異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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745 追加報酬

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「神器が奪われました……! カルナス将軍の手によって!」


 和やかな雰囲気の食事会の後に齎された突然の悲報。

 カレンが所持している神器『識の水晶』が、帝国を離れたカルナス将軍に奪われてしまったらしい。


「……それで、被害のほうはどうなっている? 犠牲者は出たのか?」


 一瞬驚愕の表情を浮かべたカレンだったけど、直ぐに気を取り直して伝令の兵士に語りかける。

 神器の行方よりも人的被害の報告を優先するあたり、カレンと城の人たちの関係の良好さを窺わせる。


「いえ、幸いにして人的被害は出ませんでした。……襲撃者がカルナス将軍だったため、警備の者たちも抵抗を諦めたようです」

「それでいい。神器は奪われても取り戻す余地があるが、皆の命は奪われたら終わりだからな。それで、貴様が持っているその手紙はなんだ? カルナスからのメッセージか?」

「はっ! 陛下にお渡しするよう預かりましたっ」

「なるほどな。では早速渡してもら……」

「ちょっと待ったカレン。手紙を受け取るのは1分だけ待って」

「ダン? いったいなにを」


 カレンを庇うようにカレンと兵士の間に割り込み、兵士の持っている手紙を鑑定する。が、鑑定結果が表示されない。

 この手紙がマジックアイテムって事はなさそうだけど……。


「ティムル。便箋から変な魔力の流れは確認出来る?」

「いえ、その手紙からは魔力は感じられないわ」

「じゃあキュール。カレンより先に手紙を触心してみてくれる?」

「内容じゃなくて便箋そのものを調べるんだね? 陛下、宜しいですか?」

「そ、それは勿論構わんが……。流石に警戒しすぎではないのか?」

「何事も無ければそれで良し。でも何事かを起こして後悔したくないんだ」


 鑑定対象外の時点で警戒しすぎだとは思うけど、スレイブシンボルで痛い目を見た経験もあるからな。

 神器の強奪に目を向けておきながら本命はカレンの身柄の拘束、なんて可能性が無いとも限らない。


 なにより、向こうの陣営にはバルバロイ殿下が居るのだ。

 正面からの正攻法ではなく、搦め手からの厭らしい手段でカレンを狙ってくるかもしれない。


「ん、大丈夫だよダンさん。間違いなくただの便箋だ。中にも特別な仕掛けは無いよ。内容までは分からないけどね」

「了解。カレン、邪魔して悪かった。ティムルとキュールもありがとう」


 カレンの前から下がり、カレンたちの対応を見守る。

 警戒しすぎの俺達に肩を竦めて見せながら、カレンは兵士から受け取った手紙を開封する。


「……この期に及んでふざけた事を」

「なんて書いてあるの?」

「帝国に仇なすつもりは無い。今回の行動は最終的に私に全ての神器を献上する為に必要なことなのだそうだ。馬鹿馬鹿しい……」

「あちゃ~……」


 カルナス将軍、タイミング悪いなー……。

 ちょうどカレンが神器を手放してもいいと思い始めたタイミングでつまらない事をしでかしちゃったねぇ。


 カルナス将軍って暴走癖の治らないラトリアみたいだな。

 これじゃ仮にカレンが俺の女になっていなくても、カレンに愛想尽かれたんじゃないか?


「人的被害は無いと言ったな? ではルチネたちはどうなった?」

「そ、それがその……。ルチネ様もエルラ様も、マドゥ様まで……」

「……まさかとは思うが、自主的にカルナスについて行ったか?」

「そっそのっ……! えと……。は、はいぃ……」

「ルチネがカルナスの熱狂的なファンだったのは知っているが、他の2人が追従したのは意外だったな……」


 やれやれと嘆かわしそうに頭を抱えるカレン。

 どうやら誰かがカルナス将軍についていってしまったようだ。


 伝達の兵士が敬称をつけて呼んでいることから、高貴な身分の人たちっぽいね。


「会議の準備をしていたのは幸いだったな……。貴様は直ぐにこの手紙を会議室に持って行け。15分後に私が顔を出すまでに、各自対応を考えておくよう伝えておくように」

「了解しました! それでは失礼致します!」


 開封された手紙を恭しく受け取って、直ぐに食堂を飛び出していく伝達の兵士さん。

 そんな兵士さんの背中を見送ったカレンは、やれやれと肩を竦めながら俺達の方を向き直った。


「それでは私たちも行こうか。会議室に向かいがてら、こちらの状況を説明させてもらおう」

「神器を奪われたっていうのにあまり気落ちしてないね? 焦っているようにも見えないし。もしかしてカルナスを信用してるの?」

「お? なんだなんだ? カルナスに妬いているのか~?」


 すすすっと俺の隣りに寄ってきて、ニヤニヤしながら俺を問い詰めるカレン。

 たった今神器を奪われた皇帝の姿とはとても思えない。


 せっかく近寄ってきてくれたのでカレンを捕獲し、両手でカレンの引き締まったお尻をサワサワしながら軽くキスをすると、カレンはやはり機嫌よさそうに気軽にキスに応じてくれた。


「皇帝としての支持基盤を磐石なものとする為にかつては神器を求めたが……。それ以上の支持が貴様の妻となることで得られるのだからな。私個人としてはもう神器に思い入れは無いんだよ」

「え、でも流石に神器を奪われたなんて広まったら支持率に影響が……って、神器の存在は公にはされてないのか」

「そういうことだな。仮にカルナスやバルバロイに神器の事を言いふらされてもどうでもよい。あれは気軽に使えるようなものでもないのだから」


 はむはむと俺の口を味わうようにキスをしたカレンは、俺の腕に抱き付いて会議室への案内を始めてくれた。

 俺の右腕を形の良いおっぱいに埋もれさせながら、表情だけは真剣になって情報の共有を始めてくれる。


「カルナスについていったルチネ、エルラ、マドゥとはラインフェルド家の分家筋の者で、私の姪に当たる女たちだ。そして今代の器巫女を務めている3人でもある」

「うつわみこ?」


 聞き慣れない単語に、思わずそのまま聞き返してしまった。

 カレンによると、ラインフェルド家には代々器巫女と呼ばれる、識の水晶を所持する役割を持った人間が複数用意されていたらしい。


「ってことは、皇帝のカレンが識の水晶を持ち歩いてるわけじゃないんだ?」

「ああ。貴様と違って、我がラインフェルド家は神器に使われる側の人間だからな。神器の所持には負担が大きいのだ。そこで生まれたのが器巫女という存在だ」


 勝手に神託を授けておきながら所有者に負担を強いるとか、識の水晶さんは我が侭っすねぇ。

 あまり神器とは上手くやってこれなかったラインフェルド家だが、それでも流石に信用の置けない者に神器を預けることは出来ず、ラインフェルド家に近しい者たちが複数人で持ち回り神器を管理するそうだ。


「巫女とは言うが性別に拘りは無い。ただ男にしろ女にしろ、10代の者が役を担う場合が多いらしいな。若い頃に神器に触れさせて、統治者に相応しい意識を育てるとか何とか言ってな。無論私も経験した事があるぞ」

「ということは、3人とも10代の女性ってわけか。どっかの王子の毒牙にかからなきゃいいけどねぇ」

「はっ。流石にそこまでダンが気にすることは無かろう。自らの意思で神器を持ち去ったのだ。その行動の責任は自分で取るのが筋というものだ」


 3人の情報を詳しく聞くと、最年長のルチネは18歳。

 カルナスの真似をして剣術を習うほどカルナスの熱狂的なファンで、帝国のために行動しているというカルナスの言葉を信じきっての離反だろうとのこと。


 2番目のエルラは16歳で、カレンに強い対抗心を燃やしているようだ。

 それは敵愾心では無くて対抗心のようで、16歳で皇帝になったカレンを尊敬しているからこそ、16歳の自分がカレンから皇帝の座を奪ってやろうと意気込んでいるらしい。

 つまり、カルナスかバルバロイ殿下に簡単に唆されそうな人物ってわけだ。


 最年少、15歳のマドゥは何事にもあまりやる気を見せない今時の少女らしい。

 やる気を見せないから今回の行動は少し意外だったようだが、単純に仲の良い2人についていっただけなのかもしれないなと苦笑するカレン。


 因みに3人とも親戚同士であって、実の姉妹では無いらしい。


「カルナスが本気で帝国の事を思っているなら、あの3人に危害を加える事はないハズだ。バルバロイの手から守るくらいはするかもしれないな。私としてはもうどうでもいい話だが」

「あら? 器巫女の3人とはあまり仲が良くないの?」

「いや、3人との関係も悪くないと思っているが、流石に神器を持ち去った者の安否など気遣えん。皇帝としては3人を極刑に処す必要もあるだろう。だからもうどうでもいいのだ、それまでの経緯など」


 無表情に溜め息を小さく吐きながら、仲が良い姪3人を極刑に処すと宣言するカレン。

 万引きレベルの窃盗ですら四肢を切り落とされる国で、国宝扱いの神器を無断で持ち去った以上、どんな理由があっても許されないか。


 下手をすると、3人の血縁者まである程度遡って責任を取らされそうだな……。


「私としては最早神器は手放す気だったから怒りも無いがなぁ。3人は帝国に戻らない方が幸せかもしれん。例えば誰かに生涯囲ってもらうとか、な?」

「勘弁してよ~……。会ってもいない女性を家族に迎える気は無いってばぁ」

「家族で無ければ性奴隷にでもしてやってくれ。というか貴様に貰われる以外に3人に生きる道は無いだろう。識の水晶の正式な所有者である貴様が3人を求めるなら、流石に極刑を免れても文句は出ないはずだからな」

「マ~ジ~か~よ~……。まだ識の水晶なんて見たことも無いのにぃ……」


 ああ、後ろでシャロとティムルがハイタッチしている音が聞こえるよぅ。

 ニーナに良いお土産が出来たねっ、じゃないんだよリーチェーーーっ!


「私としても、オムツを変えてやったあの3人が下らない男たちのせいで処されるのは忍びない。識の水晶を奪還した報酬だとでも思ってもらってやって欲しい」

「く……! 可愛いカレンのお願いなら聞いてあげたいけどぉ……! さっ、流石に保留! まだ保留にさせてっ!?」

「ははっ。好きにしろ。だが3人の処遇は私の言った通りとなるだろう。だろうキュール?」

「でしょうねぇ……。神器の存在は公にされていませんが、最奥の間を襲撃して国宝を奪ったカルナスに加担したと見られるのは間違いありません。なのでダンさんは覚悟を決めて、3人をしっかり孕ませて差し上げてっ」

「俺が孕ませて差し上げたいのはお前と家族のみんななんだよっ! ったくもー……」


 俺がさっさと識の水晶を所有しておけば、罪の無い3人の少女の人生を狂わせる事は無かったのか……!?

 なんて、そんなの分かるわけねーからっ! やっぱ神器なんて要らないんだよボケーーっ!


 ゲンナリした気持ちで会議室に到着すると、カレンと腕を組んでいることで会議室にいた連中からぎょっとした視線を送られてしまう。

 神器を奪われた直後だってのに、俺の方に注目してんじゃねーっての!


「皆揃っているな? では早速話を進めるぞ。この男がダン。私の婚約者だ」

「ちょーっ!? いったい何の話を始めてるんだよカレン!? 緊急事態どこ行った!?」

「過剰な数のマインドディプリートやサークルストラクチャーを送りつけてきた事は皆の記憶にも新しいと思う。そしてこの度カルナスに国宝を持ち去られたことで、晴れてダンと婚姻を結ぶことが出来るのだ!」

「はっ!?!?!? ちょ、落ち着いてカレン! なんでそんな話に……」

「貴様が私と婚姻を結ばなかったのは、今回持ち去られたアレを巡って対立関係にあったからだろう? ならば今の私たちの婚姻を阻むものなど何も無くなったということだぁっ!」


 あ、あれ!? 確かにそういう理屈が通っちゃうのか!?

 いざ改めて指摘されると、確かにカレンとの婚姻を拒む理由は既に無い気がするな!?


 ていうかさっきから神器とは口にしないあたり、この場に居る人間でも神器の存在を知らされていない人が居るっぽい?

 さっきの伝令の兵士は神器って行ってたから、彼は器巫女を護衛する最精鋭の兵士さんだったんだろうか?


「先に回した手紙に書いてある通り、カルナスはあくまで帝国の為に行動を起こしているつもりらしい。であればそのうち向こうから接触を図ってくるはずだ。異論がある者は居るか?」

「……つまり陛下。向こうの出方を待つと仰るのですか? 帝国の秘宝が奪われているというのに何を暢気な……!」

「その帝国の秘宝と同等の物を2つも所持している男が私の隣りにいるのに、1つ奪われた程度でジタバタするんじゃない」

「な、なななななななっ……!?」


 ……流石は24歳の若さで帝国の頂点に上り詰めた女だけはあるな。

 神器を奪われたのは明らかな失態であるはずなのに、その神器を2つ所有している俺と婚姻を結ぶことで、トータルで神器を1つ増やしたように錯覚させているのか。


 あまり政治的な利用をされたくはないけど、嘘を吐かれたわけでもないので口を挟みにくいな。


「カルナスについては今は保留するぞ。向こうから接触を図ってきた時は私と夫が直接対応する。ということでいいか? 我が夫よ」

「ぐっ……! べっ、別に帝国に利する為じゃないんだからねっ!? 愛するカレンの為に仕方なく働くだけなんだからっ!」

「はははっ! 帝国のためと言われるよりよほど嬉しいぞ! 我が夫は女泣かせで困るなぁ?」


 まんまとカレンに乗せられてしまった形だけれど、神器の問題を見て見ぬ振りは出来ないんだよな……!


 向こうに俺と本気で敵対するつもりのバルバロイ殿下がついている以上、俺が無視しても向こうから接触してくる可能性が高い。

 カレンは状況的に俺が関わらざるを得ない事をしっかり理解した上で、その状況を自分自身の追い風となるように仕向けたんだ。


 上手いなぁ……! 俺に何を強制させたわけじゃないってのが本当に上手い……!


 カレンが俺との婚姻を正式に発表したあとは、予定通り観光業を立ち上げる話し合いが進められた。





「ヴェルトーガ海岸の海の幸を活かさぬ手は無いが……。少量でもいい。安全に漁を行える方法を模索しろ」

「は、はいっ……! 海洋研究所にも確認してみますっ……!」


 いや、神器を奪われた直後に郷土料理の話をされてもついていけないんですけど!?

 ほらほらカレン! 側近っぽい皆さんも、微妙に顔が引き攣ってるってばぁ!


 神器を求めて俺との接触を図ったかつての皇帝陛下は、いったい何処に行ってしまわれたんですかねぇ!?
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