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本編
LEVEL5 / ゲーム実況
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8月を過ぎると、勇斗はドラクエをほとんどプレイしなくなっていた。その代わりに夢中になっていたのがネット上の動画サイトだった。
インターネットがなかった昔と違い、今はゲームの攻略方法がネット上に氾濫している。それだけではない。レアなアイテムの存在場所から隠しストーリーに進む方法に至るまで、国内はもちろんのこと、世界中のプレイヤーがありとあらゆる方法で発見し、日々ネット上にその「戦果」を報告している。
とりわけプレイヤー自身が会話をしながらゲームをプレイする、いわゆる「ゲーム実況」は子供達にとって最も人気のあるジャンルの一つだ。
今の勇斗はほとんどドラクエをしていない。その代わりにパソコンやスマホで他人がドラクエをプレイしているゲーム実況動画を毎日、朝から晩まで眺めている。
ゲームはとっくにクリアし、そして多くのレアアイテムもゲットした彼、というより多くの子供達が興味を持つのは「どのゲームが楽しいか? 」ではなく、「どうやってゲームを楽しむか? 」であった。
「ついでにゲームの感想も文字にしてくれたらな~」
ゲーム実況で再生数を稼いでいるのは、子供よりはむしろ大人だ。もちろん、顔を出さずにプレイしている人もいるものの、実際にプレイしているのは勇斗と同じくらいの年代ではなく、それよりもずっと上、少なくとも大学生かそれ以上の人達が圧倒的に多いように思えた。
「この人達はゲーム感想文とか、書けるんだろうか? 」
勇斗はふと、疑問に思った。しかし今、そんなことを考えても意味はない。
もし仮に書けるとしても、それをネット上で「伝授」してくれなければ何の意味もない。少なくとも勇斗はそう思った。
▽
その日の夕方だった。平日にしては珍しく、午後6時半に父親の広王が帰宅していたため、7時の夕食は親子3人で一緒にとることとなった。
親子3人で、というと何か微笑ましい感じがするが、反抗期を迎えた勇斗にとって、父親の存在は必ずしも歓迎できる存在ではなかった。
現に食事が始まると開口一番、美香が広王に対し、勇斗がゲームばかりやっていること。それでも学校の課題だから大目に見ていたものの、最近はその「課題」すらせずに一日中、動画サイトばかり見ている現状を報告した。
すると広王はそれまでのにこやかな表情が一変、不機嫌な顔で勇斗を凝視する。それは親が子を、というよりはまるで上司が部下を呼びつける時のようだった。
「おい、ちゃんと宿題しろよ。あと勉強も」
「ったく、うっせーな! 」
「うるせーじゃないっ! ゲームが学校の宿題って聞いていたから我慢してだけど、全然やってないで遊んでばっかりじゃないか! 」
「課題やってんだよ! 感想文書かなきゃいけないんだよ! 」
「じゃあ、早く書け! 」
「すぐに書けるもんじゃないんだよ! 」
「だったら何で遊んでるんだ! 」
「遊んでんじゃねーよ! 調べてんだよ! 」
「全く、そうやって遊んでばっかいるくせに」
「だから、遊んでんじゃねーって言ってんだろ! 」
激しい口論が父子の間で繰り広げられた。
今日の夕食はカレーだ。既に皿にはカレーとご飯が盛られている。カレーは勇斗の大好物だし、それに今の気まずい状況でも、とにかく食べないと冷めたカレーがご飯に浸み込み、とても食べられた状態ではなくなってしまう。
しかし、勇斗は一口も手をつけることなく、さっさと席を立ち、逃げるように1階のリビングを出て行った。
「ざまあ見ろ! 」
片付けるにも片付けられないカレーを残し、せめてもの腹いせに満足した勇斗は自分の部屋に戻ると、さっそくスマホを手に取る。
「ゲーム感想文まじだりー」
稔に対し、LINEのメッセージを送信する。すると1分もしない内に返信が返ってくる。
「やってらんね~」
深い意味はない。ただお互い、現状を報告して何となく安心感を得たい。つまり「共感」というやつだ。
「で、塾はどうだった? 」
――そうだった。稔はネット上のコピペサイトには「模範解答」がないと言っていた。そして勇斗が、自分が塾へ通っていると話した際、塾の講師から感想文の書き方を教わるよう、頼んでいたのだ。
「塾、まじだりー」
「マジ? 塾だりーの? 」
だるいも何も、そもそも塾には行っていない。夏休みになればどこも夏期講習が始まっているが、まともに通っていなかった勇斗は結局、夏期講習には申込まなかった。
したがって、夏休みに入ってからは塾に一度も足を運んでいないのである。
そんなことも知らず、稔はしきりに勇斗に対して「塾の情報」を求めようとする。
正直、うんざりしていた。だが、もし稔が新たな情報を得たとして、そしてそれが「塾と同じ内容」だとしたら……そう考えると、ここで喧嘩をするのも正直、得策ではない。少なくとも勇斗にはそう思っていた。
それに稔の事だ。おそらく勇斗同様、ゲーム実況を見まくっているだろう。そして結局、感想文のヒントになるような情報も見つかっていないのだろう。
「俺が先か、それとも稔が先か……」
出来れば稔であってほしいな。少なくとも今の勇斗はそう思っていた。
インターネットがなかった昔と違い、今はゲームの攻略方法がネット上に氾濫している。それだけではない。レアなアイテムの存在場所から隠しストーリーに進む方法に至るまで、国内はもちろんのこと、世界中のプレイヤーがありとあらゆる方法で発見し、日々ネット上にその「戦果」を報告している。
とりわけプレイヤー自身が会話をしながらゲームをプレイする、いわゆる「ゲーム実況」は子供達にとって最も人気のあるジャンルの一つだ。
今の勇斗はほとんどドラクエをしていない。その代わりにパソコンやスマホで他人がドラクエをプレイしているゲーム実況動画を毎日、朝から晩まで眺めている。
ゲームはとっくにクリアし、そして多くのレアアイテムもゲットした彼、というより多くの子供達が興味を持つのは「どのゲームが楽しいか? 」ではなく、「どうやってゲームを楽しむか? 」であった。
「ついでにゲームの感想も文字にしてくれたらな~」
ゲーム実況で再生数を稼いでいるのは、子供よりはむしろ大人だ。もちろん、顔を出さずにプレイしている人もいるものの、実際にプレイしているのは勇斗と同じくらいの年代ではなく、それよりもずっと上、少なくとも大学生かそれ以上の人達が圧倒的に多いように思えた。
「この人達はゲーム感想文とか、書けるんだろうか? 」
勇斗はふと、疑問に思った。しかし今、そんなことを考えても意味はない。
もし仮に書けるとしても、それをネット上で「伝授」してくれなければ何の意味もない。少なくとも勇斗はそう思った。
▽
その日の夕方だった。平日にしては珍しく、午後6時半に父親の広王が帰宅していたため、7時の夕食は親子3人で一緒にとることとなった。
親子3人で、というと何か微笑ましい感じがするが、反抗期を迎えた勇斗にとって、父親の存在は必ずしも歓迎できる存在ではなかった。
現に食事が始まると開口一番、美香が広王に対し、勇斗がゲームばかりやっていること。それでも学校の課題だから大目に見ていたものの、最近はその「課題」すらせずに一日中、動画サイトばかり見ている現状を報告した。
すると広王はそれまでのにこやかな表情が一変、不機嫌な顔で勇斗を凝視する。それは親が子を、というよりはまるで上司が部下を呼びつける時のようだった。
「おい、ちゃんと宿題しろよ。あと勉強も」
「ったく、うっせーな! 」
「うるせーじゃないっ! ゲームが学校の宿題って聞いていたから我慢してだけど、全然やってないで遊んでばっかりじゃないか! 」
「課題やってんだよ! 感想文書かなきゃいけないんだよ! 」
「じゃあ、早く書け! 」
「すぐに書けるもんじゃないんだよ! 」
「だったら何で遊んでるんだ! 」
「遊んでんじゃねーよ! 調べてんだよ! 」
「全く、そうやって遊んでばっかいるくせに」
「だから、遊んでんじゃねーって言ってんだろ! 」
激しい口論が父子の間で繰り広げられた。
今日の夕食はカレーだ。既に皿にはカレーとご飯が盛られている。カレーは勇斗の大好物だし、それに今の気まずい状況でも、とにかく食べないと冷めたカレーがご飯に浸み込み、とても食べられた状態ではなくなってしまう。
しかし、勇斗は一口も手をつけることなく、さっさと席を立ち、逃げるように1階のリビングを出て行った。
「ざまあ見ろ! 」
片付けるにも片付けられないカレーを残し、せめてもの腹いせに満足した勇斗は自分の部屋に戻ると、さっそくスマホを手に取る。
「ゲーム感想文まじだりー」
稔に対し、LINEのメッセージを送信する。すると1分もしない内に返信が返ってくる。
「やってらんね~」
深い意味はない。ただお互い、現状を報告して何となく安心感を得たい。つまり「共感」というやつだ。
「で、塾はどうだった? 」
――そうだった。稔はネット上のコピペサイトには「模範解答」がないと言っていた。そして勇斗が、自分が塾へ通っていると話した際、塾の講師から感想文の書き方を教わるよう、頼んでいたのだ。
「塾、まじだりー」
「マジ? 塾だりーの? 」
だるいも何も、そもそも塾には行っていない。夏休みになればどこも夏期講習が始まっているが、まともに通っていなかった勇斗は結局、夏期講習には申込まなかった。
したがって、夏休みに入ってからは塾に一度も足を運んでいないのである。
そんなことも知らず、稔はしきりに勇斗に対して「塾の情報」を求めようとする。
正直、うんざりしていた。だが、もし稔が新たな情報を得たとして、そしてそれが「塾と同じ内容」だとしたら……そう考えると、ここで喧嘩をするのも正直、得策ではない。少なくとも勇斗にはそう思っていた。
それに稔の事だ。おそらく勇斗同様、ゲーム実況を見まくっているだろう。そして結局、感想文のヒントになるような情報も見つかっていないのだろう。
「俺が先か、それとも稔が先か……」
出来れば稔であってほしいな。少なくとも今の勇斗はそう思っていた。
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