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ロリコン万堂……

嵐のあとで……

　アキラの言う通り、世の中には運の良いヤツと悪いヤツがいる。


　私はと言えば､もちろんとびっきり運の悪いヤツの代表だろう。



　台風一過、嵐の夜が明けると空は抜けるような青空が広がっていた。


　どのくらい寝たのだろう。
　私は起きて､すぐにリビングへ向かった。
　すでにアキラの姿はない。仕事に出掛けたようだ。


　なぜか､テレビがつけっぱなしになっていた。
　番組と番組の合間のニュースだろうか。






「うッ､ううゥ……」不意にズッキンと引っ掻かれたキズが傷んだ。



「クッソォ……」アイツら。
　クソ親父と真っ赤に血に染まったロリコン万堂の顔が脳裡によぎった。


　

　その時、つけっぱなしになったテレビモニターにあの男の画像が映った。




　

　万堂勇作。


「ええェ……？？」どうして､アイツが。


　あのロリコンジジーだ。
　なんでアイツがテレビモニターに……？




　慌ててテーブルに置かれたリモコンでボリュームを上げた。



『昨夜未明、三浦半島三崎沖で発見された遺体の身元が判明しました……。
　横浜市中区在住の『万堂勇作』さん三十九歳……』
　ぽっちゃりした可愛らしい女子アナウンサーがシリアスな顔でニュース速報を報じていた。

　いつもバラエティ番組で見かける顔とは別人のように真面目にニュース原稿を読んでいた。





「な、なにィィィ……？  バカな」
　一瞬、クラッと目眩がした。


　私はまだ夢を見ているのだろうか。
　だとしたら悪夢なのか。





「遺体が発見されただってェ……！！」
　まさか､殺されたのか。アイツが。




　真っ赤な血に染まった顔で万堂が私へ手を伸ばし捕まえようとしてくる。
　血まみれの手で。
　またあの怖ろしい光景が脳裡に浮かんだ。




　あのロリコンジジーが殺されただってェ……。
　その瞬間､目の前がグラグラッと回り始めた。





「まさか……」
　真っ先に、脳裡をよぎったのは万堂が親父に殺されたのではないかと言うコトだ。




　確か、コスプレイベントで撮影している最中、万堂はボストンバッグの中に二千万あると豪語していた。


　さらにバッグの中身を見せて私に売春エッチを強要してきた。
　あの時、チラッと見ただけだが､二千万の大金がバッグの中に入っていたのだろう。



　私が嵐の中､逃げたあと､親父はその二千万を奪うためロリコン万堂と揉み合いになって殺し､三崎沖へ遺棄したのだろうか。




「くウうゥ……」突然、腕に残る引っ掻き傷が疼いた。




「まさか……」
　ヤバい。ヤバいぞこれは！！

　







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