5 / 12
隠された日付
しおりを挟む
ピンポン。ピンポーン、ピンポーン____
何度も、何度も押される呼び鈴。
エグ味のある目覚めに自律神経が活発になる。
警察でも呼んでやろうか。
そんな軽口を遊ばせながら、枕元のスマホに手を伸ばした。
瞳孔が縮む。
通知バナーが、確かな警告を伝えていた。
無造作にカレンダーに手をかける。
その間にもドアのノックは止まらない。
ペリペリと線分の接合部を剥がし、押し入れへと放り込んだ。
「陽菜、心配したのよ?」
おっとりとした口調で話す母。
やつれて見えるのは、私が成長したからだろうか。
「ごめん、ごめん、まだ寝てて。」
嘘は吐いてない。
だが、時計は本日2周目に入っていた。
「全く...夏休みだからって夜更かしばっかしてるんじゃないよ。」
「はぁーい」
「それで、今日は何か用でもあったの?」
「いや?特にこれといった用は無いけどねぇ。
ただ、たまたま近く寄ったから元気かな?って思って。だけど、いくらメッセージ送っても既読も付かなきゃ返信が来ないもんだから不安になっちゃって。」
「もっと前から言ってくれたら色々用意したのに...」
母は昔からこういうところがある。
それをウザく感じる事もあれば、ありがたみを感じる事もあった。
今は前者だ。
「それで、どこに行ってたの?」
しくじった。
向かい合う母の顔に、影が落ちる。
「夏帆のお見舞い、行ってきたの。」
背中を丸め、独り言のように呟く母。
「あぁ...うん。」
「お姉ちゃん、やっぱり中々良くならないのよ。でもね?先生が言うには、1回蘇生して回復を測るのも策じゃないかって。」
軽く語尾が上がった。
「それって、お姉ちゃんをもう一度殺すって事だよね?」
母の目がよろめく。
「まあ...そうなるわね...。でも、どっちみち夏帆をあのままにしておく訳にも行かないわよ。お金もバカにならないし...」
言葉にならない。
私には、分からない。
「落ち着いて聞いて欲しいんだけど...」
母から目を逸らす。
「なによ、そんなかしこまっちゃって。」
今ほど呼吸を自覚したことは無い。
「あ、あの、えっと...」
押し入れからカサッと軽い音が鳴った。
「陽菜?」
私には、母まで失う勇気が無かった。
何度も、何度も押される呼び鈴。
エグ味のある目覚めに自律神経が活発になる。
警察でも呼んでやろうか。
そんな軽口を遊ばせながら、枕元のスマホに手を伸ばした。
瞳孔が縮む。
通知バナーが、確かな警告を伝えていた。
無造作にカレンダーに手をかける。
その間にもドアのノックは止まらない。
ペリペリと線分の接合部を剥がし、押し入れへと放り込んだ。
「陽菜、心配したのよ?」
おっとりとした口調で話す母。
やつれて見えるのは、私が成長したからだろうか。
「ごめん、ごめん、まだ寝てて。」
嘘は吐いてない。
だが、時計は本日2周目に入っていた。
「全く...夏休みだからって夜更かしばっかしてるんじゃないよ。」
「はぁーい」
「それで、今日は何か用でもあったの?」
「いや?特にこれといった用は無いけどねぇ。
ただ、たまたま近く寄ったから元気かな?って思って。だけど、いくらメッセージ送っても既読も付かなきゃ返信が来ないもんだから不安になっちゃって。」
「もっと前から言ってくれたら色々用意したのに...」
母は昔からこういうところがある。
それをウザく感じる事もあれば、ありがたみを感じる事もあった。
今は前者だ。
「それで、どこに行ってたの?」
しくじった。
向かい合う母の顔に、影が落ちる。
「夏帆のお見舞い、行ってきたの。」
背中を丸め、独り言のように呟く母。
「あぁ...うん。」
「お姉ちゃん、やっぱり中々良くならないのよ。でもね?先生が言うには、1回蘇生して回復を測るのも策じゃないかって。」
軽く語尾が上がった。
「それって、お姉ちゃんをもう一度殺すって事だよね?」
母の目がよろめく。
「まあ...そうなるわね...。でも、どっちみち夏帆をあのままにしておく訳にも行かないわよ。お金もバカにならないし...」
言葉にならない。
私には、分からない。
「落ち着いて聞いて欲しいんだけど...」
母から目を逸らす。
「なによ、そんなかしこまっちゃって。」
今ほど呼吸を自覚したことは無い。
「あ、あの、えっと...」
押し入れからカサッと軽い音が鳴った。
「陽菜?」
私には、母まで失う勇気が無かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる