不死身のボッカ

暁丸

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とある爺さんの異世界転生

管理神はポンコツ揃い 2

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 「ふぅん…転移魔法は無いんだ……」

 長谷川さん(故人)の呟きに「んっ?」と首を捻った管理神は、ややあって気が付いた。

 「あ!妙に熱心に聞いてると思ったら、私を疑ってましたね?」
 「嘘はつかなくても、情報を隠すぐらいはやるだろうな、と」
 「神を疑う事なかれ!ですよ」
 「ゴッドフリーダムな日本人の、特にオタには通じないよ、それ……」
 「そうでした…」

 管理神はがっくりと膝を着く。
 ゲームやら何やらの影響で、ギリシア神話だけでなく、北欧からエジプト、果てはスラヴ神話だのケルト神話だののマイナーな神様まで知ってる上に、異世界転生小説なんか読んでいると、神様は崇める存在ではなくロクでもない存在という想いが強くなる。説明が楽な反面、手の内を知られているという面があるのは仮にも『神』なら考慮しておくべきだった…。

 「くっ。ま、まぁいいです……。でも、言った通りで嘘はありませんよ。転移魔法は正直チート中のチートなんで、さすがに勇者にも付与できませんでした。空間跳躍できたら何でもありになっちゃいますからね」
 「ある意味無敵モードだもんねぇ」

 長谷川さん(故人)はうんうんと頷く。もっとも、魂だけの存在なので傍目には全然わからないのだが。

 「で、そこからどうなって世界の破滅に繋がるのさ?」
 「……きっかけは、隠棲した勇者の元にエルフとドワーフの犯罪者が預けられた事です。二人とも王国で犯罪した訳ではないので罪に問う訳にもいかず、かといって二人とも種族の中でも抜きん出た力を持った魔法剣士と賢者でして野放しにもできず、抑えられるのは勇者しかいないって預けられたんですが…」
 「物騒すぎだろ、エルフとドワーフ」
 「タチが悪い事に、この三人が意気投合しちゃいまして」
 「混ぜるな危険!」
 「ドワーフの賢者ってのが、俗に言う『禁呪』の類だろうと躊躇なく実行するようなタガの外れた人だったもんで、勇者が死者を黄泉帰らせたいというのを聞いて、率先して協力し始めたんです」
 「え?ザオリクとかカドルトのある世界なの?」
 「ありませんよ。前言った通り、死んだら魂は環に戻ります。ですが勇者は『インベントリ』を持ってたんですが、何をどうしたんだかそこに死んだお孫さんの魂を収納してたんです」
 「えぇ?どうやって?」
 「物体以外入らないはずなのに、正直『管理神』にすら判りません。ほんと、デタラメな人なんで」
 「本当に主人公気質だねぇ…」

 と、突然長谷川さん(故人)はすさまじく嫌な予感がしてきた。

 「…まさか…ラスボスは闇落ちした勇者…とかか?!」

 視線を逸らしてきまり悪そうに黙っていた管理神は、しばらく経ってからようやく頷いた。

 「そういうことです。三人がかりで死者の呼び戻しをやったんですが、この世界の理外の事を有り余る魔力で無理やりやったせいか、結果的に出来上がったのお孫さんの姿をした怪物で、しかも勇者の力を持ってしても殺す事のできない不死身のバケモノになってしまいました。アンデッドですら無い『何か』だったんです。絶望した勇者は、直径10kmばかりの小惑星を召喚して自分諸共お孫さんにぶつけたら、この星も破滅しちゃいました」
 「破滅しちゃったのかよ!。破滅しちゃった世界を俺にどーしろと?」
 「で、2回目は」
 「…待て、待て、待て、2回目ってなんだ?」
 「破局はマズイってんで、リセットしたんですよ」
 「リセ……」

 長谷川さん(故人)は、一瞬気が遠くなった。魂だけになっても眩暈はするらしい。

 「さすがに理外の出来事だったんで、特別に許可が下りました。って言っても、直接介入はなるべく控えるようにと釘を刺されていますので、ちょっとした啓示を与えてルートを変えさせています。三人は自分達だけでの死者蘇生を諦めて、魔神の手を借りる事になります。ですが、根回しも無しに正面から彼らの住む次元への扉を強引に切り開こうとしたもんで、いろいろ勘違いした魔神たちと全力を出しての戦争になっちゃいまして、その勢いで世界滅亡に……」
 「………」

 長谷川さん(故人)は無言のままだ。いい加減、ツッコミをする気力も残っていない。

 「3回目は、啓示を与えたおかげて今度は魔神をどうにか交渉の席に着ける事ができて、お孫さんの姿を再現したホムンクルスに、保管していた魂を定着させることができたのですが……」
 「が?」
 「生前と変わらないお孫さんを見た王が嫁に寄越せと言い出して、ブチ切れた勇者と衝突した挙句、巻き添えでお孫さんが亡くなり……」
 「……ちょっと待て、孫って孫娘だったのか?」
 「行間読んだら判るでしょうよ」
 「判るか。どこをどうやったら持ち場死守して頭カチ割られたのを娘だって思うんだよ」
 「母親もそうだったし、祖母が女剣士だったじゃないですか?」
 「あ、そうか…って…え?それで納得していいのか?」
 「ファンタジー風の世界なので、女性も戦う世界だってことですね。ちなみに性別適正があって、魔法使いは女性の方が強力になるんですが、勇者の血か祖母の血のせいか、お孫さんも母親も肉体言語の使い手でした」
 「あぁ…うん…はい…」
 「とにかく、お孫さんは幼少の王の心にものすごいインパクトを残しちゃったらしく、生きてると判った瞬間、見境が無くなりました」
 「勇者含めて揃いも揃って脳筋すぎだろ…。それにしたって、前半のザ・勇者な鮮やかさに比べて、後半のグダグダさ加減はなんなん、これ」

 呆れ気味の長谷川さん(故人)だが、管理神の声は少しだけ悲しみと同情が込められていた。

 「壊れちゃったんですよ。星を砕くほどの勇者が、ただ3人の家族すら守ることができなかったせいで。……勇者はそれまで残酷とは無縁の人だったんですが、娘夫婦と孫を手にかけた連中…公爵の戦士長とお抱えの魔法使いですが…は、無力化された後生きたままこれくらいの(とバケツくらいの大きさを両手で示した)の青銅の花瓶に、首だけ残して身体を押し込まれて殺されてます」
 「うえ、リアルT〇makか。そら兵士も逃げ出す訳だわ…」
 「取り出す事もできないので、そのまま晒されてそのまま埋葬されましたよ」
 「グダグダの理由は判ったけど、やり直しができるなら、勇者の家族が死ぬ前に戻せばいいと思うんだが…………」
 「いやその…勇者が隠棲した時点で、一段落ということで上書きセーブしちゃってまして……」
 「……」

 長谷川さん(故人)はがっくりと肩を落とした。魂だけなので落とす肩は無いのだが。

 「そもそもやり直しの許可が下りる事自体が異例なんですよ、だから逐次セーブが基本なんですよ」

 タイムスタンプ付けて保存は当たり前の長谷川さん(故人)からしたら、必死に言い訳する管理神はマヌケもいい所だが、確かに言われてみればゲームっぽいシステムではあってもゲームではないから仕方ないのだろう。

 「……あぁまぁ…ネトゲやWizに比べたら、セーブデータがあるだけまだマシか…そもそもリアル世界にセーブもやり直しも無い訳だし」
 「その後4回目以降もやり直したのですが、お孫さんが途中で死ぬ事になって勇者がボカンのラストを繰り返し続けています」
 「惑星を巻き添えに自殺できるって、すげぇ迷惑だな……」
 「そうこうしてるうちに、無理にリセットを繰り返したせいか、お孫さんの魂が不完全な状態になってしまい、このままでは目覚めませんし、目覚めても廃人です。そうしますと、勇者が「ムシャクシャしたので滅ぼした」になる可能性が大ですので、彼女の魂に近いあなたに協力してもらって、欠けた魂の補助をしていただこうかと」

 長谷川さん(故人)は、魂のまま盛大な溜息をついた。
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