アイドルを推してたつもりだったんだが??

はる

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推してたのはオタクだった

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『アイドルを推してたつもりだった』

──一般人による、尊死の記録。

最初は、ただの“箱推し”だった。
アイドルグループ〈LUCENT〉。
センターの如月天くんは、ビジュも、歌も、ダンスも完璧で、「スパダリ系王子」ってキャラ付けされてたけど──

ほんとは、ちょっと天然で、可愛くて、たまにヘラってるとこが、たまらなかった。

インタビューで「好きなタイプは……俺を振り回さない人」とか言ってたのに、
リアルではめちゃくちゃ他人に振り回されてそうな、あのギャップ。

そんな彼のファンでいられるだけで幸せだった。
……あの日までは。



「今日、人気配信者の海月さんとコラボします!俺がずっと推してた方です……やばいです……ほんとに無理……」

このポストを見た瞬間、ざわめいた。
天くんが推してた配信者……? 海月って、あの声で殺す系ストリーマー? めちゃ有名な。

「すごい、でも大丈夫? 推し、崩れ落ちない?」

って半分冗談だったのに、始まったコラボ配信の天くんは、
マジで崩れ落ちてた。



「え、え、え……!? マジで喋ってるんですか? 本物? え、声がやばい……尊死……」

「大丈夫? 深呼吸しようか」

「は、はい……(泣)」

──かわいい。

いや、推しが配信で泣くな。
でも、オタクとしては、これ……勝手に親近感……。

そのうち、海月さんの声が落ち着いてて、
すごくやさしくて、天くんが振り回してもちゃんと拾ってくれてて──

なんかもう、相性が……良すぎて……。



コラボ配信が終わったあと、X(旧Twitter)で話題になったのは“如月天のガチオタっぷり”だった。
でも私のタイムラインは、なぜか“このふたり、やばくない?”という声で埋まっていった。

その後の流れは、早かった。

・配信中、如月天が後ろを通り抜けた事件
・「おーい、くらげー、飲み物──あ」って言った声が天くんの地声だった事件
・マイクに拾われた「ちゅ」音事件

これ、全部リアルだよ?



私、如月天を推してたんです。
ひたすら、彼の努力と姿勢と、ちょっと不器用なところが好きで、
応援してたんです。

なのに──今、画像フォルダには、

・海月さんの低音で「天、カメラ入ってるよ」って言う音声切り抜き
・ふたりで同じマグカップを持った配信サムネ
・「そろそろ、推しから昇格してもいいですか?」の名言スクショ

が、増えていってる。

気づいたら、
「このふたりが幸せでありますように」
って、毎日祈ってる。



最初はアイドルを推してたのに。
いつの間にか、ふたりを推してた。

片方だけじゃだめで、
どっちかが笑うと、もう片方も嬉しそうで。
そういう空気感ごと、全部ひっくるめて愛おしくて──

今はただ、
「公式になれ!!!!」って心から思ってる。

いやもう、なってるのか?なってるよね?(確信


閑話休題



推しの交際を認めたわけじゃない。
けど、事実があまりに供給過多で、
もはや我々は「応援」という名の巡礼を始めた。



【事実1】如月天、私服が明らかに海月のシャツ
【事実2】海月、朝の配信で「最近、横に人がいるからうるさくできない」発言
【事実3】ふたりの背景、明らかに同じカーテン(しかも柄が絶版)
【事実4】マグカップが“ペア”なのに、それぞれの配信で片方ずつ登場
【事実5】天くんのライブMC「“推し”って言葉、いいよね。自分が言われるより、言う方が好き」



──オタクたち、発狂。

《Xのファンたち》
• 推しって言葉……海月さんのことだよね……?(確信)
• カーテンの柄で恋の証明するのバカすぎて最高
• マグカップ、公式グッズ出してください(泣)
• これが……真の“供給過多”……
• 2人を推すって、こんなに幸せなんだね……



もともとは「如月天が好き」だった。
でも、海月さんと並んだ時の表情のやわらかさを知ってしまった。

推しが、推しのままで笑ってる。

“彼にしか見せない顔”を見てしまった。

──沼だった。



あの事件以来、ファンの中ではすっかり定着した呼び名がある。

『天月供給(てんくら供給)』

※公式ではない。非公式です。非公式なのに供給されすぎている。



この前なんて、
天くんの新曲がリリースされた直後、
海月さんが配信でBGMに使ってた(※権利OKのやつ)

リスナーが騒ぐ中、本人は一言。

「良い曲だよね。好きな人が歌ってるからってのもあるけど」

チャット欄が爆散した。



私たちは知ってる。
匂わせじゃない、あれは愛。

堂々と、堂々と
お互いを見てるその姿に、もう一周まわって清々しさすら感じる。



最初は、天くんひとりを推してた。

でも今は、
海月さんとふたりで、
並んでいるその姿が、
**私の“推し”**になった。



お願いです。
どうか、
これからもそのままでいてください。
供給も、愛も、全部受け止めます。
むしろ見せてください。
人生の特等席、オタクが確保してます。










事件はある日、海月の投稿から始まった。

《海月》

こいつ、人のマウスに乗ってきて邪魔してくる……

添付された画像には、
黒ぶち模様の小さな猫が、手元にぴったり張り付いている写真。

それだけならただの癒し投稿だった。

──だが数日後。

如月天のオフショットに、同じ柄の猫がうっすら写り込む。

Xが爆発する。
• 柄一致
• 耳のかたち一致
• キャットタワーの形も一致
• そもそも「猫飼いたい」って言ってたの、どっちも今年の春頃

最終的に、

《Xにて》

たぶん共同親権。
っていうか、もうそれでいい。
それがいい。


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