十秒探偵『ナポレオン＆トモロー』 すべての謎はナポレオンに解かれたがっている！

フリージア

由真視点

　こうしてオレとマリアは一緒に暮らし始めた。


　まるでマリアはオレの姉のようだ。
　生まれて初めて、オレは愛を知った。


　オレはずっと母一人子一人で暮らしていた。
　しかも母親は子供のオレのことを顧かえりみない毒親だ。


　他人のことを信用できないのは、そんな母親に育てられたせいだろう。
　けれどもマリアは、そんなオレに優しく手を差し伸べてくれた。


　当然、オレは真剣に彼女との二人の生活を考えた。
　


　そのためには半グレ集団『ヘルズドラゴン』を脱退しなければならなかった。



　だが、阿久堂凱ガイは着々と『ヘルズドラゴン』を我が物顔にしていった。


　勝手にヘルズドラゴンを脱退すれば粛清される。鉄の掟オキテがあった。



　もちろん阿久堂が勝手に作った掟オキテだ。



　けれどもオレも中途半端に半グレ集団に加入しているわけにもいかない。


　意を決し、阿久堂らに脱退を申し出た。
　始めは理由を訊きかれたが真面目に社会人になると応えた。



『フフゥン、そうか。由真、わかったよ！』
　阿久堂は最後に快く脱退を認めてくれた。

　だがそれは表向きだ。



　阿久堂は『ヘルズドラゴン』を勝手に脱退することをよしとしなかった。


　そして悲劇が起きた。


　『ヘルズドラゴン』は看護師として働く本城マリアの帰り道を待ち伏せし彼女を拉致したのだ。


　そのまま車に乗せ、アジトへ連れ去り監禁した。


　当然、阿久堂凱ガイの仕業だ。

　もちろんアイツは命令するだけで実行犯は手下の未成年者たちだった。


　もし捕まることになってもトカゲのしっぽ切りで逃れる寸法だ。
　まったくずる賢くクレバーなヤツだ。