宝石のお姫さま

近衛いさみ

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宝石姫とエルフ

宝石姫とエルフ2

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「実は私、お慕いしている人がいるんです」

「お慕い!!好きな人がいるってことかしら?」

 ベリルはさらに目を輝かせます。恋のお話は、姫さまにとっては大好物です。

「はい。恥ずかしいですが……。相手は人間なんです。私みたいなエルフが想っていては迷惑なのではと思っているのです」

 そう言い、ミイナは俯いてしまいました。

「でも、宝石を身につけて、綺麗になりたいってことは、その男の子に振り向いて欲しいからよね?」

 ベリルが聞くと、ミイナはその長い耳の先まで真っ赤にさせた。

「まだまだやれることはあると思いますよ。私にまかせてくださいな」

 そう言うと、ベリルは自信満々に胸をトンとたたきました。

 ベリルはお店の棚を眺めながら言いました。

「ミイナさんは美しい髪の毛の色をしてますからね。それを引き立たせる宝石があるといいのだけれど」

 ベリルは棚から一粒の宝石を取り出しました。

「やっぱり、赤が映えると思いますわ」

 ベリルが手にしていたのは、燃えるような赤い宝石だった。中心にいくにつれて、赤が深く、濃くなっていく。

「き、キレイ」

 ミイナも思わず見とれていました。

「赤い宝石で一番有名なルビーの宝石です。綺麗ですよね。女の子なら、憧れる人も多いです」

「ミイナの綺麗なブルーの髪によくあうよ」

 メノウも褒めています。

 ミイナはルビーの宝石を胸元に当ててみました。自分の顔がルビーの光に照らされて、美しく輝いているようです。
 そんな鏡越しの自分に、ミイナは見とれていました。しかし、自分の顔を見ているうちに、悲しくなって、目を背けました。

 そんな様子を見て、ベリルは聞きました。

「どうしましたか?」

「私はエルフだから。あの人に会うことはできません。願いが叶うなら、私は人間になりたいです」

 ミイナの目には薄っすらと涙が浮かんでいました。それほどに、自分がエルフなことが辛いのです。人間を好きになったことが悲しいのです。

「そんなことないわ。ミイナなら大丈夫ですよ。私も力になります。会いに行きましょう」

 ベリルはミイナを励ますように声をかけます。

「いいんです。もともと叶わない恋なんですから。相手は人間、しかも、森の国の王子さまなんですから」

 王子さまと結ばれるのはそんなに簡単なことではありません。しかし、そんなことはベリルには関係ないようです。だって、お姫さまですから。

「私にまかせてください。王子さまに似合う、美しい女の子にしてあげますよ」

 そう言うと、ベリルはミイナに笑いかけました。その様子をメノウは少し心配な様子で見守っていました。
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