42 / 100
第二章 絆
第42話 お守り
しおりを挟む「…火東さん、だいぶパニックになっているわね。それで水崎さんは、私に連絡をくれたのね?」
「はい。黒木先輩の噂は前から知っていたので、先輩の連絡先を知っていそうな知り合いに片っ端から連絡して何とか教えてもらいました。急に連絡してしまって、すいませんでした」
「ふふっ、別に構わないわ。それより水崎さん、火東さんの言っていた窓の外の女の人に心当たりはあるの?」
「…いいえ。私も一緒にこっくりさんをやった友達も、女の人なんて見ていません。
それに華衣ちゃんから連絡があってから、直ぐに私は駆けつけたんです。多分、5分も経っていなかったと思います。でも華衣ちゃんの部屋の窓の外に女の人なんて居なかったし、それに… 華衣ちゃんの部屋は二階にあって、窓の外に女の人が居るなんて不可能だと思います。華衣ちゃんの部屋の窓には、ベランダも、屋根も無いので…」
ユウは水崎の話を聞いていて、なるほどオカルトチックになってきたなと感じた。このオカルト研究部に相談するのも納得な話だ。
「…大体の話は分かったわ。ありがとう、水崎さん」
紅葉はそう言うと、青葉をチラリと見た。すると青葉が、小さく首を左右に振る。
「…明日、火東さんに直接会ってみようかしら?ねえ水崎さん、もし明日になっても火東さんが学校に来なかったら、私を火東さんの家まで案内してもらえる?」
「あっ… は、はい!是非、お願いします!」
水崎はそう言ったものの、怯えた顔で話を続けた。
「…あの、黒木先輩。やっぱりこれって、こっくりさんの呪いなんですか?」
「水崎さん、大丈夫よ。正直に言うと、今の話だけでは判断は出来ないけれど、そうであってもなくても、私達が全力で手助けするわ。だから安心してくれていいのよ」
紅葉はそんな水崎に、優しい笑顔で答えていた。そしてその笑顔を受けた水崎は、安心したのか硬くなっていた表情をホッと緩めた。
「…はい。ありがとうございます、黒木先輩。私、先輩に相談に来てよかったです」
「ふふっ、まだ気が早いわよ。…そうだわ水崎さん、万が一の為にこれを持っていくといいわ。悪いモノから、持ち主を守ってくれるお守りなの。火東さんやお友達の分もあるから、是非渡してあげて」
そして紅葉は鞄から、人数分のお守りを取り出した。
「ありがとうございます!今日、華衣ちゃんに必ず届けます。それから友達にも渡しておきますね」
紅葉からお守りを受け取ると、水崎の表情にいつもの笑顔が戻っていった。
「それがいいわ。きっと安心するから」
「じゃあ私、早速これを届けてきます!華衣ちゃんに会えたら、明日のこと話してきます!もし駄目だったら家まで案内するので、明日は宜しくお願いします。また様子を連絡しますね!」
そう言い残し、水崎翔子は来た時とは別人の様に元気な様子で部屋を後にした。その足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ユウは口を開いた。
「さすがですね、先生」
「…何が、かしら?」
何か考え事をしていたのか、少し間を置いてから紅葉はユウに視線を向けた。
「ここに来た時はあんなに不安がっていた水崎が、帰る時には元気になっていました。それにそんなに効果があるお守りを、いつも持ち歩いているなんて凄いなと思って…!」
「ああ、あのお守り?確かにうちのお寺で御祈祷はしてあるけれど、500円で市販されている、ただのお守りよ。気休めにはなるかもしれないけれど、あまり効果は期待出来ないわよ」
さらりと言った紅葉の言葉に、ユウは絶句してしまう。
「…じゃあ先生は、水崎に嘘を言ったんですか!?」
少し言葉が荒くなった。
「別に嘘はついていないわ。少なくても安心することで、冷静にはなれるはずよ。今までの彼女達はパニックを起こしていた。ほんの些細な出来事ですら、呪いのせいじゃないかと思ってしまう位にはね」
しかし彼女の鳶色の瞳はどこまでも冷静だった。その視線を受けて、ユウも自分が冷静さを失いかけていた事に気が付く。
「…すみません、俺。自分自身も冷静さを失いかけていたんですね。それじゃあ一連の出来事は水崎達の気のせいってことですか?」
「ふふっ、如月君は気持ちの切り替えが早いわね。頼り甲斐がありそう。…そうね、その可能性が高いと思う。少なくても水崎さんには、悪霊の気配はしなかった」
……さっきの場面だ。
紅葉が青葉に視線を送り、青葉はそれに、いいえと応えていた。あの時に二人は、そのことを確認し合ったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる