『半魚囚人ジル』 深海監獄アビスロックからの脱出

アオミ レイ

文字の大きさ
27 / 74
第二章 深淵を裂く影の侵攻

CHAPTER26『深海への潜行』

しおりを挟む
第二階層、霧の幻影の拠点。 影虎は静かに指示を下した。
「ゼオン、クロウ、ディナイ……少数精鋭で潜入する。政府高官マーロウを消すぞ」

【キャラクター紹介:クロウ】
種族:カマス魚人
所属:霧の幻影
性格:冷静で慎重派。常に状況判断に優れており、影虎の信頼が厚い。
能力:高速での突撃攻撃を得意とし、俊敏な動きで敵を翻弄する。


【キャラクター紹介:ディナイ】
種族:アオリイカ魚人
所属:霧の幻影
性格:冷静沈着で寡黙な忍者タイプ。影虎の側近として潜入任務に特化している。
能力:体の色を自在に変化させて周囲に溶け込み、完全に姿を隠すことができる。


ゼオンが軽く頷き、問いかける。
「ジルたちが第三階層から帰った後、入口は完全封鎖されたはずだが……どうするつもりだ?」

影虎は微かに微笑んだ。
「我々が第三階層に侵入するときは、いつも使っている隠し通路がある。あれを使う」

第二階層 給排水設備

一行は静まり返った給排水設備に到着した。辺りは湿気に満ちており、水滴が時折管を叩く音だけが響く。


クロウが慎重に辺りを見回す。
「……監視はないようだな」

「念のためだ、油断するなよ」ディナイが小声で警告した。


影虎たちは静かに水音が響く、人が入れるか入れないかギリギリの狭さの排水路を抜ける。


ゼオン(…俺が助けられたときもここを通ったのか、意識が朦朧としていて何も覚えていないな)



そして第三階層へ侵入。

壁に貼り付くように移動し、周囲に気を配る。


ゼオンが囁いた。 
「ジルから聞いた話だと、牢獄エリアの壁の向こうに研究区画C-7があったらしい」

影虎は頷いた。 
「ならば、心当たりがある……ここからは絶対に物音を立てるな」


影虎が指示を出すと、ディナイがスッと前に出た。 
「俺が様子を見てこよう」

ディナイの肌がゆっくりと周囲の色に馴染んでいき、やがて完全に透明となった。そのまま看守詰所へ向かって静かに進む。


──看守詰所


狭い通路の隅で看守が二人、雑談をしている。
 「最近騒動が多すぎるよな…」
 
「ああ、副監獄長もかなりピリピリしている。仕事が増える一方だ」


看守たちのすぐそばを、透明化したディナイが息を殺して通り抜ける。鍵のある壁のフックまで辿り着き、慎重に鍵を掴み取った。


「ん?今、何か動かなかったか?」

一人の看守が辺りを見回す。ディナイは微動だにせず、看守の目が逸れるのを待った。


「気のせいだろ?」 

「そうだな、疲れてるのかもな」

再び看守が雑談に戻る。ディナイは再び静かに歩き出した。

ディナイが扉の前で影虎に合図を送る。影虎たちは素早く合流した。

扉がゆっくりと開かれると、C-7への通路が薄暗く広がっている。

ディナイが小声で報告する。 「周囲に誰もいない、今なら行ける」


影虎が仲間に視線を送る。 (…行くぞ)


全員が音を立てずに扉の中へと滑り込んだ。


──研究区画 C-7前

扉越しに僅かに会話が漏れてくる。 ギルバートとマーロウの話し声だ。

ゼオンが小さく息を吐く。
 「隣にギルバートがいるようだな……絶対に気づかれるなよ」

影虎が緊張をはらんだ声で囁く。 
「ここからが本番だ」


──第三階層C-7研究区画

「ゼファー殿、そろそろ魚人兵器の成果を見たいのだが……動かしてもらえるかな?」
マーロウは薄い笑みを浮かべ、ゼファーに目配せした。

「もちろんでございますぞ、マーロウ殿」
ゼファーが合図を送ると、三体の魚人兵器が動き始める。

【キャラクター紹介:クロコ】
種族:イリエワニ獣人
所属:元深海の狂気の兵士
性格:生前は短気で獰猛だった。
能力:鋭い牙とパワーを生かした噛みつき攻撃
【キャラクター紹介:ギルロイ】
種族:ティラピア魚人
性格:冷静で用心深い策略家。冷徹な殺戮マシーン。
能力:水流を利用した高速移動と鋭利な鰭による斬撃攻撃
備考:政府高官の暗殺を企てて失敗、処刑された戦士
【キャラクター紹介:ヴィクター】
種族:電気ナマズ魚人
所属:元沈黙の牙の幹部
性格:冷酷無慈悲、拷問と尋問を専門とする。
能力:強力な電撃で相手を麻痺させ、動きを封じる。
特徴:監獄内の情報を握り、尋問術に優れている。


ヴィクターがの腕に電気がほとばしり、バチバチッと空気が震えるほどの強力な電気が周囲に放たれた。
「どこだ……ここは……?」

クロコが鋭い歯を剥き出しにして低いうなり声を上げながら顎を大きく開き、周囲を威嚇する。 
「殺してやるぞ……!」

ギルロイは静かに立ち上がり、冷たい目を周囲に走らせ無感情に口を開く。
「…すべて切り刻む」

マーロウはヴィクターの電気に目を輝かせる。
「素晴らしいじゃないか……ゼファー殿、これは実に見事だな、だが、本当の実力を測るには実戦を見てみたいものだ。…実際に戦うところを見られるかね?」

ギルバートは少し不満げな表情を浮かべたが、すぐに何かを思いついたように口角を上げた。
 「…それならば、丁度うってつけの男がいる」


──第三階層牢獄エリア

ギルバートたちが魚人兵器を連れて牢獄エリアに向かう。

その姿を通路の陰から影虎たちが静かに見守り、呼吸音さえも抑えて状況を注視していた。


影虎が仲間に合図を送る。
「静かに動け。奴らに気づかれれば終わりだ」

緊張感が張り詰める中、ギルバートたちは牢獄エリアに着きルードヴィヒを呼び寄せた。

そして、ある檻の前に向かった。
「ルードヴィヒ、奴を解放しろ」

ルードヴィヒは驚いた表情を浮かべるが、すぐに楽しげに檻へ近づいた。
「フフフ…残念だったなぁ、監獄長が君を必要としているよ」

牢獄が開き、痩せ衰え、憔悴した姿のサイファーが姿を現す。
「無茶をしますねぇ、監獄長殿……」

サイファーの目が魚人兵器とギルバート、マーロウを順に捉え、冷たく光った。

──こうして、静かな地獄の幕が上がろうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...