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勇者の孫にTS転生した。今更やり直しを要求してももう遅い
古龍種を除く全ての地上・飛行魔獣を撃破出来ます
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「よお~し、んじゃ出来上がったら訓練して、そしたら出発だ。獲物は見繕ってあるから、いつでも出られるように用意しとけよ」
げんなりしているウルスラを横目に、トールは上機嫌で屋敷に戻って行った。
「どうしてこうなった…」
「まぁ、トールがああなったら止められん。諦めろ」
(なんだか、コイツに慰められるとそれだけで負けのような気がしてくる…)
などと割と酷い事を考えているウルスラだが、もちろん表情には出さない。
「で、弩の作りなんだが…」
そう言って何気ない風に近づいて来たシリオンは、声を落として耳元でささやいた。
「お前の話にあった『銃』は作らんのか?」
ギクリとしたウルスラはシリオンを見て、それからそっと視線だけ動かしてトリスキスを見た。視線に気づいたトリスキスはにっこり微笑むと、ゆっくりと的の人形や剣を片付け始めた。聞く気満々、会話は完全に筒抜けらしい。
「……似たような武器ってあったりする?」
ウルスラは明後日の方を見たまま小声で話す。
まるっきり新規の技術だと論外だ、正体がバレかねない。ただ、過去に結構な人数が召喚されているっぽいので、知識を持っていた先達がいた可能性はある。
「只人の国でだいぶ昔に普及が試みられた。蛮族に蹂躙されてた頃だな。ただ、量産化が上手くいかず、その間に魔法使いの数を揃えられるようになると、魔法に対して優位点が無いという事で廃れた。それに、弓も魔法付与すると銃に遜色ない威力だしな」
予想通り、銃を配備しようとした転生者はいるらしいが、ほとんど忘れられているようだった。
「銃の利点は、威力より誰でも使えて修練が簡単って点なんだけどね」
「本体もだが、何より火薬に手間がかかり過ぎる。それに、修練に関しちゃ弩でも同じだしな。お前が弩を選んだ理由もそれだろ?」
「まぁね。銃はねぇ…確かに浪漫があるけど……勇者の孫のわたしが、現在普及してない銃なんて提案したらさすがにまずいでしょ。作りたいなら、新種の弩って事で提案してくれてもいいよ?わたしの発案じゃ無きゃ大丈夫でしょ」
「詳細な構造や製法を知らないとさすがに作るのに時間かかるな。説明できるのか?」
「ある程度なら。文献で見ただけで細かいコツなんて知らないから、それが実際の製造にどれだけ役立つかはなんとも…」
「そうか…。まぁ、なる早と言われたし、とりあえずは普通の弓で飛ばす弩を作って付与をかけるか」
「あ、早めに練習開始したいんで、付与とか無くていいから一番単純なのを作ってよ。あんまり爺ちゃんを待たせる訳にもいかないので」
「判った。………しかしなんだな…」
「?」
「お前、普通に勇者の孫みたいな事言えるんだな」
「そりゃ、勇者の孫なんだから当たり前だろ」
「そういう事にしておくか」
割と際どい話をしている自覚はあるので横目でトリスキスを見ると、手が止まっている。二人の会話を吟味しているのだろう。
(まぁ、別人とバレても今更だしなぁ…)
勇者を笑顔にするという目的は変わっていない。だから、ウルスラはあんまり気にしない事にした。言葉は交わさなくても、三人は既に共犯者なのだから。
練習用の弩は程なく出来上がった。銃床はほぼ直線の最も単純な形だ。それでも滑らかに動く機関部を隙間から覗くと、弦を保持したり開放したりの可動部には綺麗に巻かれたバネが付けられているし、安全装置が二つも…逆鈎と引鉄をそれぞれロックする…付いていた。(『一番単純なの』じゃなかったんかい!)と思うウルスラだが、工匠である岩人にしたら、誇りにかけてこれが最低限のクオリティなので仕方ない。
人間なら先端に鐙を付けて足をかけて両手で引くような強弓だが、この屋敷の住人はシリオン以外は片手の腕力だけで引けたりする(なお身長の足りないシリオンは、足をかけたとしても引けない)。こんな短時間でどうやって作ったんだか、太矢も大量についていたので、立射、膝射、伏射、仰向けと色々試して、リハビリと弩の改良のフィードバックする事ができた。
試して判ったが、確かにこの身体と弩の相性は良かった。そこそこ大型の弩だが重さは感じないし、意識して関節を固めれば、長時間微動だにせず構える事ができる。強力な弦も片手で引く事ができるから、速射は弓にも劣らない。それに目の性能がかなり良いのも狙撃向きと言えた。照準用の目当(照星と照門)もウルスラの希望で改修した結果、止まった的ならかなりの精度で命中を得ることができるようになっている。動く的にはまだ確実に当たると言い切れないが、もう少し身体の制御に慣れれば精度を上げることが可能だろう。
問題が無いわけではない。
肌の感覚が一切ないから、風を感じる事ができない。遠距離射撃では大きな問題になるかもしれない。シリオンは、「矢に付与してどうにかするか…」という、なんでも魔法で解決する岩人らしい見解だった。
弦の強さにウルスラの皮膚が耐えられないという問題も発生した。ウルスラの顔は、擬獣(シェイプシフター)の革が金属の筋肉の上に貼られている。機械技術と擬態魔法の合わせ技が、人間に近い風貌や質感、表情を可能にしているのだ。屋敷の外に出るためには手も偽装しなければならない…という事で、手にも偽装用の革を貼ってみたのだが、弓掛を付けても弦を引くと擬獣の表皮はあっという間に痛んでしまったのだった。やむなく、手袋形式にして戦闘用と生活用を使い分ける事になった。
細かな問題は出たものの、向上が絶望的な剣術に比べたら随分マシだ。
……ただし、練習用とはいえこの弩には根本的問題があったのだが…
練習でウルスラが矢を放った瞬間に、的の前にトールが割り込んで来た。
「あっ!」
…と思う間も無く、トールは抜き打ちの剣で太矢を弾くと「もう一丁来い!」と笑顔で要求する。
「いやいやいや、何考えてんの!。爺ちゃんを的にできないよ!」
「今の見ただろ、勇者を舐めんじゃねーよ。それに即死しなきゃ一瞬で治せるから心配すんな!」
叫び返したが勇者はどこ吹く風だ。トールは平服で防具も付けていない。(当たり所悪くて即死したらどーすんの!)と思うウルスラだが、本人が上機嫌なんだからそれで死んでも本望なのかもしれない。ウルスラがビクビクしながら矢を放つと、トールはそれを同じように弾いて「どんどん撃ってこいや!ここだここ!!」とさらに上機嫌で自分の胸をドンと叩く。立て続けに放たれた矢を残らず弾いたトールは、挙句に最後は矢を手で掴み取ってしまった。
「どうだ?動く人間に当てる感覚は掴めたか?」
「あ、はい…」
自分を的にしたのは、勇者の心遣いだったらしい。
(いきなりでびっくりしすぎて覚えてねーよ)と思ったウルスラだが口にはしなかった。
「それと、その弩じゃ俺みたいなのには通用しないって判っただろ?。おいシリオン、実用のはもう少しマシな威力なんだろな?」
その上で、どうやらトールは練習用の弩で射的に興じるようなウルスラを心配したようだった。平和な現代日本で暮らしたウルスラにはこれでも凶悪な代物に思えたが、この程度の弩では普通の人間相手はともかく、人外の怪物には通用しない。それはそうだ、この屋敷の住人が片手で労せず引ける弓なのだから。それは逆に言えば、勇者やトリスキスやウルスラが、自分の腕で槍でもブン投げた方がよほど強いのだ。『実戦では役に立たない練習用の弩で満足してるんじゃねぇよ』…と言いたいのだろう。
「あぁ、なるたけ強力なのだろ?判ってるよ」
釘をさされた形のシリオンは、そう言って肩をすくめると仏頂面で工房に引込んだ。練習用の急増品とはいえ、自作を目の前で腐されるのはあまりいい気分では無いのだろう。
ただまぁ、シリオンにこんな発破のかけ方をするとどうなるかと言えば……
「なんスかこれ?」
「弩だが」
「……デカすぎない?」
数日後に出来上がって来たのは…モロにモン〇ンのヘビィボウガン?と言いたくなるような巨大な弩だった。トールに煽られたシリオンは、使い勝手などは二の次でただひたすら威力を追求してきたらしい。どこぞの鉄塊みたいな大剣とか、男爵の名前の大砲とかと同じコンセプトと言える。
「竜鱗を撃ち抜けるのがご所望だったんでな…」
「え……魔獣狩りって…竜狩るの?」
(いきなり竜種狩りとか無謀だっての!)という内心の焦りでキョドりそうになった。この世界にどんな竜が居るのか判らないが、ウルスラの中の人は亜空間タックルと往復這いずりがトラウマになって、魚竜種は大嫌いだ。もしそんなのが相手だったら、有無を言わせずダッシュで逃げる自信があった。
だがトールは笑いながら首を振った。
「威力の例えだ。竜の鱗が抜けるんなら大概の魔獣に通用するからな。竜は散々ブチのめしてやったら泣いて詫び入れて来た。もう滅多なことじゃ中原まで飛んでこねぇよ、安心しろ」
「うわ~…」
思わず呆れたような声が出てしまった。この爺さんは「鬼哭隊」ならぬ「竜哭隊」らしい。
「こいつの威力は保証する。……まぁ、当たらなければどうしようも無いがな」
ウルスラの脳裏に『戦艦並みのビーム砲』という言葉が浮かんですぐ消えた。シリオン自身は威力全振りのコンセプトにあまり満足していないのだろう、威力自慢はしてもため息半分だった。確かにこれは恐ろしく使いづらそうだ、練習用の弩とは何もかもが違いすぎる。今までの練習が全部が無駄とは言わないが、この弩を自由に扱って当てられるようになるには、相応の訓練が必要だろう。
そして、こんなバカげた武器が必要な魔獣を狩りに行く…という事なのだ。きちんと当てられるようにならなければ、冗談抜きで犠牲を出しかねない。
「練習しなおすよ……少し時間をちょうだい」
声はいつになく真剣だった。
ウルスラはちょっと遊び半分になりかけていた気持ちを改め、『魔獣狩り』という冒険に真摯に挑もうと決めた。
げんなりしているウルスラを横目に、トールは上機嫌で屋敷に戻って行った。
「どうしてこうなった…」
「まぁ、トールがああなったら止められん。諦めろ」
(なんだか、コイツに慰められるとそれだけで負けのような気がしてくる…)
などと割と酷い事を考えているウルスラだが、もちろん表情には出さない。
「で、弩の作りなんだが…」
そう言って何気ない風に近づいて来たシリオンは、声を落として耳元でささやいた。
「お前の話にあった『銃』は作らんのか?」
ギクリとしたウルスラはシリオンを見て、それからそっと視線だけ動かしてトリスキスを見た。視線に気づいたトリスキスはにっこり微笑むと、ゆっくりと的の人形や剣を片付け始めた。聞く気満々、会話は完全に筒抜けらしい。
「……似たような武器ってあったりする?」
ウルスラは明後日の方を見たまま小声で話す。
まるっきり新規の技術だと論外だ、正体がバレかねない。ただ、過去に結構な人数が召喚されているっぽいので、知識を持っていた先達がいた可能性はある。
「只人の国でだいぶ昔に普及が試みられた。蛮族に蹂躙されてた頃だな。ただ、量産化が上手くいかず、その間に魔法使いの数を揃えられるようになると、魔法に対して優位点が無いという事で廃れた。それに、弓も魔法付与すると銃に遜色ない威力だしな」
予想通り、銃を配備しようとした転生者はいるらしいが、ほとんど忘れられているようだった。
「銃の利点は、威力より誰でも使えて修練が簡単って点なんだけどね」
「本体もだが、何より火薬に手間がかかり過ぎる。それに、修練に関しちゃ弩でも同じだしな。お前が弩を選んだ理由もそれだろ?」
「まぁね。銃はねぇ…確かに浪漫があるけど……勇者の孫のわたしが、現在普及してない銃なんて提案したらさすがにまずいでしょ。作りたいなら、新種の弩って事で提案してくれてもいいよ?わたしの発案じゃ無きゃ大丈夫でしょ」
「詳細な構造や製法を知らないとさすがに作るのに時間かかるな。説明できるのか?」
「ある程度なら。文献で見ただけで細かいコツなんて知らないから、それが実際の製造にどれだけ役立つかはなんとも…」
「そうか…。まぁ、なる早と言われたし、とりあえずは普通の弓で飛ばす弩を作って付与をかけるか」
「あ、早めに練習開始したいんで、付与とか無くていいから一番単純なのを作ってよ。あんまり爺ちゃんを待たせる訳にもいかないので」
「判った。………しかしなんだな…」
「?」
「お前、普通に勇者の孫みたいな事言えるんだな」
「そりゃ、勇者の孫なんだから当たり前だろ」
「そういう事にしておくか」
割と際どい話をしている自覚はあるので横目でトリスキスを見ると、手が止まっている。二人の会話を吟味しているのだろう。
(まぁ、別人とバレても今更だしなぁ…)
勇者を笑顔にするという目的は変わっていない。だから、ウルスラはあんまり気にしない事にした。言葉は交わさなくても、三人は既に共犯者なのだから。
練習用の弩は程なく出来上がった。銃床はほぼ直線の最も単純な形だ。それでも滑らかに動く機関部を隙間から覗くと、弦を保持したり開放したりの可動部には綺麗に巻かれたバネが付けられているし、安全装置が二つも…逆鈎と引鉄をそれぞれロックする…付いていた。(『一番単純なの』じゃなかったんかい!)と思うウルスラだが、工匠である岩人にしたら、誇りにかけてこれが最低限のクオリティなので仕方ない。
人間なら先端に鐙を付けて足をかけて両手で引くような強弓だが、この屋敷の住人はシリオン以外は片手の腕力だけで引けたりする(なお身長の足りないシリオンは、足をかけたとしても引けない)。こんな短時間でどうやって作ったんだか、太矢も大量についていたので、立射、膝射、伏射、仰向けと色々試して、リハビリと弩の改良のフィードバックする事ができた。
試して判ったが、確かにこの身体と弩の相性は良かった。そこそこ大型の弩だが重さは感じないし、意識して関節を固めれば、長時間微動だにせず構える事ができる。強力な弦も片手で引く事ができるから、速射は弓にも劣らない。それに目の性能がかなり良いのも狙撃向きと言えた。照準用の目当(照星と照門)もウルスラの希望で改修した結果、止まった的ならかなりの精度で命中を得ることができるようになっている。動く的にはまだ確実に当たると言い切れないが、もう少し身体の制御に慣れれば精度を上げることが可能だろう。
問題が無いわけではない。
肌の感覚が一切ないから、風を感じる事ができない。遠距離射撃では大きな問題になるかもしれない。シリオンは、「矢に付与してどうにかするか…」という、なんでも魔法で解決する岩人らしい見解だった。
弦の強さにウルスラの皮膚が耐えられないという問題も発生した。ウルスラの顔は、擬獣(シェイプシフター)の革が金属の筋肉の上に貼られている。機械技術と擬態魔法の合わせ技が、人間に近い風貌や質感、表情を可能にしているのだ。屋敷の外に出るためには手も偽装しなければならない…という事で、手にも偽装用の革を貼ってみたのだが、弓掛を付けても弦を引くと擬獣の表皮はあっという間に痛んでしまったのだった。やむなく、手袋形式にして戦闘用と生活用を使い分ける事になった。
細かな問題は出たものの、向上が絶望的な剣術に比べたら随分マシだ。
……ただし、練習用とはいえこの弩には根本的問題があったのだが…
練習でウルスラが矢を放った瞬間に、的の前にトールが割り込んで来た。
「あっ!」
…と思う間も無く、トールは抜き打ちの剣で太矢を弾くと「もう一丁来い!」と笑顔で要求する。
「いやいやいや、何考えてんの!。爺ちゃんを的にできないよ!」
「今の見ただろ、勇者を舐めんじゃねーよ。それに即死しなきゃ一瞬で治せるから心配すんな!」
叫び返したが勇者はどこ吹く風だ。トールは平服で防具も付けていない。(当たり所悪くて即死したらどーすんの!)と思うウルスラだが、本人が上機嫌なんだからそれで死んでも本望なのかもしれない。ウルスラがビクビクしながら矢を放つと、トールはそれを同じように弾いて「どんどん撃ってこいや!ここだここ!!」とさらに上機嫌で自分の胸をドンと叩く。立て続けに放たれた矢を残らず弾いたトールは、挙句に最後は矢を手で掴み取ってしまった。
「どうだ?動く人間に当てる感覚は掴めたか?」
「あ、はい…」
自分を的にしたのは、勇者の心遣いだったらしい。
(いきなりでびっくりしすぎて覚えてねーよ)と思ったウルスラだが口にはしなかった。
「それと、その弩じゃ俺みたいなのには通用しないって判っただろ?。おいシリオン、実用のはもう少しマシな威力なんだろな?」
その上で、どうやらトールは練習用の弩で射的に興じるようなウルスラを心配したようだった。平和な現代日本で暮らしたウルスラにはこれでも凶悪な代物に思えたが、この程度の弩では普通の人間相手はともかく、人外の怪物には通用しない。それはそうだ、この屋敷の住人が片手で労せず引ける弓なのだから。それは逆に言えば、勇者やトリスキスやウルスラが、自分の腕で槍でもブン投げた方がよほど強いのだ。『実戦では役に立たない練習用の弩で満足してるんじゃねぇよ』…と言いたいのだろう。
「あぁ、なるたけ強力なのだろ?判ってるよ」
釘をさされた形のシリオンは、そう言って肩をすくめると仏頂面で工房に引込んだ。練習用の急増品とはいえ、自作を目の前で腐されるのはあまりいい気分では無いのだろう。
ただまぁ、シリオンにこんな発破のかけ方をするとどうなるかと言えば……
「なんスかこれ?」
「弩だが」
「……デカすぎない?」
数日後に出来上がって来たのは…モロにモン〇ンのヘビィボウガン?と言いたくなるような巨大な弩だった。トールに煽られたシリオンは、使い勝手などは二の次でただひたすら威力を追求してきたらしい。どこぞの鉄塊みたいな大剣とか、男爵の名前の大砲とかと同じコンセプトと言える。
「竜鱗を撃ち抜けるのがご所望だったんでな…」
「え……魔獣狩りって…竜狩るの?」
(いきなり竜種狩りとか無謀だっての!)という内心の焦りでキョドりそうになった。この世界にどんな竜が居るのか判らないが、ウルスラの中の人は亜空間タックルと往復這いずりがトラウマになって、魚竜種は大嫌いだ。もしそんなのが相手だったら、有無を言わせずダッシュで逃げる自信があった。
だがトールは笑いながら首を振った。
「威力の例えだ。竜の鱗が抜けるんなら大概の魔獣に通用するからな。竜は散々ブチのめしてやったら泣いて詫び入れて来た。もう滅多なことじゃ中原まで飛んでこねぇよ、安心しろ」
「うわ~…」
思わず呆れたような声が出てしまった。この爺さんは「鬼哭隊」ならぬ「竜哭隊」らしい。
「こいつの威力は保証する。……まぁ、当たらなければどうしようも無いがな」
ウルスラの脳裏に『戦艦並みのビーム砲』という言葉が浮かんですぐ消えた。シリオン自身は威力全振りのコンセプトにあまり満足していないのだろう、威力自慢はしてもため息半分だった。確かにこれは恐ろしく使いづらそうだ、練習用の弩とは何もかもが違いすぎる。今までの練習が全部が無駄とは言わないが、この弩を自由に扱って当てられるようになるには、相応の訓練が必要だろう。
そして、こんなバカげた武器が必要な魔獣を狩りに行く…という事なのだ。きちんと当てられるようにならなければ、冗談抜きで犠牲を出しかねない。
「練習しなおすよ……少し時間をちょうだい」
声はいつになく真剣だった。
ウルスラはちょっと遊び半分になりかけていた気持ちを改め、『魔獣狩り』という冒険に真摯に挑もうと決めた。
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