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870 研究テーマ
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「……ねぇダン。コラプサーが居なくなった後、この世界って存続できるのかなぁ?」
「「「………………」」」
ニーナの発したひと言に、文字通りこの場の空気が凍り付く。
彼女は度々爆弾発言をしてきた気がするけれど、その中でも今回のは特大級の破壊力を持っていた。
そうだよ……。当然のようにコラプサー対策を進めていたけれど、現れたコラプサーを滅ぼしてやる気満々だったけど……。
そもそもこの世界って、コラプサー無しで存在できるのか……?
「……キュール! カレン! シャロ! 直ぐに専門の研究機関を立ち上げてくれる!? ガルフェリアの研究をするとか何とか言って、世界中から優秀な研究者を直ぐに掻き集めて欲しい!」
女神様たちの故郷は既に滅亡している……。にも拘らずその世界から魔力が供給され続けている理由は、コラプサーの中にデウス・エクス・マキナが取り込まれているから……。
コラプサーを滅ぼしたことでデウス・エクス・マキナが解放されれば問題ないけど、悠久の時を経てもデウス・エクス・マキナが作動しているところを考えてみても、ニーナの言う通り丸ごと取り込まれていると考える方が自然だろ……!
つまりコラプサーを滅ぼしたら、この世界への魔力流入も止まってしまう可能性が高い……!
「研究員にはコラプサーの存在を明かしてもいいから、異界の魔力無しにこの世界を維持する方法を……って、コラプサーが居なくなったらアウターも全て消失するのか!? そんなのこの世界の根本が丸ごと無くなるようなもんじゃ……!」
「くぅ……! ニーナさんに指摘されるまで気付かなかったなんて不覚だよ……! コラプサーの襲来の理由なんて考えてる場合じゃなかった……! 対抗策なんて考えても意味が無かった……! コラプサーが動いた時点でこの世界は滅亡してしまうなんて、そんな……!」
「落ち着いてダン! キュールも絶望してる場合じゃないのっ!」
突如響いた大きな音と、ニーナの叫び声にハッとさせられる。
俺とキュールの思考が沈みかけたのを察したニーナが、テーブルを強く叩いて無理矢理みんなの注意を集めてくれたようだ。
「自分独りで勝手に絶望しないっ! ダンもキュールもどうして自分が絶望しちゃってるのかちゃんと説明しなさいっ! みんなに話せばいいアイディアが浮かぶかもしれないでしょっ!」
「絶望……と言うよりは混乱に近いかも……。見落としていた事実に全てが台無しにされちゃいそうで焦っちゃったって言うか……」
「これまた不覚って奴だよ……! 私としたことが、みんなと情報の共有もしないうちに取り乱しちゃうなんてさぁ……!」
キュールと顔を合わせて、お互いやってしまったなと苦笑する。そして気持ちが落ち着けば、未だにカレンと繋がっていたことを思い出す。
カレンにチュッとキスをしてから身を離し、改めて話し合う体勢を整える。
「慌てちゃってごめんみんな。ニーナのおかげで落ち着いたから、改めてみんなの知恵を貸して欲しい」
ひと言前置きを挟んでから、コラプサーとこの世界の関係性を改めて話し合う。
世界を飲み込むコラプサーという脅威に対抗しなければいけないのに、この世界はそのコラプサーから流れ込む魔力に依存して成立しているのだ。
滅亡を回避するためにはコラプサーの撃退が絶対条件である一方で、コラプサーを撃退したことでこの世界を破滅に導いてしまうという、まさに八方塞がりの状態だった。
「コラプサーに滅ぼされた世界から逃げてきた女神様たちでさえ、この世界で生きていくためにはコラプサーとの繋がりを断てなかったんだ。つまり、本来は絶対に戦っちゃダメな相手なんだよな、コラプサーって」
「無抵抗で殺されるわけにはいかないのに、撃退する方法も分からない。仮に撃退できたとしても、その後に待っているのは破滅だけ、とはね。まったく、邪神も終の神も可愛く思えてきちゃうよ……」
「リュートの方が可愛いけど、世界を滅ぼされるわけにはいかないからコラプサーの撃退は必須だと思うよ」
世界を飲み込むコラプサーと話し合いの余地なんてあるわけないからな。
たとえコラプサーの撃退によって世界が滅びに至るとしても、コラプサーに殺されたら話にもならない。
「俺たちが考えるべきは、コラプサーが滅んだあとにどうやって生きていくかって点じゃないかな? 具体的なことは言えないけど」
「……コラプサーを撃退してもデウス・エクス・マキナを稼働させたままにする方法。もしくは、異界の魔力に頼らず生きていく方法を模索する感じかしらぁ?」
「さっきダンも言いかけた、異界の魔力無しにこの世界を維持する方法という奴じゃな? 口で言うのは簡単じゃが、さてどうしたものかのう……」
ティムルとフラッタの言葉を最後に、プツリと会話が途絶えてしまう。
一か八かデウス・エクス・マキナが維持されることを祈るには、失敗した時の代償が大きすぎる。かと言って異界の魔力無しにこの世界を維持していく方法も心当たりが無く、みんな俯き口を閉ざしてしまった。
そんな重苦しい空気の中、新たな切り口を提供してくれたのはシャロだった。
「そう言えばご主人様。先ほど研究機関を立ち上げろと仰いましたが、いったいなにを研究してもらう気だったんですか? ゼロからこの世界を救う方法を考えさせるのは、些か無理がある話と思いますが」
「あ、ああ。さっきは俺も動転しちゃっててさ。自分の中に何のアイディアも無かったから、それを探してもらえればって感じでつい口走っちゃった感じかな」
「そう、ですか。であるならやはり研究機関の立ち上げは急務でしょうけれれど……。ご主人様でも見当がついていないことを、他の者たちがゼロから見出せるかは怪しいですね……」
「あ、シャロ。具体的なアイディアは全くの白紙なんだけど、研究の方向性に関してはアテが無くもないんだ」
「「「えっ!?」」」
すぐ傍で会話していたシャロの声だけじゃなく、家族みんなから意外そうな声があがった。どうやらみんなには思い至らなかったようだ。
湖人族のみんなは仕方ないとしても、あの時に協力してくれたメンバーは気付いても良さそうなのに。
「今回避難所に選んだ『終焉の向こう側』だけど……。俺たちはあそこで1度、魔力が存在していなかった場所に新たな地形を生み出すことに成功してるよね?」
「「「――――――エーテルジェネレイターっ!!」」」
カレン以前にお迎えしたみんなの口から、一斉に同じ単語が発せられる。家族全員の魂が1つに繋がった体験とも言えるから、参加したみんなも非常に強く印象に残っているのだろう。
しかしキュールはそこで留まらずに、直ぐに疑問をぶつけてくる。
「……いや待ってよダンさん。確かに虚無空間に新たな世界を創造した、変世神話にも繋がるエーテルジェネレイターは奇跡と呼ぶに相応しい現象であると断言できるけど、どれだけ膨大な魔力を出力しても一瞬だけじゃ意味無いんじゃない?」
「……確かに女神様たちも、変世の為に異界から膨大な魔力を呼び寄せたと伝えられていますからね。そもそもダンさん以外の人に、女神様たちと同じことが出来るとは思えません」
キュールの疑問に乗じて否定的な意見を口にしたのはムーリだった。
トライラム様のことも変世の3女神のことも心から敬愛しているムーリにとって、創世に関わる技術であるエーテルジェネレイターを俺以外の人間が行使できるとは思えないようだ。
流石に現段階で、俺も普通の人間なんだけど? とツッコミを入れても受け入れられないだろうなぁ。
「順番に答えていこうか。まずキュールの疑問だけど、それ自体には俺も同意見なんだ。でも俺は何も、エーテルジェネレイターで問題を解決しようとは言ってないでしょ?」
「……へ?」
「そもそもの話、研究機関で何を研究するかって話だったのを忘れたの? 俺はねキュール。エーテルジェネレイターの性質を通して、魂の並行励起による魔力増幅現象単を研究してもらいたいんだよ」
「……あっ!!」
目玉が落っこちるんじゃないかと心配になるほど大きく目を見開いたキュールが、そのままの表情でわなわなと小さく体を震わせている。
あの時は全員の魂が繋がり合っていたからな。理屈抜きでキュールには理解できてしまったんだろう。俺たちの手を離れてなお増幅され、注ぎ込んだ以上の魔力を発生させたあの時の現象を。
確かにどれだけ膨大な魔力を生み出しても、その現象に持続性が無ければ世界の維持は叶わないだろう。
けれど注ぎ込んだよりも多くの魔力を発生させるエーテルジェネレイターの研究は、この世界を本当の意味で成立させるためには必要不可欠だと思うのだ。
「次にムーリの疑問だけど、お前も女神様たちの住処で見たはずだろ? 女神様たちが人の理解の及ばないような特別な存在ではなくて、俺たちと同じように生活をする、俺たちと同じような存在だってことをさ」
「……いいえ? 私があそこで感じたのは、やっぱりダンさんは女神様たちと同じ特別な存在なんだなーってことですけど」
「なんでだよっ!? 流石に居住空間からは生活感を感じ取ってくれよっ!?」
女神様たちだって俺たちと同じように食事して、眠って、家族と過ごす普通の人たちだったんだよって話をしたかったのに、なんで俺の方を女神様たちに寄せてんだっ、このエロシスターめっ!
俺たちと女神様たちには大きな違いは無いんだよって言いたかったのに、完全に話の腰を折られちゃったじゃないか、くっそー。
「そうじゃなくって、女神様たちだってルーラーズコアや世界樹とか、様々なマジックアイテムを用いてこの世界の管理を行なってきたわけでしょ? だからエーテルジェネレイターを研究して、それと同じ効果を持つマジックアイテムを開発できないかなって思ったんだよ」
「そんなマジックアイテム作れるわけないでしょ、って言いたいところだけど……。既にダン、色々作っちゃってるもんねぇ……」
「シスタームーリの言う通り、ダン以外の奴に同じことが出来るかと言われると微妙だけどな。でも確かにマジックアイテムの研究・開発の価値はありそうじゃねぇか?」
ムーリと同じく敬虔なトライラム教の信徒であるチャールとシーズだけど、ムーリよりも客観的な視点を持って俺の意見に賛同してくれる。
2人にはあとで沢山ご褒美を上げようと心に決めて話を続ける。
「女神様たちが変世した時と違って、今のこの世界には充分な魔力が既に満ちた状態だ。だからその魔力を元手にして、この世界を自立した世界として成立させることも不可能じゃないと思うんだよ」
「……ダンさん。それって女神様たちが作り上げたこの世界をもう1度作り直すって言ってない? 変世神話をもう1度やり直すってことにならないかしら?」
「そんなつもりは無かったけど、必要なら神話の再現くらいしてみせるよリーチェ。せっかく取り戻せたお前と幸せに天寿を全うするためならね」
「わ、私のためならって……。何言ってるのよ、まったくもう……」
「あははっ! 姉さんったら耳まで真っ赤になってるよーっ?」
真っ白な肌を湯気が出そうなくらい真っ赤に上気させた姉のリーチェを、褐色の妹リュートが楽しそうにからかっている。俺にとっては当たり前の発言だったつもりだけど、家族に迎えてまだ日が浅いリーチェにとっては慣れないセリフだったようだ。
真っ赤になって可愛すぎるリーチェのことは後で思い切り可愛がってあげよう。そんなお姉ちゃんをからかう悪い妹リュートへのお仕置きもセットだなっ。
段々思考がエロ方向に傾いてきたのを感じて、ようやくいつもの調子が戻ってきたことを実感する。そこでいつも通り傍らのシャロのおっぱいに手を伸ばしたところで、アウラが不安そうに尋ねてくる。
「……ねぇパパ。それで開発されるマジックアイテムって結局、コラプサーに取り込まれたっていうデウス・エクス・マキナになるんじゃないの?」
「む……。確かにこの方向性で行くと、永続的な魔力増幅機関であるデウス・エクス・マキナに辿り着くことになっちゃうのか?」
「そんなマジックアイテムを作って本当に平気? もしもまたコラプサーみたいな存在を引き寄せちゃったら本末転倒じゃないかな」
「デウス・エクス・マキナと言えばさー。なんでダンの新技もデウス・エクス・マキナなのかなー?」
「え……」
不安がるアウラを抱き締めるニーナが呟いたひと言に、自分でも驚くほど動揺してしまう。
俺の『デウス・エクス・マキナ』とコラプサーの『デウス・エクス・マキナ』か……。
俺のデウス・エクス・マキナの命名がルーラーズコアによって行われたものなら、両者は本質的に同じ現象ってことになりそうだ。だからあの技を編み出した時、ルーラーズコアか女神様から警告されてしまったのかもしれない。
だけど俺が家族を愛する先に編み出したデウス・エクス・マキナが、7種族が出会った先で誕生したあの奇跡が、数多の世界を滅ぼしたコラプサーと同質の現象だとはどうしても思えない。
恐らくニーナは深く考えずに口にしてしまっただけだと思うけど……。
1度指摘されてしまうと、何気に重要な要素の気がして仕方ない。
「その辺も含めて、やっぱり専門の研究機関は必要だと思う。王国、帝国問わず、世界中から優秀な人材を集めてもらえる?」
「……このあとマギー陛下のところに行くぞダン」
公に動き出す前に、俺たち家族の間で共通の認識を持っておくべきだとカレンに提案される。
ついでにマギーのことも可愛がってあげれば登城するのも苦ではないな。
「実際には俺がお金を出すけど、表向きは王国、帝国の共同出資の施設ってことで、最高責任者はキュール以下究明の道標4人ってことで宜しく。シャロたち女郎蜘蛛もサポートに回ってもらえる?」
「いい加減、ご主人様の名前を出しても誰も気にしないと思いますけどね? まぁ今回は臨時の研究機関ということで良しとしましょう」
「研究員の雇用に関しても一任するよ。チャールとシーズに関しては心配してないけど、マドゥも遠慮せずに意見してやって」
「え~……。ダン様の信頼が重いよぅ……」
あら、気軽に発言してねって意味のつもりだったけど、彼女の持つ超直感に期待しているって意味に捉えられちゃったかな? あとでフォローしておかないとな、ベッドの上で?
マギーとの話し合いは朝まで続けられると思うので、お留守番の皆のことは出かける前にしっかり満たしてあげなければいけない。
今夜もいつも通り忙しくなるなぁと思いつつ、シャロのおっぱいをもみもみと堪能したのだった。
「「「………………」」」
ニーナの発したひと言に、文字通りこの場の空気が凍り付く。
彼女は度々爆弾発言をしてきた気がするけれど、その中でも今回のは特大級の破壊力を持っていた。
そうだよ……。当然のようにコラプサー対策を進めていたけれど、現れたコラプサーを滅ぼしてやる気満々だったけど……。
そもそもこの世界って、コラプサー無しで存在できるのか……?
「……キュール! カレン! シャロ! 直ぐに専門の研究機関を立ち上げてくれる!? ガルフェリアの研究をするとか何とか言って、世界中から優秀な研究者を直ぐに掻き集めて欲しい!」
女神様たちの故郷は既に滅亡している……。にも拘らずその世界から魔力が供給され続けている理由は、コラプサーの中にデウス・エクス・マキナが取り込まれているから……。
コラプサーを滅ぼしたことでデウス・エクス・マキナが解放されれば問題ないけど、悠久の時を経てもデウス・エクス・マキナが作動しているところを考えてみても、ニーナの言う通り丸ごと取り込まれていると考える方が自然だろ……!
つまりコラプサーを滅ぼしたら、この世界への魔力流入も止まってしまう可能性が高い……!
「研究員にはコラプサーの存在を明かしてもいいから、異界の魔力無しにこの世界を維持する方法を……って、コラプサーが居なくなったらアウターも全て消失するのか!? そんなのこの世界の根本が丸ごと無くなるようなもんじゃ……!」
「くぅ……! ニーナさんに指摘されるまで気付かなかったなんて不覚だよ……! コラプサーの襲来の理由なんて考えてる場合じゃなかった……! 対抗策なんて考えても意味が無かった……! コラプサーが動いた時点でこの世界は滅亡してしまうなんて、そんな……!」
「落ち着いてダン! キュールも絶望してる場合じゃないのっ!」
突如響いた大きな音と、ニーナの叫び声にハッとさせられる。
俺とキュールの思考が沈みかけたのを察したニーナが、テーブルを強く叩いて無理矢理みんなの注意を集めてくれたようだ。
「自分独りで勝手に絶望しないっ! ダンもキュールもどうして自分が絶望しちゃってるのかちゃんと説明しなさいっ! みんなに話せばいいアイディアが浮かぶかもしれないでしょっ!」
「絶望……と言うよりは混乱に近いかも……。見落としていた事実に全てが台無しにされちゃいそうで焦っちゃったって言うか……」
「これまた不覚って奴だよ……! 私としたことが、みんなと情報の共有もしないうちに取り乱しちゃうなんてさぁ……!」
キュールと顔を合わせて、お互いやってしまったなと苦笑する。そして気持ちが落ち着けば、未だにカレンと繋がっていたことを思い出す。
カレンにチュッとキスをしてから身を離し、改めて話し合う体勢を整える。
「慌てちゃってごめんみんな。ニーナのおかげで落ち着いたから、改めてみんなの知恵を貸して欲しい」
ひと言前置きを挟んでから、コラプサーとこの世界の関係性を改めて話し合う。
世界を飲み込むコラプサーという脅威に対抗しなければいけないのに、この世界はそのコラプサーから流れ込む魔力に依存して成立しているのだ。
滅亡を回避するためにはコラプサーの撃退が絶対条件である一方で、コラプサーを撃退したことでこの世界を破滅に導いてしまうという、まさに八方塞がりの状態だった。
「コラプサーに滅ぼされた世界から逃げてきた女神様たちでさえ、この世界で生きていくためにはコラプサーとの繋がりを断てなかったんだ。つまり、本来は絶対に戦っちゃダメな相手なんだよな、コラプサーって」
「無抵抗で殺されるわけにはいかないのに、撃退する方法も分からない。仮に撃退できたとしても、その後に待っているのは破滅だけ、とはね。まったく、邪神も終の神も可愛く思えてきちゃうよ……」
「リュートの方が可愛いけど、世界を滅ぼされるわけにはいかないからコラプサーの撃退は必須だと思うよ」
世界を飲み込むコラプサーと話し合いの余地なんてあるわけないからな。
たとえコラプサーの撃退によって世界が滅びに至るとしても、コラプサーに殺されたら話にもならない。
「俺たちが考えるべきは、コラプサーが滅んだあとにどうやって生きていくかって点じゃないかな? 具体的なことは言えないけど」
「……コラプサーを撃退してもデウス・エクス・マキナを稼働させたままにする方法。もしくは、異界の魔力に頼らず生きていく方法を模索する感じかしらぁ?」
「さっきダンも言いかけた、異界の魔力無しにこの世界を維持する方法という奴じゃな? 口で言うのは簡単じゃが、さてどうしたものかのう……」
ティムルとフラッタの言葉を最後に、プツリと会話が途絶えてしまう。
一か八かデウス・エクス・マキナが維持されることを祈るには、失敗した時の代償が大きすぎる。かと言って異界の魔力無しにこの世界を維持していく方法も心当たりが無く、みんな俯き口を閉ざしてしまった。
そんな重苦しい空気の中、新たな切り口を提供してくれたのはシャロだった。
「そう言えばご主人様。先ほど研究機関を立ち上げろと仰いましたが、いったいなにを研究してもらう気だったんですか? ゼロからこの世界を救う方法を考えさせるのは、些か無理がある話と思いますが」
「あ、ああ。さっきは俺も動転しちゃっててさ。自分の中に何のアイディアも無かったから、それを探してもらえればって感じでつい口走っちゃった感じかな」
「そう、ですか。であるならやはり研究機関の立ち上げは急務でしょうけれれど……。ご主人様でも見当がついていないことを、他の者たちがゼロから見出せるかは怪しいですね……」
「あ、シャロ。具体的なアイディアは全くの白紙なんだけど、研究の方向性に関してはアテが無くもないんだ」
「「「えっ!?」」」
すぐ傍で会話していたシャロの声だけじゃなく、家族みんなから意外そうな声があがった。どうやらみんなには思い至らなかったようだ。
湖人族のみんなは仕方ないとしても、あの時に協力してくれたメンバーは気付いても良さそうなのに。
「今回避難所に選んだ『終焉の向こう側』だけど……。俺たちはあそこで1度、魔力が存在していなかった場所に新たな地形を生み出すことに成功してるよね?」
「「「――――――エーテルジェネレイターっ!!」」」
カレン以前にお迎えしたみんなの口から、一斉に同じ単語が発せられる。家族全員の魂が1つに繋がった体験とも言えるから、参加したみんなも非常に強く印象に残っているのだろう。
しかしキュールはそこで留まらずに、直ぐに疑問をぶつけてくる。
「……いや待ってよダンさん。確かに虚無空間に新たな世界を創造した、変世神話にも繋がるエーテルジェネレイターは奇跡と呼ぶに相応しい現象であると断言できるけど、どれだけ膨大な魔力を出力しても一瞬だけじゃ意味無いんじゃない?」
「……確かに女神様たちも、変世の為に異界から膨大な魔力を呼び寄せたと伝えられていますからね。そもそもダンさん以外の人に、女神様たちと同じことが出来るとは思えません」
キュールの疑問に乗じて否定的な意見を口にしたのはムーリだった。
トライラム様のことも変世の3女神のことも心から敬愛しているムーリにとって、創世に関わる技術であるエーテルジェネレイターを俺以外の人間が行使できるとは思えないようだ。
流石に現段階で、俺も普通の人間なんだけど? とツッコミを入れても受け入れられないだろうなぁ。
「順番に答えていこうか。まずキュールの疑問だけど、それ自体には俺も同意見なんだ。でも俺は何も、エーテルジェネレイターで問題を解決しようとは言ってないでしょ?」
「……へ?」
「そもそもの話、研究機関で何を研究するかって話だったのを忘れたの? 俺はねキュール。エーテルジェネレイターの性質を通して、魂の並行励起による魔力増幅現象単を研究してもらいたいんだよ」
「……あっ!!」
目玉が落っこちるんじゃないかと心配になるほど大きく目を見開いたキュールが、そのままの表情でわなわなと小さく体を震わせている。
あの時は全員の魂が繋がり合っていたからな。理屈抜きでキュールには理解できてしまったんだろう。俺たちの手を離れてなお増幅され、注ぎ込んだ以上の魔力を発生させたあの時の現象を。
確かにどれだけ膨大な魔力を生み出しても、その現象に持続性が無ければ世界の維持は叶わないだろう。
けれど注ぎ込んだよりも多くの魔力を発生させるエーテルジェネレイターの研究は、この世界を本当の意味で成立させるためには必要不可欠だと思うのだ。
「次にムーリの疑問だけど、お前も女神様たちの住処で見たはずだろ? 女神様たちが人の理解の及ばないような特別な存在ではなくて、俺たちと同じように生活をする、俺たちと同じような存在だってことをさ」
「……いいえ? 私があそこで感じたのは、やっぱりダンさんは女神様たちと同じ特別な存在なんだなーってことですけど」
「なんでだよっ!? 流石に居住空間からは生活感を感じ取ってくれよっ!?」
女神様たちだって俺たちと同じように食事して、眠って、家族と過ごす普通の人たちだったんだよって話をしたかったのに、なんで俺の方を女神様たちに寄せてんだっ、このエロシスターめっ!
俺たちと女神様たちには大きな違いは無いんだよって言いたかったのに、完全に話の腰を折られちゃったじゃないか、くっそー。
「そうじゃなくって、女神様たちだってルーラーズコアや世界樹とか、様々なマジックアイテムを用いてこの世界の管理を行なってきたわけでしょ? だからエーテルジェネレイターを研究して、それと同じ効果を持つマジックアイテムを開発できないかなって思ったんだよ」
「そんなマジックアイテム作れるわけないでしょ、って言いたいところだけど……。既にダン、色々作っちゃってるもんねぇ……」
「シスタームーリの言う通り、ダン以外の奴に同じことが出来るかと言われると微妙だけどな。でも確かにマジックアイテムの研究・開発の価値はありそうじゃねぇか?」
ムーリと同じく敬虔なトライラム教の信徒であるチャールとシーズだけど、ムーリよりも客観的な視点を持って俺の意見に賛同してくれる。
2人にはあとで沢山ご褒美を上げようと心に決めて話を続ける。
「女神様たちが変世した時と違って、今のこの世界には充分な魔力が既に満ちた状態だ。だからその魔力を元手にして、この世界を自立した世界として成立させることも不可能じゃないと思うんだよ」
「……ダンさん。それって女神様たちが作り上げたこの世界をもう1度作り直すって言ってない? 変世神話をもう1度やり直すってことにならないかしら?」
「そんなつもりは無かったけど、必要なら神話の再現くらいしてみせるよリーチェ。せっかく取り戻せたお前と幸せに天寿を全うするためならね」
「わ、私のためならって……。何言ってるのよ、まったくもう……」
「あははっ! 姉さんったら耳まで真っ赤になってるよーっ?」
真っ白な肌を湯気が出そうなくらい真っ赤に上気させた姉のリーチェを、褐色の妹リュートが楽しそうにからかっている。俺にとっては当たり前の発言だったつもりだけど、家族に迎えてまだ日が浅いリーチェにとっては慣れないセリフだったようだ。
真っ赤になって可愛すぎるリーチェのことは後で思い切り可愛がってあげよう。そんなお姉ちゃんをからかう悪い妹リュートへのお仕置きもセットだなっ。
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「……ねぇパパ。それで開発されるマジックアイテムって結局、コラプサーに取り込まれたっていうデウス・エクス・マキナになるんじゃないの?」
「む……。確かにこの方向性で行くと、永続的な魔力増幅機関であるデウス・エクス・マキナに辿り着くことになっちゃうのか?」
「そんなマジックアイテムを作って本当に平気? もしもまたコラプサーみたいな存在を引き寄せちゃったら本末転倒じゃないかな」
「デウス・エクス・マキナと言えばさー。なんでダンの新技もデウス・エクス・マキナなのかなー?」
「え……」
不安がるアウラを抱き締めるニーナが呟いたひと言に、自分でも驚くほど動揺してしまう。
俺の『デウス・エクス・マキナ』とコラプサーの『デウス・エクス・マキナ』か……。
俺のデウス・エクス・マキナの命名がルーラーズコアによって行われたものなら、両者は本質的に同じ現象ってことになりそうだ。だからあの技を編み出した時、ルーラーズコアか女神様から警告されてしまったのかもしれない。
だけど俺が家族を愛する先に編み出したデウス・エクス・マキナが、7種族が出会った先で誕生したあの奇跡が、数多の世界を滅ぼしたコラプサーと同質の現象だとはどうしても思えない。
恐らくニーナは深く考えずに口にしてしまっただけだと思うけど……。
1度指摘されてしまうと、何気に重要な要素の気がして仕方ない。
「その辺も含めて、やっぱり専門の研究機関は必要だと思う。王国、帝国問わず、世界中から優秀な人材を集めてもらえる?」
「……このあとマギー陛下のところに行くぞダン」
公に動き出す前に、俺たち家族の間で共通の認識を持っておくべきだとカレンに提案される。
ついでにマギーのことも可愛がってあげれば登城するのも苦ではないな。
「実際には俺がお金を出すけど、表向きは王国、帝国の共同出資の施設ってことで、最高責任者はキュール以下究明の道標4人ってことで宜しく。シャロたち女郎蜘蛛もサポートに回ってもらえる?」
「いい加減、ご主人様の名前を出しても誰も気にしないと思いますけどね? まぁ今回は臨時の研究機関ということで良しとしましょう」
「研究員の雇用に関しても一任するよ。チャールとシーズに関しては心配してないけど、マドゥも遠慮せずに意見してやって」
「え~……。ダン様の信頼が重いよぅ……」
あら、気軽に発言してねって意味のつもりだったけど、彼女の持つ超直感に期待しているって意味に捉えられちゃったかな? あとでフォローしておかないとな、ベッドの上で?
マギーとの話し合いは朝まで続けられると思うので、お留守番の皆のことは出かける前にしっかり満たしてあげなければいけない。
今夜もいつも通り忙しくなるなぁと思いつつ、シャロのおっぱいをもみもみと堪能したのだった。
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普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
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ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
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