?」
「確かに、マジでやばいよ……」
ゲーム感想文、とは夏休みの課題のことだ。多くの学校では夏休みの課題として読書感想文を書かされるだろう。そして、その課題図書といえば、やれ走れメロスだの、風の又三郎だの、定番の小説を読んで感想文を書いてこいというものだ。
ところが、彼等の通う虎ノ口中学校はそうじゃなかった。
「ドラクエの、ゲーム感想文を書いてきてください」
それを聞いた時、多くの、それも男子生徒達は大喜びだった。
「ラッキー」
「これで今年の夏休みは遊び放題だ」
「最初からそういう宿題を出せっつーの」
誰もがこの宿題を、例年の読書感想文のような面倒臭いものとは考えてはいなかった。ゲームを遊び終えたら、その内容をサッサと書いて終わり。
むしろ、どれだけ自分がレアなアイテムを入手したとか、あるいは最強のパーティーに仕上げてクリアしたとか、クラスで自慢できるような内容に仕上げて提出しようとすら思っていた。
「それがさ……みんなそうなんだって!」
「そうなのか……やっぱり!」
「チクショー、玉野の野郎、騙しやがって!」
国語教師の玉野悟はゲームが嫌いだ。以前、学校に携帯ゲーム機を持参した生徒がいた際、それを没収して卒業するまで返さなかったと自慢気に話していた。
その他にも、授業中にスマホゲームをやっていた生徒に対して反省文を400字詰めの原稿用紙で100枚分書かせたとか。とにかくゲームに何か恨みでもあるんじゃないかってくらい、目の敵にする。
そんなあいつが、夏休みの宿題に「ゲーム感想文」なんて出す。この時点で疑っておくべきだったんだ。
とはいえ、今更引き返すわけにもいかない。
「俺さ、今、塾に通ってんだけど……」
勇斗は最近、塾に通い始めた。いや、通っていたと言った方が正しいのかもしれない。別に通いたかったわけじゃない。とりあえず親が行けと言うから、仕方なく行っていた。
もちろん、そんな状況だから塾へ行ったところで成績が上がるなんてことは、まず、ない。
予習をして来なければ怒られる。だからそれが嫌で、行きたくない。結局塾に行かず、近くを適当にぶらぶらしていることもしばしばだった。
当然、無断欠席をすれば家に電話がかかってくる。そんな時は、やれ電車の中で居眠りをして、ずっと先の駅まで乗り過ごしてしまったとか、あるいは財布を忘れてしまい、電車に乗れなかったとか、適当な言い訳をする。しかし、それもそろそろ限界に近づいてきた頃だった。
「頼むよ……ここままじゃマズイって」
要するに塾の先生に答えを教えてもらえってことだ。塾ならば学校の勉強位は簡単に分かるだろう。当然、読書感想文だって書き方を知っているはずだ。
「でも、ドラクエじゃあ」
「これって……もしかして」
「俺も今、そう思った」
確かに、塾の先生ならば読書感想文くらい書けるんじゃないか。でも、ゲームとなればどうだろうか?
少なくとも学校教師の玉野はゲーム嫌いで、おそらくゲームなんてやらないだろう。となれば、塾の講師だって大人だから、当然ゲームの事なんか知らないんじゃないか。
「これ、まずいよな……」
「てゆーか、玉野の奴、最初から狙ってたんじゃねーの?」
読書感想文は多くの生徒が書けない。結果、一部の要領のいい生徒はインターネットにある情報を基に書こうとする。
中には「コピペサイト」なるものも存在していて、その通りに書けば誰でも「模範解答」になる。仮に夏休みの課題が、そのサイトに掲載されている文学作品であれば、何の問題もなかったはずだ。
しかし、今回の課題図書、というよりゲームはそうはいかない。
「お前、ひょっとして、ネットでゲーム感想文とか探した?」
「いや、まだだけど」
「やっぱりねえんだよ。これ、ホント玉野の策略だって、マジで」
スマホの先から、半泣き状態の稔の声が聞こえる。
まあ、そう言われてみればそうなのかもしれない。コピペサイトの作者だって、まさか学校の先生が夏休みにゲームをやって来いなんていうのを想定はしていないだろうから。
「とりあえずさ、塾に行って聞いてみるわ」
「頼むよ、まじヤバイって」
いや、ヤバいのはお前だけじゃないだろう。というより、俺に全て解決策を委ねようというのもどうなんだ……
しかし、勇斗にとって、今はそんな事考えている場合ではなかった。
「このままじゃ宿題が終わらない」
勇斗はすっかり足が遠ざかっていた塾に、久々に足を運ぶことにした。
「怒られなきゃいいけど……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる