エルフの恋の話~王子妃セスから冒険者レノになった話 シリーズ第3弾~

氷室 裕

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⑭長い片想い

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 ヒューベルトから、エルフィードがアンティジェリア王国へ帰ると聞いた。

 あれから3日経った。今日がその満月の日だ・・エルフィードがいなくなる日か。

 俺はウルクハイの討伐と周辺調査の為、森に入る。今日を避けるべきだったか?エルフィードに別れを告げてから行くべきだったか?

 いや、何度経験しても別れは辛い・・きっと今日で良かったんだ、会わないままでいいんだ。

 エルフィードに愛してると伝えた。でも逃げられてしまった。

 いきなり過ぎたのか?
 ヒューベルトには告白は早過ぎると指摘されてしまったが、そうなのか?今じゃなければ、いつなら良かったんだ?俺は随分長く待ったつもりだが。

 場所は選んだつもりだし、あそこは思い出の場所だ・・それにエルフィードは星空が好きだろ?

 俺はエルフィードを諦めるなんて考えてはいない、だけど俺はエルフィードの自由を奪うつもりもない。だから悩むんだ。

 子供の頃から何度もエルフィードに会ってきた。湖や丘で過ごしてきた。星空を見上げて笑いあった。森にも行った、俺とエルフィードの大事な場所だ。
 なのに、ちっとも距離が縮まらない。エルフィードは、俺の事をいったい何だと思っているんだ?

「はぁ・・まったく・・さて、次はどうするかな・・また冒険者として見守るか?」

 数年前、エルフィードが自国を飛び出したとアメデオから聞いて随分探したんだ。誰に聞いても誰も知らない。寂しがり屋のエルフィードが、たったひとりで旅立ってしまった。俺は居てもたってもいられなかった。

 エルフィードが国を飛び出してしばらく経った頃、アンティジェリア王国にいる事を人伝に聞いて分かった。ギルドで仕事をするには危なっかしくて、心配で何度も同じパーティに参加して援護した。
 エルフィードが俺に気が付いてくれなくて、『よく一緒になるな?よろしく』なんて挨拶するものだから、結局俺は何も言い出せなくなってしまった。

 俺は自国での公務もあったし、ルーカス兄上の補佐もしながら、それでもなるべくエルフィードを見守り続けた。

 あの頃、ヒューベルトの側近であり親友だったルシオが戦死して、ヒューベルトが自分を責めて国を出ると言い出した。自暴自棄になるヒューベルトを誰も止められはしなかったし、俺は周囲を黙らせてヒューベルトを自由にした。

 絶対に連絡だけは途絶えさせず、家族がどれ程ヒューベルトを愛しているか、決して忘れないようにと強く言い聞かせて。

 優秀なソラルを新たに側近として貼り付けて、俺との連絡を絶えさせずにヒューベルトの事も見守った。

 ヒューベルトは俺に従ってアンティジェリア王国のギルドに身を寄せた。ヒューベルトはきっと俺の思惑など全てお見通しだったに違いないが、うまくエルフィードと知り合い、俺に代わって関わりを持つようになってくれた。
 それが今では親友だなんて言うんだから、本当に不思議なものだ。

 ヒューベルトは呆れた顔をしながら、「そろそろ諦めて下さい、エルフィードは恋をしてますよ」と言われた時には、言い表せない程の虚脱状態が続いたものだ。

 早く迎えに行けば良かったんだ。成人したらなんて思わないで、早く手に入れておけば良かったんだ。エルフィードの事を尊重し過ぎて、いつも失敗ばかりする。

 俺の下手な身振り手振りのせいで、エルフィードへの距離も掴めず、今回だって早合点して困らせた。

 おかしいな・・他の女相手なら簡単に済むんだが。惹かれもしない相手ばかりに関わってきたせいで、俺も随分恋愛下手になったものだ。

「しかし、元気でいるようにと別れを告げてしまった手前、んー・・これから、どうするかな・・」

 ウルクハイの調査の間に、エルフィードとの事をじっくりと考えて見るか・・そろそろ本当に潮時かも知れない。

「出会ってから11年か・・長い片思いだな・・まったく」

 俺は馬を駆けながら、自分自身に呆れながら森へと向かった。







 





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