勇者パーティーの保父になりました

阿井雪

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ギルドからの依頼

――なぜか照れるラウルさん――

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 俺は一人で倒すのは無理なので、ユーチャの援護に回る。皆一人で倒してるのにぃいい……!
 なんか俺のやってる事って寄生プレイだな……。でも経験値貯めて少しでも多く立ち向かえるようにならないと
「『攻撃可能な全面盾』展開!」
 キーチャか。俺たちの前に小さな盾が何重にも重なる。亀の爪ははじいてくれるのに俺たちの攻撃を邪魔しない。
 う。
 安堵した俺の足元が緑の血で滑って思いっきり前のめりに倒れてしまった。キーチャのシールド外だ。
 がごぉおお!! 亀ドラゴンが俺に向かって手を振り上げた――やべぇ今度こそ死んだ! 覚悟を決めたと同時に、
 ボン、と、亀ドラゴンの手が吹っ飛んだ。
 レオンハルトさんが銃で手を打ち落としてくれていた。
「すいませんレオンハルトさん、助かりました!」
「もっと気を付けて戦え!」
「はい!」

「しかし、街のど真ん中にある簡単なはずのダンジョンになぜ土竜がこんなにも繁殖しているんだ……? それだけ魔素(まそ)が大地に増えてるというのか……?」
「レオンちゃ、考え事は後回しーなの。ここのモンスターちゃんはいなくなったから次にすすむの!」
「そうだな。すまない。ユーチャは賢い子だ」
「え、えへへのー」ユーチャが目を細めて照れてる。

 次の階は地獄でした。
 ――そこは、床から天井まで白い糸が貼られていた。その白い糸は天井に貼られた蜘蛛の巣に続き、中には五メートルぐらいありそうな人面の蜘蛛が天井一杯にある蜘蛛の巣にさかさまにくっついていた。

 俺たちが入ってきたことに気が付くと、蜘蛛の巣からぼとぼと落ちてよだれを垂らし嬉しそうに笑みながら数えきれないほどの数がこちらに向かってくる。

「ぎゃあああ蜘蛛おおおお!」
 ほぼ反射的に一層目の壁まで逃げた。
「ひひ、気色悪いねえ」
「『千尋の風よ、荒れ狂え』」
 マーチャが杖を振るうと風の魔法が一気に蜘蛛を上下に分断してしまう。半分になった顔がずれおち、関節が切られた足がバラバラになって広がっていく。
 えぐい殺し方しないでくれよおおおおもうこれ以上見たくない!

「そして燃やしちゃうの。『はばたけ、炎の翼の者よ』」
 今度は杖から炎が出て、真っ白で奥さえ見えなかった蜘蛛の糸と蜘蛛を焼いていく。
 どう考えても悲鳴のはずなのに、「あはははは」「ひーっひっひっひ」「ふふふふふ」と笑いごえのようなものを残して消えて行った。

「お兄ちゃ、もう蜘蛛ちゃんも全部居なくなったから大丈夫なの。魔石集めてほちいの」
「くもしゃんのこと、嫌いだったのねー。お兄ちゃによちよちなの」

 なでなでしないでくれマーチャよ……。それは俺がよけい惨めになるだけだ……。
 確かに二層目は綺麗になっていた。真っ白な大理石のようなフロアが広がるだけだ。
 あちこちに散らばるアイテムを回収するため広場を歩きまくる。
 インベントリを確認する。おー、亀の甲羅が13個、亀の爪が53個、蜘蛛の目……蜘蛛の目!? が99個、
 蜘蛛の巣が99本……。インベントリは一種類につき99個までしか使えない。
 ユウチャ達に分配された分も合わせたらどれだけになるんだろうか。
「一時間もかかんなかったけど、残り時間じゃ、風呂に入る時間も装備品を洗う時間もないねー」
「ひひ、気持ちわりいな。手から鎌が滑りそうだ」
「ああなら、『洗濯と風呂』」
 パーティー全員が一気に綺麗になる。
「ひひ、この魔法は……!?」
「すっげー! 一気にきれいになっちゃったよ! やるね、さすが勇者様!」
 いや勇者関係ないと思う。
「便利でしょ? 衛生面は保証しますよ。さ、行きましょう。アイテム量が多すぎて、いますぐ金に換えるのは無理っぽそうなんで、金に換えるのは後日でかまいませんよね?」
「お、ちゃんと分けてくれるんだ。ありがたいねー。もちろん後日でオッケーよ」
「ボクも……それで構わない」
 ラウルさんからも了承をいただいた。

 ユーチャのインベントリにはドラゴンタートルの盾が入っていた。
 1つ取り出してみる。防御力50%アップ、と表示が出てきた。すげえつええええ!
 しかも軽い!でかいのに使いやすそう!
「ラウルさん、これを使ってください。防御力50%アップの盾ですよ!」
「え……」
「前衛なのに盾を持ってないでしょう? 50%はでかいですよ。次の迷宮の為にも装備してください」
 ラウルさんの顔が赤くなる。
 どうした、どこに赤くなる要素があった。
「そうまで言うならもらってやってもいい。ひひ、仲間がいるっていうのも悪くないかもな」
 仲間が居なかったのか? まぁSクラスともなれば単騎で動いても戦えるもんな。レオンハルトさんも最初は一人だったし。

「きれーな盾なの……ユーチャウットリしちゃう」「マーチャも!」
「お、亀の甲羅って防護服に加工することもできるそうだぞ。チビ達全員分防護服を作ってやるからな四着! あ、そうだケンチャ、瞬間移動をつかってくれないか? 早く甲羅をサシャに渡したい」
「私も同行していいか?」
 レオンハルトさんが訪ねてくる。もちろんオッケーだ。
「んーわかりまちたの。サシャちゃんの店へ『ぴゅーん』」

 相変わらず繁盛しているようだ。客がちらほらいる。

「おう、久しぶりじゃねーか兄ちゃん」
「勇者さま!? お、おおおお久しぶりでございますれば」
「今日はサシャにお願いがあってきたんだ」
「わわわたくしめなどにどんなお願いを……?」
「謙遜するなって、Sクラス様なんだから。こいつでちび達に防護服を作って欲しいんだ。他に依頼がないならなるべく早くで頼む」
どん、とカウンターの前にでかい甲羅を積み上げる。
「こいつは土竜の甲羅じゃねえか!! どっから手に入れてきたんだ!? 魔王城でも攻めてんのか!」
 周りの客たちもざわざわとざわめきだした。
「ど、土竜の甲羅なんて初めて見た……」
「殺せる人間がいたのかよ」「馬鹿、勇者さまだぜ。あれぐらい簡単だったろうよ」

 村人さんたちよ。俺は勇者じゃなく寄生プレイヤーだ。そう騒ぐでない。単なる保父ってバレたときの恥ずかしさが半端じゃなくなるからな。

 正確なサイズが必要だって言うなら、全部こいつとおんなじだけど……」
 浮いていたケンチャを捕まえる。
「おんなじなのー」
「いや、必要はない。チビ達の身長は判る」
「あと……そうだな、この黒の甲羅を使って、俺より少しサイズ大き目のローブを二つ作ってくれ」
「勇者さま直々のご依頼とは……かならずや明日にでも完成させて見せます!!」

「そんなに早くできんの!? 助かるけど無理はしないでくれよ。金はこれで足りる?」
 インベントリにしまっていた金をどんと机に置く。百万はあるが、ここに置いている防御服は一枚で十万以上するものもあった。た、たりるかしら……?

「金は要らん。この甲羅の余りを貰う」
「え、そんなんでいいの?」
「ああ。500年ほど生きちゃおるがこのサイズの土竜の甲羅なぞ久しぶりにみたわ。どこから手に入れてきたんじゃ?」
「契約で詳しいことはいえないんだけど、結構ヤバメなダンジョンです。頼んだぞサシャ、あと、無理はしないでくれ。お前と甲羅の力を存分に引き出せる防護服を頼む。子供たちのためにな」
「了解しました!」
「うん。敬語が戻ってるぞ。普通でいいんだって、普通で。じゃあ、頼んだ」

「私からも頼みがある。これだ」
 レオンハルトさんがカウンターに鋭利な角を置いた。
「ニャニコーンの角か! 本当にお主らいったいどこで戦っておるんじゃ。鍛冶屋歴長いが、こんなレアものを手にするのは初めてじゃ」

「それで――――を作ってほしい」

 掘り出し物がないかジャンク品を探していたので肝心な部分は聞こえなかったが、レオンハルトさんのことだ、新しい短銃だろうな。

「ユイ、キーチャ、戻るぞ」
 レオンハルトさんが戻ってきて、キーチャと俺を促す。
「はいですの」
 またテレポートをしてユーチャ達の場所に戻った。
「キーチャばっかりずるいの……ユーチャもいきたかったのです」「マーチャも」「なの」
「ごめんごめん。でもお前たちにカッコいい防御服をつくってもらえるようサシャにお願いしてきたから。完成を楽しみにしておけよ」
「サシャちゃんに!? きゃーたのちみなのたのちみなの!」
「ほら、落ち着け、落ち着け。馬車にもどるぞ」
「はーいの!」
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