王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第6章 恋の話編

⑬メリアスの恋

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「妖、精・・可愛いな・・」

 レオが俺の家でお茶を飲みながら、手のひらにちょこんと座るメリアスを見ている。

 レオは、クッキーを小さく砕いてメリアスに与えると、可愛らしく食べる様子を興味深げに観察している。

 メリアスは、レオが家に来てからずっとレオから離れないでいる。
 どうやらメリアスは、初対面にしてすっかりレオに魅力されてしまったようだ。

 うん・・仕方がない。

 レオは老若男女、子供たちにも憧れられちゃうような、カッコイイ王子様だから。
 それにしても、妖精にまで好かれちゃうなんてね。

「メリアス、すっかりレオの事が好きみたいですね?」

 メリアスは、レオの金色の髪に絡まってみたり、ポケットの中に入ってみたり、はたまた鼻の頭にキスしたりして落ちつかない。

「まさかセスが妖精と暮らしているなんて、驚いたな・・」

 俺は、命の危機だった事は伏せて、妖精メリアスを助けたかわりに、怪我を治してもらったのだと話した。
 きっとレオは、俺が死ぬかもしれなかったと聞けば驚いてしまうかも知れないから。

 あれからメリアスは、俺にくっついてずっと離れなかったし、特に不都合もなかったから家で一緒に過ごしていた。

 俺がギルドのお仕事の時に一緒に来る事もあったし、どこかへ出かけて行って数日帰って来ない事もあった。
 けれど、やっぱりメリアスは俺の所に帰ってきた。

 でも今はレオにくっついていて、俺の事なんて忘れてしまったみたいだ。

「可愛らしいですよね、妖精って。言葉を話さなくても何となく言っている事が分かるんですよ?」
「そうだね。だけどこれじゃあセスと愛し合えないね・・ねぇ、メリアス?少しだけセスとふたりきりにさせてもらえないかな?」

 するとメリアスは、くるんと宙返りしたかと思うと窓をノックする。

「ん?メリアス、外に行きたいの?」

 俺が訊ねると、うんうんと頷いて外に出ていってしまった。

「メリアス、レオの言う事なら素直に聞くんですね。俺の言う事なんて、ちっとも聞かないでイタズラばかりするんですよ?」
「ふふっ、そうなの?あの妖精は光の妖精だね・・聖なる力を持っている。それにもしかして・・」
「もしかして?」

 レオが何か考えながら、続きを言うのをやめてしまった。

「いや、そんな事より」

 そう言って、俺に近づいてくる。
 目が合ってドキドキしてしまう。長い間会わなかったから、とても恥ずかしい。

 話さないまま2ヶ月の間王宮で過ごし、その後はレオに再会するまで半年近く会わなかった。

 レオがクリスさんだと知らないまま過ごしたから、俺の中ではクリスさんと関わってきた間はレオと会ってないのと同じなんだ。

 レオと会わなかった間、俺の生活は一変した。失ったものも、得たものも両方大きくて、ただ今俺は自由に生きているっていう実感がある。

 仲間たちに恵まれて、いろんな国を見て、ひとりでも戦える力がある事が何より嬉しいんだ。

 こうしてふたりでいても、レオは遠い存在に思える・・あのお城に住む王子様だから。例えふたりでいられなくなっても、レオが元気で幸せでいてくれるなら、俺は幸せだ。

「セス・・」

 深いサファイアの瞳に吸い込まれていく。
 俺の手を引いていく。レオはソファーに座ると、膝の上に俺を座らせる。
 対面で見つめ合う・・恥ずかしい。
 レオが俺の頬や首筋を指先でなぞる。

「ン・・」
「ふふっ。セス、可愛いね」

 唇が触れ合って、それが気持ちよくて身体がふるりと震える。レオは俺に深いキスをして、それからソファーに押し倒した。



 空が暗くなって、一日が終わろうとしている
 窓の外から「コンコンコン」と小さく音がしてメリアスが戻って来たのが分かった。

 レオを相当気に入っているのは分かったけれど、まさかレオと一緒に王宮へ行ってしまうとは思わなかった。

「レオ、本当に良いんですか?メリアスは迷惑になりませんか?」
「ああ、大丈夫だよ?来たければ、私と来ればいいよ。それに飽きればまたセスの元に戻るだろうから」

 そう言って、メリアスを連れて王宮へ帰って行った。

 メリアスは、本当に嬉しそうにレオの周りをキラキラと光を放ちながら飛び回っていた。







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