眠り姫とカフェへようこそ

しのへわかば

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終わりの始まり

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「いちいちうるさいんだよ! 」
 色んなことを先回りするように、口出ししてくる両親に、腹がたって、今まで言ったことの無い暴言を吐き出す。少し帰りが遅くなっただけじゃん!真夜中に帰ってきた訳じゃないし!頭にきた私は、勢いに任せて家を飛び出した。まだ寒い冬の風の強いある日のことだった。
 まだまだ新年は過ぎたばかり。冬のど真ん中の季節、コートも着ずに出てきてしまった。芯の奥から冷える風がとても冷たい。ドスドスと足元に積もった雪をつぶすように、怒りに任せて豪快に歩いていく。寒さと雪の重さに注意がそれて少しだけ気が軽くなって、なんであんなに怒っちゃったんだろう……と自分の子どもっぽさにモヤモヤしていた瞬間。
「あっ」
 気づいた時には遅かった。信号を確認することを忘れ、横断歩道を渡ってしまった。気づけばいやにおぼろげな光が全身を包んでいった。
 町田四葉16歳、高校1年生。たった16年で命が終わろうとしていく。案外呆気なかったな……と、どこか冷静に自分を見下ろす自分がいた。「変なとこ、冷静なんだな私」なんてどうでもいいことを考える。
 次に目覚めたところは、ぽかぽかと温かい場所だった。まるで日向ぼっこしているような心地良さで、ここが天国かぁなんてふわふわしていた。
「おーい、大丈夫? 」
 つかの間の幸せ時間。次に目にしたのは、自分の失態だった。私が温かいと思っていたのは誰かの膝の上だった。私は知らない男の膝の上で寝っ転がっていたのだ。
 勢いに任せてガバッと起き上がると、そのまま「ごめんなさい!」とおでこをくっつけんばかりに土下座をした。寝ぼけたとしても、なんでこうなっているのか、自分でもよく分からなかった。


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