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第14章 レノのいない世界編
①失感情と側近
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強い怒りを感じる。
かと言って感情を表に出さない・・ただ無感情に不合理に無茶をしているように見える。
希望を失い、自分などどうなってもいいとやけになっているのだろう。失望などのために投げやりな行動をして、自分を駄目にしようとしている。
まるで自分自身の身体など損っても構わないと、そんな戦い方にしか到底見えない。
「貴方はご自身のことを粗末に扱って、早く死にたいとでも思っているのですか!?レオナルド殿下!」
自分を責めてさえいる。
殿下にとって失ったものがあまりにも大きすぎて、将来に希望を持てず悲観的になって現実逃避をしたくなるのだろう。
「・・・」
「そんな無謀な戦い方をして・・見ている兵士たちの方が不安になります。それに迷宮を潰すのはお止め下さい」
現実を見たくない・・失意、失望、絶望、絶念、悲観、自棄・・将来の希望を捨てることに何の躊躇もない。
ふてくされる、無謀、 無鉄砲・・そういう合理的で自然な放棄にとどまらない愚かしい終わり方をしようとしている。
苦痛回避衝動を超越する自由な営為が人間の忍耐であるが、この忍耐に失敗し苦痛に負けたのであれば、そのまま生の自己保存則を失う。
理性も自然もかなぐりすてて、自身を陥れる終わり方をすることがある・・まさにこのお方の、自暴自棄という愚行だ。
私はレオナルド殿下の側に立つと、近くに腰掛けさせた。
いつもなら怪我など微塵もしないのに、セス様がいなくなってからは傷付く事すら望んでいるように見える・・心の痛みを、体の痛みに置き換えて耐えているのだろう。
「結局、ドラゴンもお1人で握りつぶしてしまいましたね・・手加減せずに無茶をするから、迷宮が崩れ落ちました・・無駄に怪我まで負って・・殿下なら無傷で対処出来たはずでしょう?」
「・・治すな・・癒さなくていい・・」
掴んだ私の手を払い除けて、血塗れの手を無関心に放り出した。
「殿下、我儘を言わないで下さい!さあ、早く傷を癒して帰還しますよ!」
「兵士たちを連れて先に帰れ・・私は寄り道をして帰還する・・」
「何を馬鹿な事を!はぁ・・貴方、まさか死ぬ気ですか!?ならこの私もお供いたします!」
「・・いや・・自害は許されないんだ・・心配するな・・」
先般の忍耐放棄は、自己破壊という自然も呆れ果てる終焉となるが・・殿下は自害はしないと仰る。許されるならば、すぐにでも自害しそうな顔をしている。
自分で自分を破滅させる反自然で反理性の最悪の忍耐放棄、それをしないと言うのなら何と戦うつもりだ?
「殿下にとって最強のドラゴンですら相手になりません。貴方はお強すぎるのですよ・・なら何と戦って死のうと言うのです?戦死なら聞こえは自害よりマシですからね・・」
「オットー・・私を殺せ・・」
「は!?殿下は公爵家を朽ちさせたいのですか?嫌ですよ?冗談じゃない」
「はぁ・・身投げも許されず・・魔物も弱い・・お前は私の命令に背く・・俺は!俺はもう!生きていたくないんだ!」
「俺」か・・私が苦労して「私」と修正して差し上げたのに、これはお仕置が必要ですね・・
それに、この難攻不落な王子は、自虐的に鬱憤を暴発させて、見境なく当たり散らすことなど絶対にしない、ありえない。
ただ1つだけ、そうなっても不思議ではない存在・・セス様・・絶望的になって、死すら受け入れようとする・・感情のコントロールなどお手のものでしょうに、余程我慢の限界のようですね。
セス様に別れを告げられてから、殿下は笑わなくなり、難解な討伐ばかりに出向くようになった。まるで死に場所を探すかのようで、私は殿下の側から離れられなくなった。
「王子を3人も泣かせるなんて、罪なお人ですね・・セス様は」
「・・何を言っている・・セスはヒューベルトと・・いや、もうその名すら口にしたくない・・」
何を言っている?・・とは?殿下の方こそ何を?セス様は、誰の事も選ばずに国を出たのでは?私の思い違いだろうか・・
あのセス様が、誰かを傷つけてまで、誰かと幸せになろうとするなんて有り得ないだろうに?きっと全てを精算する、セス様はそんなお人だ。
「確かめたのですか?本当にセス様がヒューベルト殿下と結ばれたかどうか」
「しかし・・だって・・セスが・・私じゃなくヒューベルトを・・」
「だから!確認したのかと聞いているんですよ!いつまでもメソメソされては、こちらも迷惑なんですよ!それに死なれても困ります!貴方は国益そのものなんですよ!自覚をお持ちなさい!」
全く、手がかかる・・
失恋ねぇ・・まあ、確かに殿下にとってセス様は特別だ。あの天使のように可愛らしいお方に、殿下は心を奪われた。
何事にも無関心だった生意気な王子が柔らかく笑うようになり、他者を思う気持ちに気が付いて、今では人間らしい豊かな感情を手に入れた。
セス様の為に全ての努力を惜しまず、誰よりも優れた天下無双の王子となった・・全てセス様の為に。セス様が生まれた時からとても大切にしていた。12才で初恋を自覚して、15年も待って結婚したんだ、どれほど愛してやまないか分かる。
私とて、セス様のお人柄が好きだし、天使の様に可愛らしいお顔を見れないのはあまりにも寂しい。
「さっさと帰還して、まずはする事がありますね?殿下」
私は殿下の腕を乱暴に掴むと、投げやりに治癒魔法を行使して汚れまで消して差し上げた。
「・・痛い・・」
「知りません!行きますよ!」
レオナルド殿下は苦笑いして、勇ましく兵士たちに帰還を告げた。
かと言って感情を表に出さない・・ただ無感情に不合理に無茶をしているように見える。
希望を失い、自分などどうなってもいいとやけになっているのだろう。失望などのために投げやりな行動をして、自分を駄目にしようとしている。
まるで自分自身の身体など損っても構わないと、そんな戦い方にしか到底見えない。
「貴方はご自身のことを粗末に扱って、早く死にたいとでも思っているのですか!?レオナルド殿下!」
自分を責めてさえいる。
殿下にとって失ったものがあまりにも大きすぎて、将来に希望を持てず悲観的になって現実逃避をしたくなるのだろう。
「・・・」
「そんな無謀な戦い方をして・・見ている兵士たちの方が不安になります。それに迷宮を潰すのはお止め下さい」
現実を見たくない・・失意、失望、絶望、絶念、悲観、自棄・・将来の希望を捨てることに何の躊躇もない。
ふてくされる、無謀、 無鉄砲・・そういう合理的で自然な放棄にとどまらない愚かしい終わり方をしようとしている。
苦痛回避衝動を超越する自由な営為が人間の忍耐であるが、この忍耐に失敗し苦痛に負けたのであれば、そのまま生の自己保存則を失う。
理性も自然もかなぐりすてて、自身を陥れる終わり方をすることがある・・まさにこのお方の、自暴自棄という愚行だ。
私はレオナルド殿下の側に立つと、近くに腰掛けさせた。
いつもなら怪我など微塵もしないのに、セス様がいなくなってからは傷付く事すら望んでいるように見える・・心の痛みを、体の痛みに置き換えて耐えているのだろう。
「結局、ドラゴンもお1人で握りつぶしてしまいましたね・・手加減せずに無茶をするから、迷宮が崩れ落ちました・・無駄に怪我まで負って・・殿下なら無傷で対処出来たはずでしょう?」
「・・治すな・・癒さなくていい・・」
掴んだ私の手を払い除けて、血塗れの手を無関心に放り出した。
「殿下、我儘を言わないで下さい!さあ、早く傷を癒して帰還しますよ!」
「兵士たちを連れて先に帰れ・・私は寄り道をして帰還する・・」
「何を馬鹿な事を!はぁ・・貴方、まさか死ぬ気ですか!?ならこの私もお供いたします!」
「・・いや・・自害は許されないんだ・・心配するな・・」
先般の忍耐放棄は、自己破壊という自然も呆れ果てる終焉となるが・・殿下は自害はしないと仰る。許されるならば、すぐにでも自害しそうな顔をしている。
自分で自分を破滅させる反自然で反理性の最悪の忍耐放棄、それをしないと言うのなら何と戦うつもりだ?
「殿下にとって最強のドラゴンですら相手になりません。貴方はお強すぎるのですよ・・なら何と戦って死のうと言うのです?戦死なら聞こえは自害よりマシですからね・・」
「オットー・・私を殺せ・・」
「は!?殿下は公爵家を朽ちさせたいのですか?嫌ですよ?冗談じゃない」
「はぁ・・身投げも許されず・・魔物も弱い・・お前は私の命令に背く・・俺は!俺はもう!生きていたくないんだ!」
「俺」か・・私が苦労して「私」と修正して差し上げたのに、これはお仕置が必要ですね・・
それに、この難攻不落な王子は、自虐的に鬱憤を暴発させて、見境なく当たり散らすことなど絶対にしない、ありえない。
ただ1つだけ、そうなっても不思議ではない存在・・セス様・・絶望的になって、死すら受け入れようとする・・感情のコントロールなどお手のものでしょうに、余程我慢の限界のようですね。
セス様に別れを告げられてから、殿下は笑わなくなり、難解な討伐ばかりに出向くようになった。まるで死に場所を探すかのようで、私は殿下の側から離れられなくなった。
「王子を3人も泣かせるなんて、罪なお人ですね・・セス様は」
「・・何を言っている・・セスはヒューベルトと・・いや、もうその名すら口にしたくない・・」
何を言っている?・・とは?殿下の方こそ何を?セス様は、誰の事も選ばずに国を出たのでは?私の思い違いだろうか・・
あのセス様が、誰かを傷つけてまで、誰かと幸せになろうとするなんて有り得ないだろうに?きっと全てを精算する、セス様はそんなお人だ。
「確かめたのですか?本当にセス様がヒューベルト殿下と結ばれたかどうか」
「しかし・・だって・・セスが・・私じゃなくヒューベルトを・・」
「だから!確認したのかと聞いているんですよ!いつまでもメソメソされては、こちらも迷惑なんですよ!それに死なれても困ります!貴方は国益そのものなんですよ!自覚をお持ちなさい!」
全く、手がかかる・・
失恋ねぇ・・まあ、確かに殿下にとってセス様は特別だ。あの天使のように可愛らしいお方に、殿下は心を奪われた。
何事にも無関心だった生意気な王子が柔らかく笑うようになり、他者を思う気持ちに気が付いて、今では人間らしい豊かな感情を手に入れた。
セス様の為に全ての努力を惜しまず、誰よりも優れた天下無双の王子となった・・全てセス様の為に。セス様が生まれた時からとても大切にしていた。12才で初恋を自覚して、15年も待って結婚したんだ、どれほど愛してやまないか分かる。
私とて、セス様のお人柄が好きだし、天使の様に可愛らしいお顔を見れないのはあまりにも寂しい。
「さっさと帰還して、まずはする事がありますね?殿下」
私は殿下の腕を乱暴に掴むと、投げやりに治癒魔法を行使して汚れまで消して差し上げた。
「・・痛い・・」
「知りません!行きますよ!」
レオナルド殿下は苦笑いして、勇ましく兵士たちに帰還を告げた。
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