異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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7章 家族みんなで冒険譚3 エルフェリアで過ごす夜

555 休止 (改)

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 アウターの人工発生を試したい。

 そう聞いたロイ殿下とゴブトゴさんは、驚愕の声を上げることすらなく、聞くんじゃなかったぁ~という表情で固まってしまった。


 いやぁこの段階で聞いておいた方がいいと思うんだよ?

 王国への報告に関わらず、既に着手する気満々だしね?


「一応私利私欲でこんなことを言っているつもりはないんだけどね。お2人がどう感じるかは自由だし、俺の考えを否定されても気にしないよ」

「……済まぬダン殿。ちょっとだけ待ってくれるか?」

「へ? うん、構わないよ」


 頭を抱えながらもゆっくりと立ち上がったゴブトゴさんは、部屋の外に出て廊下でひと言ふた言会話してから戻ってきた。

 会話の内容は聞こえなかったけれど、スケジュールを変更したっぽいな。


「待たせたな。私個人でこなす予定の仕事を別日に回していたのだ。これでもう少し時間が確保できた」

「時間を作ってもらって申し訳ないね。俺としては出直しても構わなかったんだけど」

「……ここまで聞かされておいて、日を改められたら逆に困るからな? それではまず、アウターを人工的に発生させようなどと思った動機から伺おうか」


 聞く態勢を整えてくれたゴブトゴさんに遠慮しても仕方ないので、アウターを作り出そうとした流れを1から説明する。


 発端は、エルフェリア精霊国のアウターを俺達の手で消滅させてしまったこと。

 次に、呼び水の鏡でアウター化した元開拓村や聖域の樹海を調査した結果、アウターは人工的に生み出せる可能性に思い至ったこと。

 そして3つ目に、急激に増え続ける魔物狩りの数を分散しなければ、アウターエフェクトやイントルーダーが量産されてしまう可能性を示唆する。


 俺の話が終わった後、ゴブトゴさんは無言で立ち上がり、アーティザンスウィートを木製のグラスに入れて無言でロイ殿下に差し出した。


「……貰い物ですがどうぞ。酒でも飲まねばやってられんでしょう?」

「……ははっ。まさかこの俺が、ゴブトゴに酒を勧められる日が来ようとはね」


 力無く微笑んだ後グラスを受け取ったロイ殿下は、ゴブトゴさんと軽くグラスを合わせる。

 そして2人仲良くグイッと一気にアーティを呷った。


 流石に俺には酒を振舞ってはもらえない模様。

 ま、野郎共と酒を飲もうとは思わないけどさ。


「まずのっけからぶっ飛んでるんだけど……。ダンさんってアウターを消滅させちゃってるの?」

「不可抗力だけどねー。組織レガリアのトップがアウターと同化しちゃってさぁ。その魔物を滅ぼしたらアウターとエルフェリアの約8割の森林地帯も消滅しちゃったんだ」

「……そんなに気軽に語っていい内容ではないと思うのだがなぁ」


 呆れたように息を吐きながら、それでも思考は放棄しないゴブトゴさん。

 だって俺にとってはもう過去の出来事でしかないし、あんまり仰々しく語っても仕方なくない?


「ダン殿は初対面の時にあっさりと玉座を両断したりしていたし、あまり常識に期待しても意味が無いか……」

「エルフェリアのアウターって宿り木の根でしょ? あれが消滅したってことは、世界樹も消し飛ばしちゃってるわけ……?」

「うん」

「うん、じゃねーからねっ!? 世界樹を消滅させておきながらエルフに信奉されてるって、もう意味が分からないって……」

「まぁあの時はエルフェリア精霊国から救援要請が出ていたからな。それほどの脅威だったということなのでしょう……」


 流石のロイ殿下とゴブトゴさんも、エルフェリア内の事情にはちょっと疎そうだ。

 今までのエルフって閉鎖的だったし、マジックアイテム開発局に勤めているエルフは、エルフェリア精霊国に近寄らないらしいからなぁ。


「そして神器呼び水の鏡、そしてレリックアイテム整合の魔器によって、人工的にアウターが発生している事例は既にあると……」

「もっと言うと、組織レガリアは異界の扉を開くっていうマジックアイテムなんかも持ってたんだ。まぁそれは使うと使用者が魔物化しちゃうみたいだけど」

「……自分で使うのは馬鹿らしいけど、例えば奴隷に使わせたりすれば人工アウターの完成か。つまり既に人の手でもアウターの発生に成功した前例があるんだね。マジかぁ~……」


 ま、異界の扉を開くという貪汚の呪具だけど、今のところ全ての使用者がイントルーダー化してしまってるから、アウターが発生してこの世界に定着した事例は無いんだけどね。


 でもそれをここで言う必要も無いだろう。

 重要なのは、異界の扉を開いて魔力を呼び込むことが出来るという事実なのだから。


「そしてアウターの数を増やすことが出来ないと、多くの魔物狩りがアウターに押し寄せ、アウターエフェクトやイントルーダーを出現させてしまう、かぁ……」

「職業浸透が進めばアウターエフェクトは相手取れるやもしれんが、イントルーダーは難しそうではある。実際に対峙した事は無いが……」

「イントルーダーはアウターの最終防衛システムだからね。アウターエフェクトが10000体居るよりもイントルーダー1体の方が脅威なんだよ」


 アウターエフェクトとイントルーダーの能力に差がありすぎるんだよなぁ。

 アウターエフェクトの発展系でイントルーダーを考えるのは危険すぎる。両者は存在としての次元が違う感じだからな。


「イントルーダーの脅威度については、断魔の煌きの皆さんに聞いてみればいいんじゃないかな」

「断魔の煌きだと? イントルーダーなんぞ仕合わせの暴君しか遭遇例が無いのではないのか?」

「いや、新王の2人はスペルディアでイントルーダー化したシモンに遭遇しているし、エルフェリア精霊国で俺達が滅ぼしたイントルーダーマグナトネリコは、断魔の煌きの6名全員が目撃しているよ」

「あ~……。そう言えばクソ親父もイントルーダー化したんだっけ……。人間の時は無能な癖に魔物化したら強力になるなんて、何処まで人に迷惑をかけりゃ気が済むんだか」


 いや、そのセリフってブーメラン刺さってますからね?

 国庫を着服して国の財政を圧迫してた癖に、どの口でそんなことをほざいてやがるんですか。


 今は真面目に仕事してるみたいだし、当時も深い考えを持って着服に手を染めていたわけじゃなかったんだとしても、感情的には未だに許しきれないところがあるよなぁ。


「……そうか。だからマーガレット殿下とガルシア殿は二つ返事で即位を了承したのか……?」

「ん? どういうことゴブトゴさん。新王の即位とマグナトネリコがなんか関係あるの?」

「大有りだよダンさん。スペルド王国最強の魔物狩りパーティ断魔の煌きは、中核メンバーであったマギーとガルの2人が自由に動けなくなる事を理由に、無期限の活動の休止を発表したんだよ。事実上の引退さ」


 ゴブトゴさんに問いかけたのにロイ殿下が答えてきた。

 っていうか無期限の活動休止とか事実上の引退とか、芸能界じゃないんだからさぁ……。


 王国最強の魔物狩りとして名を馳せていた断魔の煌きって、この世界の人々から見たらアイドルそのものだったのかもしれないけど。


「引退って事はもう魔物狩りしないわけ?」

「マギーとガルは引退を渋っているみたいだけど、他のメンバーが引退を強く希望してるみたいなんだよ。その理由は不明だったんだけど、ダンさんのおかげで合点がいったね」

「即位する2人の方が引退を渋ってるのか。でも俺の説明で合点がいったって、なんで?」

「恐らくだけど、マグナトネリコだっけ? そのイントルーダーを見て心折れたんじゃないかな? アウターエフェクトとは比べ物にならないんでしょ? イントルーダーって」

「あー……」


 確かにありえる話かもしれないな……。


 新王に即位するマーガレット、ガルシア両陛下は、スペルディアで変異型イントルーダーとの遭遇経験がある。

 しかし他のメンバーは、いきなり世界呪と化したマグナトネリコと対峙してしまったんだ。その心労は計り知れないだろう。


 と言うか、断魔の煌きの6名も全員神判くがたちに囚われていたんだっけ?

 その時に心が砕かれるような何かがあったのかもしれない。


「獣人族の4人は魔物狩りを止めたがっていたけど、自己愛の塊のマギーは名声を失うのが怖かった。そんな時に舞い込んできたのが自分とガルの即位の話ってわけ」

「即位することで自由に動けなくなるから、名声を失わずに魔物狩りを止める理由として最適だった? じゃあ新王2人が引退を渋っているのもブラフなの?」

「いや、それは恐らく本当だろう。マギー殿下は未だにダン殿に対抗心を燃やしているし、ガルシア殿も即位の準備の合間を縫って訓練に明け暮れているというからな。活動休止はあくまで他のメンバーのためだろうな」

「そっか。マーガレット殿下はまだしも、ガルシアさんがまだ心折れてなくて良かったよ。せっかく準備した献上品が無駄にならずに済みそうだ」

「「…………は?」」


 断魔の煌き引退のニュースはちょっとびっくりしたけど、ガルシアさんが現役なら問題ない。

 嫌な予感がしてきたぞぉ? って顔をしている2人には悪いけど、話の流れで献上品のことも報告しておこう。


「実は終焉の箱庭でイントルーダーを倒した時にひと振りの剣を手に入れてね。だけど我が家の家族にはもう使い手が居なかったから、即位のお祝いとして献上しようかなって」

「…………ごめん。待ってダンさん。情報量が多すぎる。ちょっとだけ待ってくれる?」

「イントルーダーを倒して入手したという事は、アウターレア製の剣という事か……!? それを献上するだと……!? しょ、正気かダン殿……!?」

「我が家の装備は愛する妻が用意してくれたものがあるからね。だけどアウターレア製の武器をインベントリで腐らせておくのも勿体無いでしょ? だからタイミングもいいし献上しようと思ってるんだ」

「…………っ」


 無言で勢い良く立ちあがったゴブトゴさんは、何も言わずに自分とロイ殿下のグラスにアーティを注ぎ込んで、今度はグラスを合わせることなくグイッと一気に飲み込んだ。

 これが俗に言う『飲まなきゃやってられねぇ』って奴ですか?


「ちなみだけどさぁ……。スキル何て付いてないよね?」

「え? 勿論付与したに決まってるでしょ? 王への献上品だよ?」

「うわぁ~聞きたくない~……! 聞きたくないけど、スキルの内容は?」

「元々付与されていたウェポンスキルに、魔法妨害、貫通、体力吸収、物理攻撃力上昇の大効果が付与されてるよ」

「なんっだよそれえええええ!? もはやその剣が神器だよ!? 国宝ってレベルじゃないよおおおっ!?」


 ロイ殿下が頭を抱えながら絶叫してしまった。

 でも新国王の即位のお祝いの品なんだから、国宝級の献上品を用意したっておかしくはないと思うんだ。


「ウェポンスキル付きのアウターレア装備ですら聞いたことが無いのに……! 他に大効果スキルを4つ、だとぉ……!?」

「しかも完全にスキルを厳選してるよねっ!? 今上げた4つの大効果スキルのスキルジュエルなんて、数年に1度も出回らないのにどうやってーーーっ!?」

「そこまでの剣を、あっさりと手放してしまう神経も信じられん……! スペルドの国庫を空にしても足りぬほどの価値だろうに……!?」

「はいはい2人とも落ち着いて落ち着いて。また酒でもかっ喰らって落ち着いてってば。ツッコミなんだか質問なんだか分からなくて答えられないってば」


 どうどうと2人を宥めて一旦会話を中断する。

 会話が中断されるとロイ殿下とゴブトゴさんは、無言でアーティをガバガバと呷り始めた。


 う~ん。10リットルくらい持ってきたはずのアーティが、昼食の時間だけで消えてしまいそうだぞ?

 アーティってミスリル製のグラスを使わなくても悪酔いしないのかな?


「2人が驚くのも無理ないけど、これもまた職業浸透が進めば変わってくる話なんだよ」


 無言で酒を呷っていた2人は、俺が話し始めたのを聞いてビクリと肩を振るわせた。

 こっちは報告しているだけなのに、そんな反応される筋合いは流石に無いんだよ?


「俺達家族と世間一般の価値観は大きく乖離してて、アウターレア製の武器やスキルジュエルの価値は、それほど高く感じてないんだ」

「職業浸透で変わってくるって……。まさか魔玉の発光を促すみたいなスキルが、スキルジュエルやアウターレア装備品にもあるってこと!?」

「……詳しくは説明しないけど、スキル付与も、スキルジュエルのドロップも、アウターレア製の装備も入手も、職業浸透に大きく影響を受けるんだ。だからもう余っちゃってきてるんだよねー」


 実際には余っちゃってるどころか、インベントリから溢れかえりそうなんですけどねー?

 ムーリたちの探索では殆どスキルジュエルがドロップしないのがせめてもの救いだよ。


「ちょっと!? なんで教えてくれないのさっ!? そこまで言ったんなら教えてくれよっ!!」

「魔玉と違って、これらは広めると影響が大きすぎると思ってるからね。心配しなくてもあと数年もすれば自然に発見されると思うよ。その頃になれば多少は人口も増えてて、魔物狩りも増え始めるだろうから、そうなってから広まって欲しいって思ってるんだ」


 今のこの世界の人口でスキルジュエルやアウターレア装備が大量に出回ったら、どう考えても歪な状態だと思うんだよね。


 村人でも簡単に魔物を狩れてしまう様になったり、スキルジュエルで職業浸透の不足を補えたり出来るようになるかもしれない。

 そうすると魔物狩りの水準が下がって、いざって時にアウターエフェクトやイントルーダーに壊滅させられかねないと思うんだよ。


 ただでさえ俺が齎した変化の影響は計り知れないんだ。

 不満げに頬を膨らませているロイ殿下の視線を無視してでも、まだ開示出来ない情報だと思うんだよね。


「もしもロイ殿下が先行者利益を得ようとしてるんなら、頑張って色々な職業の浸透を進めればいいんじゃない? でも過ぎたる力を持ってしまうと、それ相応の敵を相手にしなきゃならない覚悟はしたほうがいいと思うよ」

「イントルーダー、か……! くっ……! 実物と遭ったことがないから、どれ程の戦力なのか想像出来ないのが面倒だな……!」

「ん? じゃあ実物と遭ってみる?」

「…………へ?」


 俺の提案にまたしても硬直するロイ殿下。

 ゴブトゴさんも肩をがっくり落として、はぁ~やれやれって感じで力無く首を振っているな?


「……なんの冗談だダン殿。イントルーダーとは世界を破滅に導くほどの存在ではないのか? じゃあ遭ってみる? なんてノリで気軽に遭える存在なのか?」

「いや冗談じゃなくて真面目な話なんだよ」

「む? どういう意味だ?」


 真面目な話と聞いて、ゴブトゴさんが明らかに聞く体勢に入った。


 ってことは、マジで冗談だと思ったのかゴブトゴさん……。

 流石にイントルーダーを冗談に使うほど豪胆じゃないってば。


「ロイ殿下が言った通り、イントルーダーって遭遇率が低すぎてなかなか脅威度をイメージできないでしょ? だからゴブトゴさんみたいな為政者だけでも、イントルーダーに遭遇しておくべきじゃない?」

「…………本当に遭えるなら願っても無いが、危険は無いのか?」

「俺って3体のイントルーダーに同時に襲われて返り討ちにした経験があるんだ。だから1体ならまず負けないよ。立ち会う限りリスクをゼロには出来ないけどね」

「うわーーもう意味が分からないよーーっ! ダンさんと話してるとイントルーダーが恐ろしいのか大したことないのか、ぜんっぜん伝わってこないよーーっ!」


 またしても絶叫しながら頭を抱えるロイ殿下。

 でもロイ殿下の抱いた感想って、実に言い得て妙な感じがするな?


 イントルーダーは恐ろしい存在だけど、もう大した事ない存在なんだよ。

 俺達仕合わせの暴君にとっては、だけどね。
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