もしも、夏休みの課題が「ドラクエのゲーム感想文」だったら…

hotelmo

文字の大きさ
28 / 45
本編

LEVEL25 / 私、ゲーム好きですから

しおりを挟む
 勇斗達が「合宿」を計画し始めた頃、月城陽菜つきしろはるなの母親である智恵子ちえこは嵯峨野ゲームスの本社にいた。

 目的は和久井が今度、出版する本の打ち合わせである。


 「はじめまして、嵯峨野ゲームスの和久井です」
 「こちらこそはじめまして。南北出版なんぼくしゅっぱんの月城です」

 挨拶あいさつが済むなり、早速両者は本題に入る。

 まず智恵子が今回、和久井が出版しようとしている著書ちょしょの仮タイトルの候補こうほを挙げた。


 『君はゲーム感想文を書けるだろうか?』
 『東大に受かりたければゲームをやりなさい』
 『カリスマYoutuberが教える凄い勉強法』
 『子供の才能を伸ばすゲーム活用術』

 目的は和久井の嵯峨野ゲームス、そして阪口塾のプロモーションである。


 「失礼致します」

 両者が本のタイトルの打ち合わせをしていると、嵯峨野ゲームスの社員と思われる男性が入ってきた。

 「お客様をお連れ致しました」
 「ありがとう。入ってもらって」

 男性に案内され、2人の人物が入ってくる。一人は阪口塾の代表取締役である阪口信昭さかぐちのぶあき。そしてもう一人は……


 「玉野先生じゃないですか!」
 「月城さん、何でここに?」
 「それはこっちの台詞です!」

 ――忘れもしない。去年の夏休み。

 娘の陽菜が提出した課題を「コピペした」と難癖なんくせをつけ、本人の言い分も聞かずに再提出を要求した男。そして、親の自分が抗議したにもかかわらず「娘の宿題を代行した」と、さらに言いがかりをつけてきたトンデモ教師……


 「帰って頂けますか?」
 「いや、いきなりそんなことを言われましても」
 「迷惑なんですよ!」
 「まあまあ、お二方とも落ち着いて」
 
 突然始まった、両者の争いに和久井も困惑気味である。しかしそんな彼のフォローを振り切るかのように、

 「和久井社長、これは一体どういうことですか?」
 「どうって、今日の打ち合わせに参加する方々ですよ」
 「そうじゃありません。一体彼は何ですか?」
 「何ですか……と言われましても」

 どうやら2人には何か因縁いんねんがあるらしい。だが、和久井はそんな因縁など知らない。


 「あ、そういえば」

 最初に南北出版から本を出さないかと打診だしんの電話があった時である。その時、学校の教師がひどい奴で何とかかんとか……って、そんな話をしてたような気がする。


 「とにかく落ち着いて下さいよ」

 和久井は確かに、今注目されているゲーム会社の社長だ。とはいえ、現在21歳の彼は外見がいけんだけ見れば「そこいらの兄ちゃん」なのである。

 そんな彼が、下手をすれば親と同じくらいの年齢の「大の大人が」顔を合わせるや否や、仕事そっちのけで口論を始める。いくら彼でも「はと豆鉄砲まめでっぽうをくらったかのように」唖然として見ているしかない。


 「とにかくですね、今日は私も含め、4人での打ち合わせです」

 その姿は、少なくともこれから本を出版しようとする著者ではない。というよりはむしろ、討論番組とうろんばんぐみの司会者か何かのようである。


 「今回、阪口社長。そして虎ノ口中学校の国語教諭きょうゆである玉野先生に来ていただいたのには理由があります」

 阪口社長が来る意図は分かるにして、何故一介いっかいの中学教師がこんな場所に来ているのだ……少なくとも今の智恵子の気持ちはそうであった。


 「私が説明しましょう」

 智恵子の気持ちを察したかのように、玉野が和久井に続く。

 「月城さん、私がゲームぎらいだと思いますか?」
 「当たり前です!」
 「何故ですか?」
 「あなたね、生徒のゲーム機を没収したでしょう?」
 「確かに、そうです」
 
 智恵子の怒りは一向に収まる気配を見せない。


 「それで、卒業するまで返さなかったとか!」
 「あれはですよ」
 「フィクション、何言ってるんですか?」
 「単なる「ハッタリ」です」
 「ですって?」

 一度振り上げてしまったこぶしは容易には下せない。しかし今の智恵子はまさしく「おろさざるを得ない」状況である。


 「それに私、ゲーム……なんですよ」
 「この後に及んで一体、何を言ってるんですか!」
 「いや、好き「だった」というべきでしょうか」

 玉野の子供の頃、ドラクエシリーズの1~5を中心にやり込んだ、いわば「ファミコン世代」だ。したがって、そんな彼がゲーム嫌いになるわけがない。

 むしろその逆。その前後の世代、というより今の生徒達よりも「ゲームに対する思いれ」が強い。


 「このような言い方は少々、不適切かもしれませんが……」

 ゲームは多くの子供達にとって有害だ。なぜならゲームは強力な中毒性ちゅうどくせいがあるからのだという。

 そしてその中毒性におかされ、「禁断きんだん症状しょうじょう」が悪化した挙句あげくに勉強、そして部活動を止めてしまった子も決して少なくない。


 「そんな大袈裟な!」
 「月城さん、大袈裟なんかじゃありません」

 彼自身、ファミコンに夢中になった世代の人間だからこそ、その恐ろしさを「誰よりも知っている」のである。

 「だからこそ、禁止すべきなんです」
 「でも、だからって没収は……財産権ざいさんけんの侵害じゃないですか!」
 「おっしゃることは分かります。でも」
 「でも?」

 多くの子供達はゲームに夢中になる。最初は10分のつもりが20分。そして30分……気付けば1時間、いや2時間を過ぎてしまっていることも不思議ではない。

 「ちゃんと勉強するなら」という条件で始めたにもかかわらず、当初の予定を大幅おおはば超過ちょうかしている。そして一向に止める気がない。親からすれば、明らかな「契約違反けいやくいはん」である。


 しかし……

 「出来る子は分かっているんです」
 「分かってるって?」
 「ゲームは毒にもくすりにもなるってことです」
 「どういうことですか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...