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第四章 南部拠点に轟く監獄軍の進軍
CHAPTER59『狂気は闇より訪れる』
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聖堂門へと向かうゼルバ・フォーンとヴァイスの歩みに揺らぎはなかった。
だがその背後で、静寂がひそやかに裂けようとしていた――。
ヴァイスが足を止め、鋭く眉をひそめる。
「……ん?なんだ……この声……まさか敵襲か?」
ゼルバ・フォーンの視線が遠くを捉える。
「……そのまさかだ。撤退は我らをおびき出す為の陽動だったか…!?」
唇を歪め、不敵に笑う。
「クク……面白い……だが我らをコケにした報いは、受けてもらうぞ。急ぐぞ、ヴァイス!」
「はっ!」
聖堂門前
毒の雨にざわめく兵たちの間で、最前列の一人が呻きながら顔を上げた。
視界の先、薄闇の中から何者かが現れようとしていた――。
兵士「な、なんだ……あいつらはっ!?」
得体の知れぬ気配に、戦慄が波紋のように広がった。
バシリスクが叫ぶ。
「出るぞォ!!」
深海の狂気のメンバーとタイタンが一斉に躍り出る!
バシリスクは地面に転がっていたタイタンの上半身程はあろう岩石を掴み、兵士の群れに全力で投げ込む。
「ぐ…ぐ…どぅりゃあっ!!」
ヴォーーン!ドガァァーン!!
岩石が直撃し、グワァーッ!!という悲鳴とともに数人の兵士が吹き飛ぶ!
「ハハハッ、シャドウレギオンのクソ雑魚集団ども!俺らが遊んでやるよ!」
「うおらああああーっ!!」
タイタンが怒涛の勢いで突進!
「わしが一番乗りじゃぁーっ!!」
その巨体から繰り出された拳で、シャドウレギオン兵が五、六人まとめて空を舞う!
「死ね、クソども……!」
クラーケンは六振りの剣を自在に操り、前線を鮮やかに切り裂く!
「邪魔な雑魚は、まとめて吹き飛べやぁあっ!!」
ラッカーが鉄杭を振り回し、甲冑ごと兵士を壁に叩きつけていく!
「おっ、指揮官っぽいの見つけたなぁ…」
イェーガーはサーベルを閃かせ、兵長と思しき男の背後を突いて仕留める!
バシリスクは背負っていた鉄棍棒をぶんと振り抜き、
「どけッウジ虫集団どもがっ!!」
ドゴォッ!!という音とともに、数名の兵士が跳ね飛び地面に転がる。
戦場の端では、まだ息が整っていないモルドと、警戒中のハンスがロープを構えたまま後方支援を狙っている。
たった数人の深海の狂気の猛者たちと、巨躯の戦士タイタン。その圧倒的な戦闘力で、シャドウレギオン二百名近い兵を相手に次々と蹴散らしていた。
バシリスクの鉄棍棒が唸りを上げれば数人が宙を舞い、タイタンが地を踏み鳴らせば兵が五、六人まとめて吹き飛ぶ。クラーケンの六振りの剣が閃き、イェーガーの背後突きが幹部兵を沈める。
――だが
兵数の差は圧倒的だった。
次第に、シャドウレギオン側にも反撃の気配が満ち始める。
兵たちが連携を取り始め、歴戦の強者が前線へと進み出る。
その時――
ハンスの目が、鋭くラッカーの背後に迫る影を捉えた。
「ラッカー! 後ろだッ!!」
ハンスが叫ぶと同時に、ラッカーの背後から襲い掛かる一振りの巨大棍棒。
――バギィィィンッ!!
凄まじい衝突音と共に、鉄杭と棍棒がぶつかり合い、火花が散った。
「……危ねぇ!」
ラッカーは咄嗟に鉄杭を後ろ手に振り上げ、かろうじて直撃を防いだ。
振るったのは、タイタンに劣らぬほどの巨大なシャドウレギオン兵。鍛え上げられた体躯に、怪物的パワーが漲っている。
「…フン、潰すぞ……!」
低く唸るような声と共に、巨大棍棒を構え直す猛者。
【キャラクター紹介:ダンプ】
種族:オオサンショウウオ魚人
所属:シャドウレギオン
性格:無口で陰気、感情表現が乏しく、不気味な静けさを纏っている
特徴:身の丈ほどの巨大棍棒を自在に操る怪力の持ち主。皮膚はぬめりを帯びていて打撃や衝撃に強く、鉄の鎧をも叩き潰す怪物的パワーを誇る
経歴:かつて山岳地帯の鉱山労働者だったが、過酷な環境で仲間を守るために数々の武装集団を叩きのめした逸話を持つ。ヴァイスにその力を見いだされ、シャドウレギオンに迎え入れられた
備考:普段は一言も喋らず、戦場でのみ咆哮をあげる。彼の一撃は「地鳴り」と恐れられる
毒の雨がまだ地を濡らす中、突如として現れた巨影――
ぬめる皮膚に毒を纏いながらも、まるでそれを気にも留めず、棍棒を肩に担ぐ巨体が前へと進み出る。
「……俺に毒は効かねえんだ」
低く響く声とともに、ダンプは地面をゆっくりと踏みしめる。
その全身からは、静かなる殺意が滲み出ていた。
ラッカーは肩越しににやりと笑う。
「……上等だよ、デカブツ」
――再び、鉄と鉄がぶつかり合う戦場に、凶暴な火花が舞った。
その前方――
バシリスクが唸り声とともに棍棒を横薙ぎに振り抜く。
「どけぇーー!!」
鋭い風圧とともに、数人の兵が吹き飛ぶ。
そのとき――
「……調子に乗るなよ」
重く、冷えた声が飛び込んできた。
棍棒が叩きつけられる寸前、前方に現れた男が両手の大剣で真正面から受け止める。
バギィィィン!!
火花が散り、鉄と鉄の間に激しい圧が生まれる。
「俺もてめぇと同じワニだ、仲良くやろうぜ!」
ニヤリと牙を見せ、大剣の切っ先を滑らせるようにして反撃の体勢に入った。
バシリスクの目がぎらりと光る。
【キャラクター紹介:ガルマーク】
種族:ナイルワニ獣人
所属:シャドウレギオン幹部
特徴:身の丈を超える両刃の大剣を自在に振るう重量級の猛者。強靭な肉体と高い耐久力を活かした接近戦を得意とし、バシリスクにも劣らぬ膂力を誇る。
備考:かつて闘技場で無敗を誇っていた元剣闘士、ヴァイスの目に留まり、シャドウレギオンへ加入。性格は粗暴だが戦闘においては冷静な判断力も持つ。攻防一体の剛撃で相手を押し潰す戦法を得意とする。
バシリスクは鼻を鳴らし、肩越しに睨みつけるように言い放った。
「フン、俺とテメェじゃ格が違うんだ…一緒にするんじゃねえ!」
その言葉に、ガルマークはわずかに口角を吊り上げ、肩の大剣を軽く担ぎ直す。
「……ほう。では“格の違い”とやらを――見せてもらおうか」
次の瞬間、巨体と巨体がぶつかり合った。
バシリスクの鉄棍棒と、ガルマークの両刃の大剣が凄まじい音を立てて交差し、爆発のような衝撃波が周囲に走る。
バギィィンッ!!
兵士たちは思わず後ずさった。
「近づけねぇ……!」
鉄と鉄が連続してぶつかり合う音が空気を裂き、火花が弾ける。
重い一撃が交わされるたびに、地面が震え、足場の瓦礫が跳ね上がる。
バシリスクは獣のような咆哮を上げ、棍棒を横薙ぎに振り抜いた。ガルマークもそれを真正面から受け止め、大剣を大地に突き立て踏ん張る。
両者の間に生じた空気の渦すら震えるような、超重量級の激突が、戦場の空気を一変させていった――。
その頃、戦場の中心で、タイタンは一人、敵陣のど真ん中で暴れ回っていた。
周囲には倒れたシャドウレギオン兵の山――だが、それでもなお三十人近くが四方からタイタンを取り囲んでいる。
「ふぅ~……殴りすぎて腕が疲れてきたわい……」
額の汗を拭うような仕草をした瞬間、背後から怒声が飛ぶ。
「……死ねェェ!!」
シャドウレギオン兵の刃が振り下ろされる――が、タイタンは振り向きもせず、片手で軽々とその腕を掴み、反動をつけて一気に投げ飛ばした。
ズドォォン!!
兵士は数十メートル先の瓦礫の山に激突し、動かなくなる。
「……ちょっと休憩させんかい! まったく、せわしい奴らじゃのう!」
疲れたように肩を回すタイタンの前に、異様な風貌の男がすっと歩み出た。
身体に巻きつく布地、赤金の刺繍が揺れ、全身から不気味な気配を放っている。
【キャラクター紹介:ザイール】
種族:コブラ獣人
所属:シャドウレギオン幹部
性格・特徴:冷徹かつ妖艶な気配を纏い、静かに相手を追い詰める策略家。知略を巡らせ戦局を操る戦術家でもあり、単なる剣士ではない。挑発や虚実を織り交ぜ、戦場を混乱に陥れることを得意とする。
装束:黄金や深紅を基調とした派手な戦装束。エジプトの蛇使いを思わせる装飾や、アクセサリーを身に纏い、戦場での存在感を誇示する。
武器:湾曲した二振りのサーベル。流れるような剣捌きと、敵の急所を正確に突く冷徹な判断力を併せ持つ戦術家。
備考:薬物や毒物に関する知識にも深く精通しており、体のあちこちに何かしらの毒物を常に仕込んでいると噂される。その動きや衣装のどこに仕掛けがあるのか分からず、接近戦では不用意に近づくのが最も危険ともいわれる。
ヴァイスの推薦により幹部に抜擢された異色の存在。戦闘能力のみならず、心理戦や陽動作戦にも長けており、戦場の“混乱”を生み出すプロフェッショナル。
「フシャシャシャ……鯨が陸に迷い込んだようだな。海に返してやらねばなぁ」
くねるような動きで二振りの湾曲サーベルを構えるその姿に、タイタンは目を細める。
「おん? なんじゃおまえ? ……おもろい格好しとるのう!」
ザイールは口角を吊り上げ、右手を軽く弾いた。
その合図で、背後から三人のシャドウレギオン兵が一斉に飛び出してくる。
「邪魔じゃあ!!」
タイタンの振り返りざまの裏拳一閃、三人の兵士が一撃で吹き飛んだ。
だが、その一瞬をザイールは見逃さない。
双剣が鋭い唸りを上げて切り込んでくる。
ブォンッ! ブォンッ
一撃、二撃――かろうじて体を捻り、かすり傷ひとつで済ませた。
「……私の剣の切れ味は鋭いだろう?」
サーベルの切っ先から、タイタンの血が地に滴り落ちる。
「はぁ? こんなもん、唾でもつけときゃ治るわい! おまえも、わしの拳の切れ味を――味おうァ……」
言い切る前に、ぐらりとタイタンの身体が揺れた。
「うっ……かっ、なんじゃ……こりゃあ……!」
膝をつき、荒く息を吐きながら地面に手をつく。
ザイールは、うっとりとした目で自身のサーベルを見つめていた。
刃には、見えないほど微細な毒の薄膜が、湿った光を宿している。
「フシャシャシャ……このサーベルには、私の“秘術”で調合した特製の麻酔薬が塗ってあるのだよ……巨像でも、大熊でも、ほんの一かすりで意識を失うほどの代物なのだが……ふむ、マンドレイクの成分が足りなかったか? それとも、お前の肉体が異常なのか……」
「……グムゥ……」
膝をつき、巨体がぐらつく。牙を食いしばりながらも、その両肩は重く沈んでいった。
ラッカーVSダンプ
激戦の片隅で、ラッカーとダンプの壮絶な戦いにも、ついに決着の兆しが見え始めていた。
互角に見えた両者の攻防だったが、ついに――ダンプの渾身の一撃がラッカーを打ち崩す。
「ぐッ……!」
重々しい棍棒がラッカーのガードをすり抜け、その一撃が脳を揺らす。地面が傾いたように感じ、ラッカーの膝が沈んだ。
「……これで終わりだ」
ダンプが棍棒を高く振り上げる。
「クソッ……! もう……体が……動かねえ……」
ラッカーの意識が遠のいていく。
その時だった。
スルスル……
足元に滑り込む一本のロープ。
それがダンプの脚に絡みつく。
「ラッカー! 今のうちに逃げろ!」
ハンスの声が響いた。
「……駄目だ……足が、言うこと聞かねえ……」
ラッカーは立ち上がろうとするが、よろけただけで前へ進めない。
「……邪魔なヒモだな……」
ダンプは無造作にロープを掴み――
「ブチィッ!」
強引に引きちぎった。
「!? クソッ!」
ハンスが叫ぶ間もなく、ダンプは再び棍棒を振りかぶる。
「これで終わりだ……!」
ハンスも咄嗟にナイフを抜き、突撃する。
だが――距離が遠い。
「ラッカー、逃げろーっ!」
「ぐッ……!」
ラッカーは拳を握るが、体が言うことを聞かない。
その時――
ガギーン!!
金属がぶつかる鈍い音と共に、一本のサーベルが棍棒を受け止めた。
ラッカーの前に割って入ったのは、イェーガーだった。
「グゥゥ…重てえな!……んっ?……ダンプ? テメェ、ダンプじゃねぇか?」
「……おっ、イェーガーか?」
ダンプの手元が緩む。
「ダンプ~、テメェ、こんなとこで何やってんだよ!」
「……ちょっと訳あってな。今はここで働いてるんだ……」
その場にハンスも追いつく。
「……知り合いか?」
「ああ、同郷だ。炭鉱の町でな、一時期は一緒に働いてたんだ。こいつは、いいやつだぜ」
イェーガーはラッカーに代わって前に立ち、ダンプに問いかける。
「……何でシャドウレギオンなんかにいやがるんだ?」
ダンプは、重々しい口調で語り出した。
「……俺は……俺たちの炭鉱の町を守るためにここに来たんだ」
「はぁ? 何でおまえがシャドウレギオンに入ることが、俺たちの町を守ることになるんだよ?」
「……おまえ達があの町を出て行った後、ある武装集団に襲われたんだ。襲撃なんて日常茶飯事だったが、そいつらは桁違いに強くてな……俺がいくら必死で戦っても敵わなかった。仲間たちが、次々と倒れていった」
ダンプの声に苦味が混じる。
「……その時だった。ヴァイスってやつが現れて、そいつらを一瞬で叩き潰してくれた。あの時、確かに救われたんだ…」
「それで?」
「ヴァイスは言った。『こいつらの仲間はまだいる。いずれまた来る。おまえが俺たちの仲間になれば、シャドウレギオンが奴らを監視し、この町には二度と手出しさせない』ってな」
イェーガーは眉をひそめ、しばし黙る。
そして、一歩前へ踏み出して言った。
「……つまり、おまえは――騙されてるんだな」
「……なんだと!?」
「その“武装集団”ってのが、実はシャドウレギオン自身だって話だ。ヴァイスって野郎は、おまえの力が欲しかったんだよ。最初から、全部芝居だったんだ」
「そんなはずはないッ! ヴァイスは俺を信じてくれて、いつも良くしてくれた……!」
「それは“おまえを手懐けるため”に決まっているだろ?」
イェーガーの瞳は、真っ直ぐダンプを見据えていた。
その時だった。
ダンプの様子に違和感を覚えたのか、少し離れた場所から一人の男が鋭く怒鳴り声を上げた。
「ダンプ! てめぇの仕事は敵を叩きのめすことだろうが!何、敵と世間話してやがる! さっさとそいつらをぶち殺せッ!!」
男はシャドウレギオンの幹部格らしく、鎧の装飾も一際目立つ。
その怒声に、ダンプの手が無意識に棍棒へと伸びる。
「……ああ…」
だが、彼の足は動かなかった。
「……テメェ、ヴァイスさんとの約束を忘れたのか!?あの人が、テメェの故郷を守ってんだろうが! さっさと殺れッ!!」
男の怒声は鋭く、ダンプの胸を貫いた。
怯んだダンプは、震える手で棍棒を構えかける――が。
「……やめとけ」
イェーガーが静かに呟く。
「……どうやら、あいつ……いろいろ事情を知ってるみてぇだな」
その眼差しは鋭く、男を正面から見据えていた。
「ダンプ!」
再び怒鳴る男。その瞬間――
シュッ!
イェーガーの姿が消える。
「……ッ!?」
気づいた時には、男の背後にサーベルの切っ先が突きつけられていた。
「……選ばせてやるぜ」
イェーガーの声が、耳元で低く響く。
「喉を掻っ切られて一瞬で死ぬか、ダンプの故郷の真実をすべて話すか……だ」
「わ、わかった、話す、話すからッ!」
「……俺はな、人の嘘を見抜くのが得意なんだ」
イェーガーは喉元の刃を少しだけ押し込む。
「嘘をついてるって俺が判断したら……即、死ぬことになるぜ」
「……わ、わかった、あ、あれは……あれはヴァイスさんの作戦だったんだ!
ダンプの奴が使えそうだったから……ヴァイスさんが芝居を打って、あいつを仲間に引き入れたんだよ!」
「……つまり、そのヴァイスって野郎が最初から仕組んだ自作自演ってわけか」
「そ、そうだ! 俺は悪くねえ! ヴァイスさんの指示に従っただけだ!」
「……そうか。じゃあ死ね――」
イェーガーが殺気と共に剣を押し込もうとした、その瞬間。
――バゴォォン!!
ダンプの棍棒が唸りをあげ、
男の頭部に直撃する。
「……ッ!」
男は呻く間もなく、地面に倒れ伏した。血と土煙が舞う中、ダンプが低く呟く。
「……イェーガー、お前の言う通り……俺は騙されてたんだな……」
「……ああ」
イェーガーは頷く。
「だがな、ヴァイスって野郎――そいつとシャドウレギオンを潰さなきゃ、俺たちの故郷は、いつまでも喰い物にされるだけだぜ」
イェーガーは肩にサーベルを担ぎ直す。
「俺たちは、シャドウレギオンを潰すために作られた兵団だ…まぁ俺は面白そうだから入っただけなんだが……お前も、一緒に来ないか?」
「……ああ」
ダンプは頷き、拳を強く握る。
「俺も、協力させてくれ」
そのまま、ふとラッカーの方へ目を向ける。
「……悪かったな」
ラッカーは苦笑しながら立ち上がる。ふらつきつつも、しっかりとダンプの肩を叩く。
「……ハハ、まぁいいってことよ…まだ頭くらつくけどな……でも、強力な仲間ができたじゃねぇか」
その言葉に、ダンプは微かに笑った。
「よし……」
イェーガーは周囲を見渡す。
「ハンス、ラッカー! 少し下がってろ……やべぇ気配が、あの門の向こうから来てやがる!」
一同の目線が、静かに聖堂門の方角へと向いた。
――そこには、確かに何かが迫っていた。
だがその背後で、静寂がひそやかに裂けようとしていた――。
ヴァイスが足を止め、鋭く眉をひそめる。
「……ん?なんだ……この声……まさか敵襲か?」
ゼルバ・フォーンの視線が遠くを捉える。
「……そのまさかだ。撤退は我らをおびき出す為の陽動だったか…!?」
唇を歪め、不敵に笑う。
「クク……面白い……だが我らをコケにした報いは、受けてもらうぞ。急ぐぞ、ヴァイス!」
「はっ!」
聖堂門前
毒の雨にざわめく兵たちの間で、最前列の一人が呻きながら顔を上げた。
視界の先、薄闇の中から何者かが現れようとしていた――。
兵士「な、なんだ……あいつらはっ!?」
得体の知れぬ気配に、戦慄が波紋のように広がった。
バシリスクが叫ぶ。
「出るぞォ!!」
深海の狂気のメンバーとタイタンが一斉に躍り出る!
バシリスクは地面に転がっていたタイタンの上半身程はあろう岩石を掴み、兵士の群れに全力で投げ込む。
「ぐ…ぐ…どぅりゃあっ!!」
ヴォーーン!ドガァァーン!!
岩石が直撃し、グワァーッ!!という悲鳴とともに数人の兵士が吹き飛ぶ!
「ハハハッ、シャドウレギオンのクソ雑魚集団ども!俺らが遊んでやるよ!」
「うおらああああーっ!!」
タイタンが怒涛の勢いで突進!
「わしが一番乗りじゃぁーっ!!」
その巨体から繰り出された拳で、シャドウレギオン兵が五、六人まとめて空を舞う!
「死ね、クソども……!」
クラーケンは六振りの剣を自在に操り、前線を鮮やかに切り裂く!
「邪魔な雑魚は、まとめて吹き飛べやぁあっ!!」
ラッカーが鉄杭を振り回し、甲冑ごと兵士を壁に叩きつけていく!
「おっ、指揮官っぽいの見つけたなぁ…」
イェーガーはサーベルを閃かせ、兵長と思しき男の背後を突いて仕留める!
バシリスクは背負っていた鉄棍棒をぶんと振り抜き、
「どけッウジ虫集団どもがっ!!」
ドゴォッ!!という音とともに、数名の兵士が跳ね飛び地面に転がる。
戦場の端では、まだ息が整っていないモルドと、警戒中のハンスがロープを構えたまま後方支援を狙っている。
たった数人の深海の狂気の猛者たちと、巨躯の戦士タイタン。その圧倒的な戦闘力で、シャドウレギオン二百名近い兵を相手に次々と蹴散らしていた。
バシリスクの鉄棍棒が唸りを上げれば数人が宙を舞い、タイタンが地を踏み鳴らせば兵が五、六人まとめて吹き飛ぶ。クラーケンの六振りの剣が閃き、イェーガーの背後突きが幹部兵を沈める。
――だが
兵数の差は圧倒的だった。
次第に、シャドウレギオン側にも反撃の気配が満ち始める。
兵たちが連携を取り始め、歴戦の強者が前線へと進み出る。
その時――
ハンスの目が、鋭くラッカーの背後に迫る影を捉えた。
「ラッカー! 後ろだッ!!」
ハンスが叫ぶと同時に、ラッカーの背後から襲い掛かる一振りの巨大棍棒。
――バギィィィンッ!!
凄まじい衝突音と共に、鉄杭と棍棒がぶつかり合い、火花が散った。
「……危ねぇ!」
ラッカーは咄嗟に鉄杭を後ろ手に振り上げ、かろうじて直撃を防いだ。
振るったのは、タイタンに劣らぬほどの巨大なシャドウレギオン兵。鍛え上げられた体躯に、怪物的パワーが漲っている。
「…フン、潰すぞ……!」
低く唸るような声と共に、巨大棍棒を構え直す猛者。
【キャラクター紹介:ダンプ】
種族:オオサンショウウオ魚人
所属:シャドウレギオン
性格:無口で陰気、感情表現が乏しく、不気味な静けさを纏っている
特徴:身の丈ほどの巨大棍棒を自在に操る怪力の持ち主。皮膚はぬめりを帯びていて打撃や衝撃に強く、鉄の鎧をも叩き潰す怪物的パワーを誇る
経歴:かつて山岳地帯の鉱山労働者だったが、過酷な環境で仲間を守るために数々の武装集団を叩きのめした逸話を持つ。ヴァイスにその力を見いだされ、シャドウレギオンに迎え入れられた
備考:普段は一言も喋らず、戦場でのみ咆哮をあげる。彼の一撃は「地鳴り」と恐れられる
毒の雨がまだ地を濡らす中、突如として現れた巨影――
ぬめる皮膚に毒を纏いながらも、まるでそれを気にも留めず、棍棒を肩に担ぐ巨体が前へと進み出る。
「……俺に毒は効かねえんだ」
低く響く声とともに、ダンプは地面をゆっくりと踏みしめる。
その全身からは、静かなる殺意が滲み出ていた。
ラッカーは肩越しににやりと笑う。
「……上等だよ、デカブツ」
――再び、鉄と鉄がぶつかり合う戦場に、凶暴な火花が舞った。
その前方――
バシリスクが唸り声とともに棍棒を横薙ぎに振り抜く。
「どけぇーー!!」
鋭い風圧とともに、数人の兵が吹き飛ぶ。
そのとき――
「……調子に乗るなよ」
重く、冷えた声が飛び込んできた。
棍棒が叩きつけられる寸前、前方に現れた男が両手の大剣で真正面から受け止める。
バギィィィン!!
火花が散り、鉄と鉄の間に激しい圧が生まれる。
「俺もてめぇと同じワニだ、仲良くやろうぜ!」
ニヤリと牙を見せ、大剣の切っ先を滑らせるようにして反撃の体勢に入った。
バシリスクの目がぎらりと光る。
【キャラクター紹介:ガルマーク】
種族:ナイルワニ獣人
所属:シャドウレギオン幹部
特徴:身の丈を超える両刃の大剣を自在に振るう重量級の猛者。強靭な肉体と高い耐久力を活かした接近戦を得意とし、バシリスクにも劣らぬ膂力を誇る。
備考:かつて闘技場で無敗を誇っていた元剣闘士、ヴァイスの目に留まり、シャドウレギオンへ加入。性格は粗暴だが戦闘においては冷静な判断力も持つ。攻防一体の剛撃で相手を押し潰す戦法を得意とする。
バシリスクは鼻を鳴らし、肩越しに睨みつけるように言い放った。
「フン、俺とテメェじゃ格が違うんだ…一緒にするんじゃねえ!」
その言葉に、ガルマークはわずかに口角を吊り上げ、肩の大剣を軽く担ぎ直す。
「……ほう。では“格の違い”とやらを――見せてもらおうか」
次の瞬間、巨体と巨体がぶつかり合った。
バシリスクの鉄棍棒と、ガルマークの両刃の大剣が凄まじい音を立てて交差し、爆発のような衝撃波が周囲に走る。
バギィィンッ!!
兵士たちは思わず後ずさった。
「近づけねぇ……!」
鉄と鉄が連続してぶつかり合う音が空気を裂き、火花が弾ける。
重い一撃が交わされるたびに、地面が震え、足場の瓦礫が跳ね上がる。
バシリスクは獣のような咆哮を上げ、棍棒を横薙ぎに振り抜いた。ガルマークもそれを真正面から受け止め、大剣を大地に突き立て踏ん張る。
両者の間に生じた空気の渦すら震えるような、超重量級の激突が、戦場の空気を一変させていった――。
その頃、戦場の中心で、タイタンは一人、敵陣のど真ん中で暴れ回っていた。
周囲には倒れたシャドウレギオン兵の山――だが、それでもなお三十人近くが四方からタイタンを取り囲んでいる。
「ふぅ~……殴りすぎて腕が疲れてきたわい……」
額の汗を拭うような仕草をした瞬間、背後から怒声が飛ぶ。
「……死ねェェ!!」
シャドウレギオン兵の刃が振り下ろされる――が、タイタンは振り向きもせず、片手で軽々とその腕を掴み、反動をつけて一気に投げ飛ばした。
ズドォォン!!
兵士は数十メートル先の瓦礫の山に激突し、動かなくなる。
「……ちょっと休憩させんかい! まったく、せわしい奴らじゃのう!」
疲れたように肩を回すタイタンの前に、異様な風貌の男がすっと歩み出た。
身体に巻きつく布地、赤金の刺繍が揺れ、全身から不気味な気配を放っている。
【キャラクター紹介:ザイール】
種族:コブラ獣人
所属:シャドウレギオン幹部
性格・特徴:冷徹かつ妖艶な気配を纏い、静かに相手を追い詰める策略家。知略を巡らせ戦局を操る戦術家でもあり、単なる剣士ではない。挑発や虚実を織り交ぜ、戦場を混乱に陥れることを得意とする。
装束:黄金や深紅を基調とした派手な戦装束。エジプトの蛇使いを思わせる装飾や、アクセサリーを身に纏い、戦場での存在感を誇示する。
武器:湾曲した二振りのサーベル。流れるような剣捌きと、敵の急所を正確に突く冷徹な判断力を併せ持つ戦術家。
備考:薬物や毒物に関する知識にも深く精通しており、体のあちこちに何かしらの毒物を常に仕込んでいると噂される。その動きや衣装のどこに仕掛けがあるのか分からず、接近戦では不用意に近づくのが最も危険ともいわれる。
ヴァイスの推薦により幹部に抜擢された異色の存在。戦闘能力のみならず、心理戦や陽動作戦にも長けており、戦場の“混乱”を生み出すプロフェッショナル。
「フシャシャシャ……鯨が陸に迷い込んだようだな。海に返してやらねばなぁ」
くねるような動きで二振りの湾曲サーベルを構えるその姿に、タイタンは目を細める。
「おん? なんじゃおまえ? ……おもろい格好しとるのう!」
ザイールは口角を吊り上げ、右手を軽く弾いた。
その合図で、背後から三人のシャドウレギオン兵が一斉に飛び出してくる。
「邪魔じゃあ!!」
タイタンの振り返りざまの裏拳一閃、三人の兵士が一撃で吹き飛んだ。
だが、その一瞬をザイールは見逃さない。
双剣が鋭い唸りを上げて切り込んでくる。
ブォンッ! ブォンッ
一撃、二撃――かろうじて体を捻り、かすり傷ひとつで済ませた。
「……私の剣の切れ味は鋭いだろう?」
サーベルの切っ先から、タイタンの血が地に滴り落ちる。
「はぁ? こんなもん、唾でもつけときゃ治るわい! おまえも、わしの拳の切れ味を――味おうァ……」
言い切る前に、ぐらりとタイタンの身体が揺れた。
「うっ……かっ、なんじゃ……こりゃあ……!」
膝をつき、荒く息を吐きながら地面に手をつく。
ザイールは、うっとりとした目で自身のサーベルを見つめていた。
刃には、見えないほど微細な毒の薄膜が、湿った光を宿している。
「フシャシャシャ……このサーベルには、私の“秘術”で調合した特製の麻酔薬が塗ってあるのだよ……巨像でも、大熊でも、ほんの一かすりで意識を失うほどの代物なのだが……ふむ、マンドレイクの成分が足りなかったか? それとも、お前の肉体が異常なのか……」
「……グムゥ……」
膝をつき、巨体がぐらつく。牙を食いしばりながらも、その両肩は重く沈んでいった。
ラッカーVSダンプ
激戦の片隅で、ラッカーとダンプの壮絶な戦いにも、ついに決着の兆しが見え始めていた。
互角に見えた両者の攻防だったが、ついに――ダンプの渾身の一撃がラッカーを打ち崩す。
「ぐッ……!」
重々しい棍棒がラッカーのガードをすり抜け、その一撃が脳を揺らす。地面が傾いたように感じ、ラッカーの膝が沈んだ。
「……これで終わりだ」
ダンプが棍棒を高く振り上げる。
「クソッ……! もう……体が……動かねえ……」
ラッカーの意識が遠のいていく。
その時だった。
スルスル……
足元に滑り込む一本のロープ。
それがダンプの脚に絡みつく。
「ラッカー! 今のうちに逃げろ!」
ハンスの声が響いた。
「……駄目だ……足が、言うこと聞かねえ……」
ラッカーは立ち上がろうとするが、よろけただけで前へ進めない。
「……邪魔なヒモだな……」
ダンプは無造作にロープを掴み――
「ブチィッ!」
強引に引きちぎった。
「!? クソッ!」
ハンスが叫ぶ間もなく、ダンプは再び棍棒を振りかぶる。
「これで終わりだ……!」
ハンスも咄嗟にナイフを抜き、突撃する。
だが――距離が遠い。
「ラッカー、逃げろーっ!」
「ぐッ……!」
ラッカーは拳を握るが、体が言うことを聞かない。
その時――
ガギーン!!
金属がぶつかる鈍い音と共に、一本のサーベルが棍棒を受け止めた。
ラッカーの前に割って入ったのは、イェーガーだった。
「グゥゥ…重てえな!……んっ?……ダンプ? テメェ、ダンプじゃねぇか?」
「……おっ、イェーガーか?」
ダンプの手元が緩む。
「ダンプ~、テメェ、こんなとこで何やってんだよ!」
「……ちょっと訳あってな。今はここで働いてるんだ……」
その場にハンスも追いつく。
「……知り合いか?」
「ああ、同郷だ。炭鉱の町でな、一時期は一緒に働いてたんだ。こいつは、いいやつだぜ」
イェーガーはラッカーに代わって前に立ち、ダンプに問いかける。
「……何でシャドウレギオンなんかにいやがるんだ?」
ダンプは、重々しい口調で語り出した。
「……俺は……俺たちの炭鉱の町を守るためにここに来たんだ」
「はぁ? 何でおまえがシャドウレギオンに入ることが、俺たちの町を守ることになるんだよ?」
「……おまえ達があの町を出て行った後、ある武装集団に襲われたんだ。襲撃なんて日常茶飯事だったが、そいつらは桁違いに強くてな……俺がいくら必死で戦っても敵わなかった。仲間たちが、次々と倒れていった」
ダンプの声に苦味が混じる。
「……その時だった。ヴァイスってやつが現れて、そいつらを一瞬で叩き潰してくれた。あの時、確かに救われたんだ…」
「それで?」
「ヴァイスは言った。『こいつらの仲間はまだいる。いずれまた来る。おまえが俺たちの仲間になれば、シャドウレギオンが奴らを監視し、この町には二度と手出しさせない』ってな」
イェーガーは眉をひそめ、しばし黙る。
そして、一歩前へ踏み出して言った。
「……つまり、おまえは――騙されてるんだな」
「……なんだと!?」
「その“武装集団”ってのが、実はシャドウレギオン自身だって話だ。ヴァイスって野郎は、おまえの力が欲しかったんだよ。最初から、全部芝居だったんだ」
「そんなはずはないッ! ヴァイスは俺を信じてくれて、いつも良くしてくれた……!」
「それは“おまえを手懐けるため”に決まっているだろ?」
イェーガーの瞳は、真っ直ぐダンプを見据えていた。
その時だった。
ダンプの様子に違和感を覚えたのか、少し離れた場所から一人の男が鋭く怒鳴り声を上げた。
「ダンプ! てめぇの仕事は敵を叩きのめすことだろうが!何、敵と世間話してやがる! さっさとそいつらをぶち殺せッ!!」
男はシャドウレギオンの幹部格らしく、鎧の装飾も一際目立つ。
その怒声に、ダンプの手が無意識に棍棒へと伸びる。
「……ああ…」
だが、彼の足は動かなかった。
「……テメェ、ヴァイスさんとの約束を忘れたのか!?あの人が、テメェの故郷を守ってんだろうが! さっさと殺れッ!!」
男の怒声は鋭く、ダンプの胸を貫いた。
怯んだダンプは、震える手で棍棒を構えかける――が。
「……やめとけ」
イェーガーが静かに呟く。
「……どうやら、あいつ……いろいろ事情を知ってるみてぇだな」
その眼差しは鋭く、男を正面から見据えていた。
「ダンプ!」
再び怒鳴る男。その瞬間――
シュッ!
イェーガーの姿が消える。
「……ッ!?」
気づいた時には、男の背後にサーベルの切っ先が突きつけられていた。
「……選ばせてやるぜ」
イェーガーの声が、耳元で低く響く。
「喉を掻っ切られて一瞬で死ぬか、ダンプの故郷の真実をすべて話すか……だ」
「わ、わかった、話す、話すからッ!」
「……俺はな、人の嘘を見抜くのが得意なんだ」
イェーガーは喉元の刃を少しだけ押し込む。
「嘘をついてるって俺が判断したら……即、死ぬことになるぜ」
「……わ、わかった、あ、あれは……あれはヴァイスさんの作戦だったんだ!
ダンプの奴が使えそうだったから……ヴァイスさんが芝居を打って、あいつを仲間に引き入れたんだよ!」
「……つまり、そのヴァイスって野郎が最初から仕組んだ自作自演ってわけか」
「そ、そうだ! 俺は悪くねえ! ヴァイスさんの指示に従っただけだ!」
「……そうか。じゃあ死ね――」
イェーガーが殺気と共に剣を押し込もうとした、その瞬間。
――バゴォォン!!
ダンプの棍棒が唸りをあげ、
男の頭部に直撃する。
「……ッ!」
男は呻く間もなく、地面に倒れ伏した。血と土煙が舞う中、ダンプが低く呟く。
「……イェーガー、お前の言う通り……俺は騙されてたんだな……」
「……ああ」
イェーガーは頷く。
「だがな、ヴァイスって野郎――そいつとシャドウレギオンを潰さなきゃ、俺たちの故郷は、いつまでも喰い物にされるだけだぜ」
イェーガーは肩にサーベルを担ぎ直す。
「俺たちは、シャドウレギオンを潰すために作られた兵団だ…まぁ俺は面白そうだから入っただけなんだが……お前も、一緒に来ないか?」
「……ああ」
ダンプは頷き、拳を強く握る。
「俺も、協力させてくれ」
そのまま、ふとラッカーの方へ目を向ける。
「……悪かったな」
ラッカーは苦笑しながら立ち上がる。ふらつきつつも、しっかりとダンプの肩を叩く。
「……ハハ、まぁいいってことよ…まだ頭くらつくけどな……でも、強力な仲間ができたじゃねぇか」
その言葉に、ダンプは微かに笑った。
「よし……」
イェーガーは周囲を見渡す。
「ハンス、ラッカー! 少し下がってろ……やべぇ気配が、あの門の向こうから来てやがる!」
一同の目線が、静かに聖堂門の方角へと向いた。
――そこには、確かに何かが迫っていた。
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