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「ただいまー。お姉さんのお帰りよーっ」
お茶の準備が整った頃、元気な声と共にティムルがポータルで帰還してくる。
その数秒後、がっくりと肩を落としたライオネルさんと、他に5名ほどのエルフがティムルに続いてこの場に転移して来た。
エマが全員分のお茶の用意を進めている中、疲れた様子のライオネルさんが話しかけてくる。
「いやーやってくれたねダンさん……。流石にこの事態は想定してなかったよ……?」
「本当に申し訳無いんだけど、流石に俺だって想定してなかったからね? ライオネルさんのその様子だと被害のほうは無いと思っていいかな?」
「ああ、それだけは幸いだったよ。人的被害、物的損害共にゼロだと思っていい」
俺が世界呪を滅ぼして生み出してしまったクレーターはかつては聖域の樹海のような深い森が広がっていたようで、将来的にはユニの周りに緑を取り戻すつもりではあったそうだ。
しかし俺が次々に新しい仕事を運び込んできたことで、寿命が長く好奇心旺盛なエルフたちは里の外の仕事を優先し、クレーター内部の緑地化を後回しにしていたおかげで誰も巻き込まれずに済んだようだ。
というか、俺が生きている間は世界樹ユニの生育を俺に任せるつもりだったようで、向こう50年くらいはクレーターは放置予定だったそうだ。
流石は1000年を生きる長命種、気が長い。
「全員にお茶は行き渡ったね? それじゃ説明をさせてもらうけど、正直突然のことで俺にも分かってないことが多いんだ。だから疑問があったら遠慮なく口にして欲しい」
ひと言前置きをして、今回の騒動を順序立てて説明する。
と言っても、説明する項目はさほど多く無いんだけどねー……。
これからヴェルモート帝国の海にお出かけする事になりました。
その事を世界樹ユニに伝えました。
するとユニは海の話に興味を持って、自身が制御している膨大な魔力を用いて海を再現して見せました。
以上?
「俺とユニは魔力で深く繋がっててね。俺が持つ海のイメージと、レインメイカーの仕組みを魔力を通して盗んでしまったみたいでさぁ。流石に生まれたばかりのユニにそんな高度な魔力制御が出来るとは想定してなかったんだ」
「あ~……。ダンさんと魔力で繋がっていたらこれくらいの事をしてもおかしくなさそうだねぇ……」
「俺も想定外だったって言ってるでしょ。全ての元凶が俺みたいに言わないでよ。否定する材料も乏しいんだからさぁ」
「否定材料が乏しいなら認めて楽になった方がいいと思うよ? ま、幸いに何の被害も無かったのだからダンさんを責める気は無いけど」
単純に理解が追いついていないだけだよと、俺に見えるように盛大に溜め息を吐くライオネルさん。
その後ろでライオネルさんに同行してこの場に転移して来たエルフが、2名ほど先にエルフェリアに戻っていった。
ライオネルさんはまだこの場を離れられないので、とりあえず今聞いた説明をエルフェリアに連絡しに行ったそうだ。
「被害が無かったなら次に確認したいのは影響だ。例えば世界樹ユニの下に徒歩で来られなくなってたり、アウター福音の花園の入り口が水没していたりするけど、エルフたちに直ぐに影響する要素はあるかな?
「ダンさんが挙げたその2点だけでも大概じゃないかな?」
「これは俺が把握してる要素だけど、エルフから見た影響が知りたいんだよね。何も影響が無いならそれでいいよ」
「ふむ、そうだねぇ……」
見渡す限りの広大な水面を眺めながらライオネルさんが腕を組む。
ライオネルさんもきっと海を見たことは無かっただろうから、この景色自体には興味を引かれているのかもしれない。
「今はみんな里の外の仕事に目を向けているし、目立った影響は無いと思う。中継都市での仕事と緑地化がひと段落したら色々起こりそうではあるかな」
「例えば何が起こりそうかな? 具体的に何か想定できる事はある?」
「ん~、やっぱり1番は徒歩で世界樹ユニを参ることが出来ないことだろうね。この場に来た6名が順次皆をポータルで送ってきても良いんだけど、徒歩でのルートが無いと万が一が怖いな」
やっぱり徒歩で来られないのは不味いよなぁ。
移動魔法が一般的なこの世界では転移すればいいじゃんと思うかもしれないけど、膨大な魔力を操る世界樹ユニの回りはアウター判定を受けてポータルを使用できなくなる可能性も無くはない。
またかつてのエルフェリアでの内戦のように、何らかの理由で人が減り、冒険者の転職魔法陣が維持できなくなる場合だってある。
森の中で生きてきたエルフ族に船を作る知識や技術も無いだろうから、やっぱり陸路は用意しなきゃいけないだろう。
「それにエルフ族はあまり水が得意な種族じゃないからね。こうして眺める分にはとても感動するけれど、世界樹ユニが水で覆われている事に恐怖を覚える者も出てくるかもしれない。たとえ世界樹ユニが自分で作り出した光景だったとしてもだ」
「え? エルフって水が苦手なの? 我が家のポンコツエルフは入浴が趣味だったんだけど」
「流石に入浴や水浴びを恐れたりはしないけど、水って魔力を弾くだろう? 精霊魔法も作用しないから、川や湖を忌避するエルフは結構多いんじゃないかな」
「なるほど……。魔法系に強い種族だから、魔力と相性の悪いものを本能的に避けるってことか」
入浴や水浴びを恐れたりはしないって言い方的に、好んでそれをするエルフも少なそうに聞こえるんだけど……。
我が家のポンコツリーチェって、本当にエルフとしてもポンコツだったんじゃないのかなぁ?
リーチェがもしも水を嫌って入浴も嫌いだったとしたら、ネプトゥコで世界樹の護りを盗まれることもなかった気がする。
良かった。リーチェがポンコツで本当に良かった……!
「ダ~ン~? 君、今絶対失礼なこと考えてるでしょ~?」
「リーチェがお風呂嫌いじゃなくて良かったなと思っただけだよ。おいでおいで」
ほっぺを膨らませながら寄って来たリーチェに両手を広げて、お互い正面からぎゅーっと抱き締め合う。
……のはいいんだけど、胡坐をかいている俺の上に普通に乗ってきて、お互いの大切な部分を思いきり密着させてきているのはわざとかな?
当の本人は楽しそうに俺にスリスリ頬ずりしてくるもんだから聞くに聞けないよぉ。
「とりあえずだけど、陸路とアウターの入り口に関しては直ぐに対応するよ」
「……なぜだろうね。直ぐに対応すると聞いてしまったほうが不安を覚えるんだけど」
「他には何か無いかな? っというかこの湖……世界樹の湖はこのままにしててもいいのかな?」
「そう……だね。これは流石に私の独断では判断出来ないけど、陸路さえあれば不満は出ないと思う。植樹の手間も省けるし、世界樹の防衛という観点から見ると、周囲全てが水に覆われている状況は悪くないとも言えそうだから」
「なんにしてもまずは陸路が出来てからってことだね。それじゃまずはさっさと対応しちゃおう。このあとの予定も詰まってるし」
ユニの下でそれなりににゃんにゃんする予定だったので時間的な余裕はまだあるけど、この場を放置して海洋研究所に向かうことは出来ない以上、さっさと陸路を用意しないとどんどん予定が詰まってしまう。
チョッパヤで用事を終わらせないとケツカッチンって奴だね。
リーチェを抱き締めたままアウラも呼んで、精霊魔法使い2人の柔らかな温もりを感じながらメタドライブを発動する。
流石にアウラも落ち着いてくれたようだけど、対応にもちゃんと関わらせてあげないとな。
「えーっと……。居住地域方面に向かって陸路を伸ばすイメージで考えてるけど、ライオネルさん的には何か要望はある?」
「……そんな気軽に地形を変える相談をされても困るんだけど。とりあえず丈夫で長持ちする道なら何でもいいよ……」
「了解。こっちで適当に用意するね。リーチェとアウラは何かイメージあるかな?」
「あるわけないでしょ。先が見えない場所まで続くような巨大な橋なんてどこにもないからね?」
「パパのイメージでお願い。私じゃ上手いイメージが思い浮かばないから……」
呆れるリーチェと不安そうなアウラにちゅっちゅっとキスをして、そのままユニに寄りかかる。
両手は2人の精霊使いを捕まえているので、魔力接続する為にはこの方法しかないのだよっ。
「橋でもいいんだけど、それだと俺の知識が無いし、経年劣化でメンテナンスの必要性が出てきそうだからー……っと」
「お、おい……なんかまた揺れてねーか……!?」
大丈夫なのかと不安げにこちらを見てくるシーズにウィンクを返し、これ以上心配させないようにさっさとユニにイメージを伝えていく。
先ほどユニは地面を隆起させることも出来たのだから、橋をかける事に拘らず、陸路を作ってしまった方が手っ取り早いはずだ。
エルフたちの居住区方向に向かって水底から地面を隆起させ、水中から見たら恐らく巨大な壁のように見える1本の陸路を作り出した。
道幅はたっぷり20メートルは取ったはずだから、将来的にエルフの人口が爆発したとしても道からエルフが溢れる事はないだろ。
水中の壁には一定間隔で穴を空け、水の流れが抜ける道を一応用意しておく事にする。
「ニーナー。一応この道が湖の橋まで届いてるか、走って見てきてくれない?」
「了解なのー。ちょっと行ってくるねーっ」
二つ返事で了解してくれたニーナが、猛スピードで駆け出していった。
ひょっとして、まだ誰も走ったことがない道を走れたのが嬉しかったのかな?
「ダンさんの非常識さには慣れていたつもりだったけど……。こうもあっさりと大規模な地形変化を起こされちゃうと流石に舌を巻くよ……!」
「俺じゃなくてユニがやってんの。そこんとこ間違えちゃダメだよキュール。大事なところだからね?」
「世界樹を通して貴様が起こした事象なのだから、貴様がやったことだと思うがなぁ……。私はかつてこんな男から神器を強奪しようとしていたのかぁ……」
「結果的にカレンは心も体も俺に奪われちゃったねー? さて排水はどうするかなぁ。流れも一応あった方がいいのか?」
「あはーっ。ダン、あんまり拘っちゃダァメ。細かい要素はユニに任せて、ダンはニーナちゃんが戻ってくるまで良い子で待っていなさいねー。暇だったらリーチェとアウラをぎゅーっとしてていいからねー?」
なるほど。ティムルの言う通り、細かい部分はユニに任せちゃっていいのか。
そもそもこの水自体が湧き出たものじゃなくて魔力で発生させたものだから、あまり物理法則に従いすぎても失敗しそうだ。
それじゃニーナの報告待ちではあるけど、とりあえず陸路はこれでオッケーとして……。
「ついでに福音の花園の入り口も作っちゃおうか。これも俺のイメージでいいのかな?」
「……ねぇパパ。ライオネルさん的にはそうやって確認される方が辛いと思うの。ここはまず騒動を起こした私たちで対応してからライオネルさんに確認すべきだと思うよ?」
「そうなの? 作った後に問題が起こっても面倒かなと思ったんだけど、アウラが言うならきっとそうなんだね。じゃあパパが適当に作っちゃうよ」
アウラにはむっとキスをして、キスをしたままユニにイメージを伝えていく。
大規模な地形変化もお手軽に行なえちゃうユニならば、水底に沈んだ福音の花園の入り口を隆起させるのも簡単だろう。
けれどそれじゃ折角の湖が活かせないと思ったので、世界樹ユニのアウターに相応しい特別な仕様に仕上げよう。
アウラの口の中に舌を割り込ませるイメージで陸路の途中の一部を陥没させて、湖の底にあるアウター目掛けて長い階段上の道を作り出す。
「えーっと、アウター入り口に水が入らないよう透明で頑丈なガラスで保護して……。あ、地面を進むとポータルが適用されなくなるかもしれないから屋外判定になるよう地面まで吹き抜けに……」
「ただいまなのーっ! 道は間違いなく居住区まで伸びてたから問題ないのーっ!」
アウターの入り口作りをしていたら楽しげな笑い声と共にニーナが帰還して報告をしてくれる。
けれどもニーナはそこで止まらず、俺が抱きしめているアウラとリーチェごと俺を抱きしめてくれた。
ん~っ。リーチェもアウラもニーナも大好きすぎるぅ。
「道は問題ないけど、私が走ってる間に道を操作するのは危ないでしょーっ、ダンったら今日は失敗ばっかりなのーっ」
「うわ、確かにその通りだ……! ごめんニーナ、こっちの作業に集中しすぎてた……」
「ふっふーん。謝らなくていいんだよー? こんなダンもたまには新鮮で可愛いのーっ」
アウターの入り口を整備していた俺の思考は、ニーナの頬ずりで全てが霧散してしまった。
もうアウターまで道は通じたはずだし、細かいレイアウトはユニに任しちゃえっ。
そんなことより俺は目の前の3人を抱き締めなきゃいけないんだよーっ。ぎゅー。
「……旦那様って本当に崇められたくないんです? これって多分そこらの神様よりもよっぽど神らしい振る舞いだと思うんですけど?」
ヴァルゴがどう思うかは自由だけど、そこらの神様なんて知りませーん。
俺は可愛い奥さんと可愛い娘とスキンシップを取るのに忙しくてそれどころじゃないんでーす。
「ふ~。ニーナちゃんのおかげでダンの思考が中断されて良かったわぁ。それじゃ私が確認してきますから、ライオネルさんはここで少々お待ちくださいねぇ?」
「お、お願いするよティムルさん……。というかダンの奥さんたちは動じなすぎじゃないかい……?」
なんか遠くでティムルとライオネルさんが喋ってるけど、キスに参加してきたリーチェとニーナと舌を絡めるのが楽しすぎて他の事を考えている余裕が無いなっ。
あ、でも家族以外の人がいるからここではえっち出来ないのかぁ……!
ん~、3人とのキスは気持ちよすぎて蕩けちゃいそうなんだけど……。
俺、このまま海洋研究所まで行って我慢できる自信がないなぁ。ちゅっちゅっ。3人とも大好きだよーっ。
お茶の準備が整った頃、元気な声と共にティムルがポータルで帰還してくる。
その数秒後、がっくりと肩を落としたライオネルさんと、他に5名ほどのエルフがティムルに続いてこの場に転移して来た。
エマが全員分のお茶の用意を進めている中、疲れた様子のライオネルさんが話しかけてくる。
「いやーやってくれたねダンさん……。流石にこの事態は想定してなかったよ……?」
「本当に申し訳無いんだけど、流石に俺だって想定してなかったからね? ライオネルさんのその様子だと被害のほうは無いと思っていいかな?」
「ああ、それだけは幸いだったよ。人的被害、物的損害共にゼロだと思っていい」
俺が世界呪を滅ぼして生み出してしまったクレーターはかつては聖域の樹海のような深い森が広がっていたようで、将来的にはユニの周りに緑を取り戻すつもりではあったそうだ。
しかし俺が次々に新しい仕事を運び込んできたことで、寿命が長く好奇心旺盛なエルフたちは里の外の仕事を優先し、クレーター内部の緑地化を後回しにしていたおかげで誰も巻き込まれずに済んだようだ。
というか、俺が生きている間は世界樹ユニの生育を俺に任せるつもりだったようで、向こう50年くらいはクレーターは放置予定だったそうだ。
流石は1000年を生きる長命種、気が長い。
「全員にお茶は行き渡ったね? それじゃ説明をさせてもらうけど、正直突然のことで俺にも分かってないことが多いんだ。だから疑問があったら遠慮なく口にして欲しい」
ひと言前置きをして、今回の騒動を順序立てて説明する。
と言っても、説明する項目はさほど多く無いんだけどねー……。
これからヴェルモート帝国の海にお出かけする事になりました。
その事を世界樹ユニに伝えました。
するとユニは海の話に興味を持って、自身が制御している膨大な魔力を用いて海を再現して見せました。
以上?
「俺とユニは魔力で深く繋がっててね。俺が持つ海のイメージと、レインメイカーの仕組みを魔力を通して盗んでしまったみたいでさぁ。流石に生まれたばかりのユニにそんな高度な魔力制御が出来るとは想定してなかったんだ」
「あ~……。ダンさんと魔力で繋がっていたらこれくらいの事をしてもおかしくなさそうだねぇ……」
「俺も想定外だったって言ってるでしょ。全ての元凶が俺みたいに言わないでよ。否定する材料も乏しいんだからさぁ」
「否定材料が乏しいなら認めて楽になった方がいいと思うよ? ま、幸いに何の被害も無かったのだからダンさんを責める気は無いけど」
単純に理解が追いついていないだけだよと、俺に見えるように盛大に溜め息を吐くライオネルさん。
その後ろでライオネルさんに同行してこの場に転移して来たエルフが、2名ほど先にエルフェリアに戻っていった。
ライオネルさんはまだこの場を離れられないので、とりあえず今聞いた説明をエルフェリアに連絡しに行ったそうだ。
「被害が無かったなら次に確認したいのは影響だ。例えば世界樹ユニの下に徒歩で来られなくなってたり、アウター福音の花園の入り口が水没していたりするけど、エルフたちに直ぐに影響する要素はあるかな?
「ダンさんが挙げたその2点だけでも大概じゃないかな?」
「これは俺が把握してる要素だけど、エルフから見た影響が知りたいんだよね。何も影響が無いならそれでいいよ」
「ふむ、そうだねぇ……」
見渡す限りの広大な水面を眺めながらライオネルさんが腕を組む。
ライオネルさんもきっと海を見たことは無かっただろうから、この景色自体には興味を引かれているのかもしれない。
「今はみんな里の外の仕事に目を向けているし、目立った影響は無いと思う。中継都市での仕事と緑地化がひと段落したら色々起こりそうではあるかな」
「例えば何が起こりそうかな? 具体的に何か想定できる事はある?」
「ん~、やっぱり1番は徒歩で世界樹ユニを参ることが出来ないことだろうね。この場に来た6名が順次皆をポータルで送ってきても良いんだけど、徒歩でのルートが無いと万が一が怖いな」
やっぱり徒歩で来られないのは不味いよなぁ。
移動魔法が一般的なこの世界では転移すればいいじゃんと思うかもしれないけど、膨大な魔力を操る世界樹ユニの回りはアウター判定を受けてポータルを使用できなくなる可能性も無くはない。
またかつてのエルフェリアでの内戦のように、何らかの理由で人が減り、冒険者の転職魔法陣が維持できなくなる場合だってある。
森の中で生きてきたエルフ族に船を作る知識や技術も無いだろうから、やっぱり陸路は用意しなきゃいけないだろう。
「それにエルフ族はあまり水が得意な種族じゃないからね。こうして眺める分にはとても感動するけれど、世界樹ユニが水で覆われている事に恐怖を覚える者も出てくるかもしれない。たとえ世界樹ユニが自分で作り出した光景だったとしてもだ」
「え? エルフって水が苦手なの? 我が家のポンコツエルフは入浴が趣味だったんだけど」
「流石に入浴や水浴びを恐れたりはしないけど、水って魔力を弾くだろう? 精霊魔法も作用しないから、川や湖を忌避するエルフは結構多いんじゃないかな」
「なるほど……。魔法系に強い種族だから、魔力と相性の悪いものを本能的に避けるってことか」
入浴や水浴びを恐れたりはしないって言い方的に、好んでそれをするエルフも少なそうに聞こえるんだけど……。
我が家のポンコツリーチェって、本当にエルフとしてもポンコツだったんじゃないのかなぁ?
リーチェがもしも水を嫌って入浴も嫌いだったとしたら、ネプトゥコで世界樹の護りを盗まれることもなかった気がする。
良かった。リーチェがポンコツで本当に良かった……!
「ダ~ン~? 君、今絶対失礼なこと考えてるでしょ~?」
「リーチェがお風呂嫌いじゃなくて良かったなと思っただけだよ。おいでおいで」
ほっぺを膨らませながら寄って来たリーチェに両手を広げて、お互い正面からぎゅーっと抱き締め合う。
……のはいいんだけど、胡坐をかいている俺の上に普通に乗ってきて、お互いの大切な部分を思いきり密着させてきているのはわざとかな?
当の本人は楽しそうに俺にスリスリ頬ずりしてくるもんだから聞くに聞けないよぉ。
「とりあえずだけど、陸路とアウターの入り口に関しては直ぐに対応するよ」
「……なぜだろうね。直ぐに対応すると聞いてしまったほうが不安を覚えるんだけど」
「他には何か無いかな? っというかこの湖……世界樹の湖はこのままにしててもいいのかな?」
「そう……だね。これは流石に私の独断では判断出来ないけど、陸路さえあれば不満は出ないと思う。植樹の手間も省けるし、世界樹の防衛という観点から見ると、周囲全てが水に覆われている状況は悪くないとも言えそうだから」
「なんにしてもまずは陸路が出来てからってことだね。それじゃまずはさっさと対応しちゃおう。このあとの予定も詰まってるし」
ユニの下でそれなりににゃんにゃんする予定だったので時間的な余裕はまだあるけど、この場を放置して海洋研究所に向かうことは出来ない以上、さっさと陸路を用意しないとどんどん予定が詰まってしまう。
チョッパヤで用事を終わらせないとケツカッチンって奴だね。
リーチェを抱き締めたままアウラも呼んで、精霊魔法使い2人の柔らかな温もりを感じながらメタドライブを発動する。
流石にアウラも落ち着いてくれたようだけど、対応にもちゃんと関わらせてあげないとな。
「えーっと……。居住地域方面に向かって陸路を伸ばすイメージで考えてるけど、ライオネルさん的には何か要望はある?」
「……そんな気軽に地形を変える相談をされても困るんだけど。とりあえず丈夫で長持ちする道なら何でもいいよ……」
「了解。こっちで適当に用意するね。リーチェとアウラは何かイメージあるかな?」
「あるわけないでしょ。先が見えない場所まで続くような巨大な橋なんてどこにもないからね?」
「パパのイメージでお願い。私じゃ上手いイメージが思い浮かばないから……」
呆れるリーチェと不安そうなアウラにちゅっちゅっとキスをして、そのままユニに寄りかかる。
両手は2人の精霊使いを捕まえているので、魔力接続する為にはこの方法しかないのだよっ。
「橋でもいいんだけど、それだと俺の知識が無いし、経年劣化でメンテナンスの必要性が出てきそうだからー……っと」
「お、おい……なんかまた揺れてねーか……!?」
大丈夫なのかと不安げにこちらを見てくるシーズにウィンクを返し、これ以上心配させないようにさっさとユニにイメージを伝えていく。
先ほどユニは地面を隆起させることも出来たのだから、橋をかける事に拘らず、陸路を作ってしまった方が手っ取り早いはずだ。
エルフたちの居住区方向に向かって水底から地面を隆起させ、水中から見たら恐らく巨大な壁のように見える1本の陸路を作り出した。
道幅はたっぷり20メートルは取ったはずだから、将来的にエルフの人口が爆発したとしても道からエルフが溢れる事はないだろ。
水中の壁には一定間隔で穴を空け、水の流れが抜ける道を一応用意しておく事にする。
「ニーナー。一応この道が湖の橋まで届いてるか、走って見てきてくれない?」
「了解なのー。ちょっと行ってくるねーっ」
二つ返事で了解してくれたニーナが、猛スピードで駆け出していった。
ひょっとして、まだ誰も走ったことがない道を走れたのが嬉しかったのかな?
「ダンさんの非常識さには慣れていたつもりだったけど……。こうもあっさりと大規模な地形変化を起こされちゃうと流石に舌を巻くよ……!」
「俺じゃなくてユニがやってんの。そこんとこ間違えちゃダメだよキュール。大事なところだからね?」
「世界樹を通して貴様が起こした事象なのだから、貴様がやったことだと思うがなぁ……。私はかつてこんな男から神器を強奪しようとしていたのかぁ……」
「結果的にカレンは心も体も俺に奪われちゃったねー? さて排水はどうするかなぁ。流れも一応あった方がいいのか?」
「あはーっ。ダン、あんまり拘っちゃダァメ。細かい要素はユニに任せて、ダンはニーナちゃんが戻ってくるまで良い子で待っていなさいねー。暇だったらリーチェとアウラをぎゅーっとしてていいからねー?」
なるほど。ティムルの言う通り、細かい部分はユニに任せちゃっていいのか。
そもそもこの水自体が湧き出たものじゃなくて魔力で発生させたものだから、あまり物理法則に従いすぎても失敗しそうだ。
それじゃニーナの報告待ちではあるけど、とりあえず陸路はこれでオッケーとして……。
「ついでに福音の花園の入り口も作っちゃおうか。これも俺のイメージでいいのかな?」
「……ねぇパパ。ライオネルさん的にはそうやって確認される方が辛いと思うの。ここはまず騒動を起こした私たちで対応してからライオネルさんに確認すべきだと思うよ?」
「そうなの? 作った後に問題が起こっても面倒かなと思ったんだけど、アウラが言うならきっとそうなんだね。じゃあパパが適当に作っちゃうよ」
アウラにはむっとキスをして、キスをしたままユニにイメージを伝えていく。
大規模な地形変化もお手軽に行なえちゃうユニならば、水底に沈んだ福音の花園の入り口を隆起させるのも簡単だろう。
けれどそれじゃ折角の湖が活かせないと思ったので、世界樹ユニのアウターに相応しい特別な仕様に仕上げよう。
アウラの口の中に舌を割り込ませるイメージで陸路の途中の一部を陥没させて、湖の底にあるアウター目掛けて長い階段上の道を作り出す。
「えーっと、アウター入り口に水が入らないよう透明で頑丈なガラスで保護して……。あ、地面を進むとポータルが適用されなくなるかもしれないから屋外判定になるよう地面まで吹き抜けに……」
「ただいまなのーっ! 道は間違いなく居住区まで伸びてたから問題ないのーっ!」
アウターの入り口作りをしていたら楽しげな笑い声と共にニーナが帰還して報告をしてくれる。
けれどもニーナはそこで止まらず、俺が抱きしめているアウラとリーチェごと俺を抱きしめてくれた。
ん~っ。リーチェもアウラもニーナも大好きすぎるぅ。
「道は問題ないけど、私が走ってる間に道を操作するのは危ないでしょーっ、ダンったら今日は失敗ばっかりなのーっ」
「うわ、確かにその通りだ……! ごめんニーナ、こっちの作業に集中しすぎてた……」
「ふっふーん。謝らなくていいんだよー? こんなダンもたまには新鮮で可愛いのーっ」
アウターの入り口を整備していた俺の思考は、ニーナの頬ずりで全てが霧散してしまった。
もうアウターまで道は通じたはずだし、細かいレイアウトはユニに任しちゃえっ。
そんなことより俺は目の前の3人を抱き締めなきゃいけないんだよーっ。ぎゅー。
「……旦那様って本当に崇められたくないんです? これって多分そこらの神様よりもよっぽど神らしい振る舞いだと思うんですけど?」
ヴァルゴがどう思うかは自由だけど、そこらの神様なんて知りませーん。
俺は可愛い奥さんと可愛い娘とスキンシップを取るのに忙しくてそれどころじゃないんでーす。
「ふ~。ニーナちゃんのおかげでダンの思考が中断されて良かったわぁ。それじゃ私が確認してきますから、ライオネルさんはここで少々お待ちくださいねぇ?」
「お、お願いするよティムルさん……。というかダンの奥さんたちは動じなすぎじゃないかい……?」
なんか遠くでティムルとライオネルさんが喋ってるけど、キスに参加してきたリーチェとニーナと舌を絡めるのが楽しすぎて他の事を考えている余裕が無いなっ。
あ、でも家族以外の人がいるからここではえっち出来ないのかぁ……!
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