新十秒探偵『ナポレオン＆トモロー』 ナポレオンの辞書に不可能と解けない謎はない！

解決編 #2

ナポレオン

「ヒント？」
　全員がリビングの中を見回した。
　クリスやトモローたちも用心して部屋の中を見回した。



「ああァ、これじゃないの？」
　トモローがテーブルの上に飾られたひまわりの花を指差した。



「ひまわり？」
　全員が声を揃えた。


「フフゥン、なるほどねえェ」
　美人弁護士の神堂クリスも意味深に微笑んだ。


「おいおい、なにがなるほどなんだよ」
　ヤンキーのカズヤたちにはわかってないようだ。


「亡くなられた金倉金造氏は、ひまわりの花がお気に入りだったみたいねえェ」
　クリスはキャビネットに飾られたフォトフレームを手に取った。


　フォトフレームには、ひまわりの花束を抱えた金倉金造が笑っている写真が飾られていた。


　還暦の祝いなのだろうか。

　赤いちゃんちゃんこ風の装いだ。周りには長男のほずみ、次男のカズヤ、当時正妻だったマリアたちが囲んでいた。



「ああァ、それかァ。オヤジの還暦の祝いだろう！」
　カズヤがふて腐れて応えた。


「そうねえェ、パパはひまわりの花が好きだったからね」
　愛人のキララも苦笑した。

　マリアは足を組んで憮然とした表情だ。


『８月の花ですよね。ひまわりは！』
　ナポレオンが言葉を添えた。



「ええェ、そう、あの人は８月１日が誕生日だったわ」
　離婚調停中のマリアが憮然としたままつぶやいた。



「ああァ、毎年、毎年、ひまわりの花束をオヤジに渡して記念撮影だよ。見ろよ。オヤジは満面の笑みだが他のみんなは目が笑ってないだろう。愛想笑いさァ」
　ヤンキーのカズヤはフォトフレームをアゴで差して苦笑した。


「……」長男のほずみも無言でうなずいた。


『そうですねえェ。８月１日は金倉金造氏に取って大事な日だったのでしょうねえェ』



「じゃァダイイングメッセージの『８１』と言うのは８月１日の事なのか？」
　九十九が聞き返した。