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旅路✨✨✨

嵐の中で……

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『ドッドドドォォォーーンン』

 地鳴りのような音を立てて落雷が起きた。
「キャァーーッ!」またお蘭が悲鳴を上げ信乃介に抱きついていく。
 きつく腰を擦りつけているようだ。
「うううゥ……」信乃介も小さく呻いた。
 天を切り裂くような稲妻がきらめく。

 篠つく雨が旅籠の屋根を叩き、わずらわしいほどだ。ほとんど会話が聞き取れない。
 一気に気温が下がっていくみたいだ。
 急に、肌寒くなってきた。
 このままいつまでも濡れた着物姿でいると風邪を引くだろう。
 俺たち男は濡れた着物を脱ぎ捨てるように風呂場へ直行した。

「ケッケケ、ほらァ、信さん。俺たちも行こうぜ」
 山師のヒデは陽気に信乃介を誘い、洗い場へ入っていった。
 信乃介と俺や源内も後に続いた。洗い場へ入ると白い湯気がパッと広がっていく。

 軽く湯浴みをし、俺たちは湯船へ浸かった。
「ふうゥ……」大きくため息をついた。
 ちょうど良い熱さだ。

 肩まで浸かると身体の芯まで温まって生き返るようだ。
 寒さに縮こまっていたアソコも温められ息を吹き替えしてくる。

「ケッケケ、楽しみだな。お蝶さんとお蘭の裸は」
 ヒデは湯に浸かりながら嫌らしく相好そうこうを崩した。
「まァ、お蘭はともかくな。お蝶のは……」
 信乃介も満更ではないようだ。苦笑いを浮かべた。彼もお蝶の全裸は見ものなのだろう。
「フフゥン」まだ源内も枯れてはいないようだ。嬉しそうにニヤついている。

「キャァァーーッ」歓声とともにスゴい勢いで、お蘭が洗い場へ駆け込んできた。
 もちろん手ぬぐいで可愛らしい胸を隠しているが、なんとも無邪気だ。

「信さァァーん!!」
 そのままの勢いでお蘭は湯船の中へ飛び込むつもりか。
「おいおい、お蘭!」
 信乃介も両腕で上手く受け止めないと怪我をしそうだ。

「信さァァん、受け止めてェー」
 満面の笑顔でお蘭は空を舞っていく。
『バッシャーン!!』
 波しぶきを立ててお蘭が湯船の中の信乃介へ飛びついた。
 受け止めた信乃介も勢いで、湯の中へ突っ込んでしまいそうだ。
「ぐッううゥ……」
 さすがの剣豪もお転婆娘には叶わない。弾みで溺れてしまいそうになった。

「だッ、大丈夫ですか。信乃介先生!」
 すかさず俺は湯に沈みかけた彼の身体を引き上げた。

「こッ、殺す気かァ!  お蘭!!」
 ようやく信乃介は浮き上がって怒鳴った。
「フフゥン、どう?  信さん、参った」
「バカか、お蘭!  遊んでる場合か。さっきまで、疲れだの足が痛いだのさんざん泣きごとを云ってたクセに!」
 確かに信乃介の云う通りだ。
 








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